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健康

《高齢の家族が転んだら?》「大丈夫?」とすぐ手を伸ばすのはNG!悪化を防ぐための転倒直後の“正しい対応”を整体師が解説 

 整骨院を17年経営して3万人以上の治療実績を持ち、介護や福祉の現場にも活動の幅を広げて7年になる福嶋尊さん。転倒直後の正しい対応を知っておくことが、その後の悪化を防ぐために重要だと説く。福嶋さんの著書『ストレスゼロで一生歩ける! 5ミリの壁体操』(サンクチュアリ出版)より、転倒時の家族の対応と、転倒を防ぐ気持ちの持ち方について一部抜粋、再構成して紹介する

 * * *

「大丈夫?」とすぐに起こすのはNG。まずは「何もしない勇気」を持つ

 ドンッ!という音がして家族が床に倒れたら、「大丈夫?」「起きられる?」と手を伸ばしたくなるのは自然なことです。けれども、転倒直後にいちばん大切なのは「すぐに動かさない」「確認する」ことです。

 心配して駆け寄ると、「大丈夫だから」と言われることが多いと思います。でも本当に大丈夫かどうかはわかりません。むしろ信じないことが大切です。客観的に判断できるのはあなただけなのです。

 高齢の方ほど、迷惑をかけたくない、心配をかけたくないという思いから、痛みを小さく伝えることがあります。そして、すぐに立ち上がろうとする。だからまずは動かさないで、その場で深呼吸してもらいましょう。骨折や脱臼があっても、無理に動かさなければそれ以上悪化することはありません。むやみに引っ張って症状を重くしないためにも、家族は「何もしない勇気」を持つことが重要です。

「頭は打ってない」を鵜呑みにしない。数か月後に症状が出ることも

 特に注意してほしいのが、「頭は打っていないよ」という言葉です。転倒直後はショックで記憶があいまいになることがありますし、認知機能が低下している場合は覚えていないこともあります。

「記憶」よりも「事実」を優先して、こぶや出血はないか、意識ははっきりしているか、吐き気や強い眠気はないか、受け答えはいつも通りかを確認してください。異常があればすぐに受診し、問題がなければゆっくり立ち上がるのを支えます。

 というのも、頭を打った場合、すぐに症状が出ないことがあるからです。特に高齢の方で注意したいのが「慢性硬膜下血腫」です。転倒などで頭を打ったあと、少量の出血がゆっくりとたまり、数週間から数か月かけて症状が出てくるものです。ぼんやりしている、歩き方が少しおかしい、物忘れが増えたなど、「いつもと違う」が続いたら、あのときの転倒を思い出してください。

 だからこそ、「いつ、どこで、どんなふうに転んだか」といった時間や状況をメモしておいてください。あとから体に変化があったとき、お医者さんが判断するための大切な手がかりになります。

 受診や救急の際、必ず伝えてほしいのが「服薬情報」です。特に、血液をサラサラにする薬や、普段からのんでいる薬はあるか。それがわかるだけで、救急隊員やお医者さんはとても助かります。血液をサラサラにする薬をのんでいると、内出血をするリスクが高まるので、早めの対応が必要になります。

 そこで役に立つのが「おくすり手帳」です。ご家族のおくすり手帳が家の中のどこにあるのか、把握しているでしょうか? この中には、服薬情報、血圧、脈拍、既往歴など、病院が知りたい情報が詰まっています。いざというときにすぐ持ち出せるよう、普段から置き場所を家族で共有したり、薬についてのメモを残したりしておくと安心です。家族が転んだときに必要なのは、知識なのです。

明るい気持ちが転倒を防ぐ。歩くことは人生を肯定する時間

 実は、明るい気持ちは転倒も防いでくれます。気持ちが前を向いているとき、人は自然と顔も上がります。顔が上がると視線が遠くに向き、段差に早く気づきます。呼吸も深くなり、胸が開き、背筋が伸びて、歩幅が広がり足が自然に上がるのです。

 反対に、気持ちが沈むと体は丸くなります。背中が丸まり、視線が落ち、呼吸が浅くなる。歩幅は狭くなり、足は地面をこする。暗い気持ちは、「5ミリの壁」をつくり出してしまいます。実際、転倒全体の8割が、床の配線やカーペットなど、たった「5ミリの段差」、あるいは何もない平らな場所でつまずくことで起こっているのです。

 安心して歩けるようになると、気持ちがさらに前を向きやすくなります。歩くと脳の中でセロトニンという「気持ちを整える物質」が出て、心が前向きになっていくからです。治療や介護の現場で患者さんと話していると、「歩いている間は、自分に戻れるんです」という言葉を聞くことがあります。歩きのリズムが整うと気持ちのざわめきも静まり、抱えていた気がかりなことが軽くなっていきます。

 歩くことは自分の人生を肯定する時間になります。あなたが転ばないことは、家族にとっていちばんうれしい知らせです。自分の足でしっかりと歩いて無事に帰ってくる。その姿を見るだけで、家族はいつも通り笑えます。だから今日も、5ミリだけ足を上げてください。その5ミリが、あなたの人生を前に進めるのです。

◆整体師、国家資格柔道整復師、寝たきり予防研究家・福嶋尊

ふくしま・たける/1973年9月12日、東京都生まれ。17年間経営した整骨院では、プロアスリートを含む累計3万人以上の治療実績を持つ。ケアマネジャーと社会福祉士の国家資格を取得し、転倒予防と寝たきり予防の研究を行う。2025年よりカルチャーセンターで高齢者向けのストレッチ講座を開講。さらに、福祉業界を目指す学生への指導や健康啓発にも力を注いでいる。近著は『ストレスゼロで一生歩ける! 5ミリの壁体操』(サンクチュアリ出版)。

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