高齢者に多い転倒からの骨折 理学療法士が教える転倒防止に役立つ6つの運動法
運動は無理なく続けることが何より大切です。毎日でなくても、週に1〜3回で十分な効果が期待できます。
バランスに不安がある方は、壁やイスに手を添える、または家族に見守ってもらうなど、安全を最優先にしましょう。痛みやめまいがあるときは、すぐに運動を中止し、専門家に相談してください。
1.その場でできる「ふくらはぎ筋トレ」
効果:ふくらはぎの筋肉を鍛え、安定性アップ、足首の可動性が上がりバランスをとりやすくなる
10~15回を1セットとして、1〜3セット行う
<やり方>
【1】肩幅くらいに足を開いて立つ
【2】壁やイスなどに手を2本~3本だけ添えてバランスをとる
【3】かかとをゆっくり持ち上げて、つま先立ちになる
【4】かかとが内側や外側に開かないようまっすぐに背伸びする
【5】一番高いところで1〜2秒キープし、バタンと落とさず、ゆっくりと静かに下ろす
慣れてきたら手を離して行い、さらに負荷を高めましょう。さらに慣れたらバンザイと共に行うことで効果アップ。
2.その場でできる「ふくらはぎ伸ばし」
効果:硬くなった足首やふくらはぎの柔軟性向上、前もものストレッチで股関節の可動性をアップする
1回 20秒~30秒を1日に2~3回程度
<やり方>
【1】机や椅子などの前に立ち、足は肩幅くらいに開く
【2】片足を1歩後ろに引き、つま先はまっすぐ前に向ける
【3】後ろの足のかかとを床につけたまま、前足に体重を乗せる(腰を反りすぎないよう注意)
【4】後ろ足のふくらはぎが伸びているのを感じながらそのまま20~30秒キープし(左右行う)
3. 椅子からの移動ついでに「椅子スクワット」
効果:大腿四頭筋やハムストリングス(太ももの筋肉)の強化で、下半身を強化動作に必要な下肢の力をつけ、安定性アップ(膝や腰に痛みがある場合は中止しましょう)
5回~10回を1セット、1日に1〜3セット繰り返す
<やり方>
【1】つま先を正面に向けて、足は肩幅に開く
【2】机や椅子に軽く手を添える
【3】背すじを伸ばしたまま後ろの椅子に座るようにお尻を引いて、ひざを曲げる
【4】お尻を後ろに引きながらゆっくり腰を落とす(浅くてもOK)。
【5】ひざがつま先より前に出ないよう意識する
【6】ふとももに軽く力が入る位置で2秒キープ
【7】呼吸は自然に、ゆっくりと元の姿勢に戻す
慣れてきたら、手の支えなしで行い負荷を上げる。さらに、座る際にバンザイすることで負荷アップ。
4. テレビCMの合間に! バランス力を鍛える「片脚立ち」
効果:バランス能力の向上、下半身の筋力アップ、体幹の強化、骨への刺激で転倒予防
左右交互に1〜3回ずつ繰り返す(目標は30秒キープ)
<やり方>
【1】転倒防止のため、周囲の安全確認する
【2】椅子やテーブルに軽く手を添えて支えながら、立つ
【3】足を肩幅に開き、姿勢をまっすぐに整え目線は前方
【4】片方の足をゆっくり床から持ち上げる(上体が前後左右に倒れないよう、片脚を高く持ち上げすぎない)
【5】軸足でバランスをとりながら、そのまま10~30秒キープ(持ち上げた足を軸足に絡めて支えない)
【6】足を下ろして、反対側も同じように行う
慣れてきたら、手を離してチャレンジ。保持する時間を伸ばすことで負荷アップ。
5. 日常動作に取り入れたい「足踏み運動」
効果:太もも、股関節まわりの活性化で歩行の安定性向上します
左右1分間ずつ
<やり方>
【1】周囲を確認し、安全を確認する
【2】壁やイスと並行に立ち、手を2~3本だけ添えてバランスをとる
【3】背すじを伸ばしながら、太ももが床と平行になる高さを目安に片膝をゆっくり持ち上げる
【4】呼吸を止めず、リズムよく左右交互に1分足踏みする
慣れてきたら、回数や時間を増やす。テレビを見ながら・歯磨きしながら「ながら運動」として習慣的に行う。(ながら運動の場合は十分に気をつけながら行ってください)
6. 急な方向転換での転倒予防に「綱渡り歩き」
効果:急な方向転換時や歩行中のバランス力強化、全身バランスの強化
3~5m程度を目安に、1日数回行う
<やり方>
【1】周囲に障害物がないよう、片づけてから行う
【2】フローリングの継ぎ目や畳のヘリなど、まっすぐな線を見つけその上に立つ
【3】まっすぐ立ち、バランスをとる準備
【4】片足をゆっくり前に出し、線の上に乗せる
【5】バランスを保ちながら、もう一方の足を前に出し、かかとをつま先につけるように前へ出す
【6】目線はやや前方(足元を見すぎない)、線を「綱」に見立て、落ちないように意識しながら左右交互にゆっくり歩く
【7】ふらつく場合、壁などに軽く手を添えて安全に実施する
継続のコツと注意点
転倒は予防できるものです。大切なのは、運動を少しずつでも習慣にすることです。例えば、テレビを見ながら、歯磨きのついでに、少しずつ運動を続けることが未来の転倒予防・骨折予防につながります。ただし、「ながら運動」を行う際は、必ず安全に配所しましょう。せっかくの運動で転んでしまっては、本末転倒です。安全第一で、ゆっくり・確実に取り組むことが大切です。
また、住まいの環境を整えることも転倒予防に大切です。運動不足が続くと、つい重いものの片付けがおっくうになり、廊下や玄関周りに物を置いてしまい、それにぶつかったり、つまずいたりしてしまいます。家族と協力して転倒しない居住空間を工夫しましょう。そして、ぜひ今日から紹介した運動をひとつでも取り入れてみてください。