兄がボケました~認知症と介護と老後と「第74回 ゴミ屋敷のお片付け」
ライターのツガエマナミコさんは、祖父母の家に住む叔父夫婦が、その家を売却することに決めたことで発生する相続に対処するため、認知症を患う兄の成年後見人になるべく手続きの真っ最中です。そして、いまやゴミ屋敷と化してしまった祖父母の家を片付けるという大問題も抱えてしまっているのです。
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築70年超の祖父母の家
昼の居酒屋風定食屋で友人とランチをした日、焼き鳥などをつまんだ最後に「〆はやっぱりお蕎麦でしょう!」と二人してとろろそばを注文したところ、とろろそばと一緒にしっかり一人前の天丼が来てしまい、目が点になりました。店員さまに「え?天丼は頼んでいませんけど」というと、「いえいえ、頼んでいますよ、ほら」と証拠を突きつけられてしまいました。
そう、そこはタブレットオーダーのお店で、我らの注文記録がしっかり画面に表示されたのでございます。わたくしが操作を間違えたのでございましょう。確かに注文しているので反論もできず、見るからにヘビーな天丼を最後の最後に食べるという笑うしかない悲劇となりました。懸命な努力空しく半分以上残してしまったのは言うまでもございません。
ちゃんと確認したつもりでしたが、こういうこともございます。皆さまもタブレットオーダーにはお気をつけくださいませ。
さて、ゴールデンウィークが明けて少し経ちましたが、今年のGWはいかがお過ごしでしたか?ツガエはゴミ屋敷のお片付けに明け暮れました。
70~75年前、祖父母が建てた家でございます。20~30年前から叔父夫婦が暮らすようになり、叔父が認知症になってからは家の中が荒れ放題になって、いよいよ「処分する」という話になった老朽家屋でございます。
この春、ゴミ屋敷となった張本人の叔父が施設に入居し、ようやくお片付けが始まりました。
叔母に聞いた話では、「とにかく数か月でいいから預かっていただけるところ」ということで叔父は月40万円の施設に入ったと聞いて驚きました。
まずは、叔父が頑として捨てさせなかった新聞の束を、業者を呼んで回収してもらい、足の踏み場を確保。新聞は2トントラックにいっぱいだったと聞きました。
叔父はファイリングが好きだったようで、本棚は言うに及ばず、いくつもの段ボールにファイルが詰め込まれておりました。重要か不要かの区別もできないような書類やメモが入ったホコリだらけのファイルから一枚一枚紙類を抜き取る分別作業が延々と続きました。中には数千円が入った封筒などがみつかって、叔母に渡すと「山分けしよう、バイト代よ」と言うので遠慮なくいただきました。63才にもなってお駄賃をいただく幸運。こういうことがあるからお手伝いはやめられません。
段ボールをつぶして紐でくくり、紙やプラファイル類もゴミとして運び出しやすいように分別して紐で縛り続けました。それでもわたくしが片付けられたのはほんの畳2畳分ぐらい。ほんとうにネコの手ほどしか進まない作業に「終わりませんね」とこぼすと、叔母は「ざっと見たら、あとは火事にでもあったと思って処分するわ」と言っておりました。確かにその割切りは必要だと思いました。一つ一つ吟味していたら何年かかるかわかりません。
真夏が来る前に叔母が一通り目を通すのが目標で、作業はしばらく続きます。
叔母はもう83才。若々しいですが、やはり腰痛に顔をしかめることが増えました。「今年中に家を処分し、遺産もキレイに分けてスッキリしたい」と言う叔母の思いを実現するためにはもう少し頑張ってもらわないといけないので心配でございます。
というのも、叔父の入った施設がどうも叔父に難色を示しているようで、別の施設に移らなければいけなくなったとのこと。ケアマネジャーさまに別の施設をいくつか紹介していただき、目下、叔母の娘がリストアップされた施設の下調べをしているそうでございます。近々一緒に見学に行くと言っておりました。
「何事もすんなりとはいかないわね。あっちにぶつかり、こっちにぶつかりしながらやっていくしかないんだわ」と、83才の叔母が言うのですから、63才のわたくしがどこにもぶつからずに生きられるはずがございません。そう思ったら肩の荷がすっと軽くなった気がいたしました。物事がスムーズにいかないのは自分の要領が悪いからだ…と自虐的になりがちなツガエですが、ぶつかりながらいけばいいと腹が座りました。
兄にとっても祖父母の家は思い出深い場所でございます。初孫だったので誰より親戚にかわいがられ、あの家で縦横無尽にかけ回っておりました。それももう忘れてしまったでしょうか。「おじいちゃんの家、もうなくなるんだって」と話しても「そうだね」というだけ。何かを思い出している様子もありません。でも今週も3時のおやつをペロリと平らげ満足そうだったので、兄についてはひとまず安心しているところでございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ
