【中央・総武線】注目の特別養護老人ホームと介護付有料老人ホーム【まとめ】
評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
東京都心を東西に貫くJR「中央・総武線」。多摩地域と千葉方面にも延びている路線は多くの人の生活を支えている。新宿駅や東京駅などのターミナル駅だけではなく、吉祥寺駅のような住みたい街として人気の駅も多い。今回は、中央・総武線沿線の特別養護老人ホームと介護付有料老人ホームを紹介する。
地域の福祉拠点として子供から高齢者まで集う総合福祉施設「リバービレッジ杉並」
中央線快速や中央・総武線各駅停車、東京メトロ「丸ノ内線」が乗り入れ利便性の高い「荻窪」駅。「リバービレッジ杉並」は荻窪駅からバスで7分ほどの場所に2019年3月にオープンした。こちらの施設は総合福祉施設と謳っている通り、特別養護老人ホーム、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、訪問看護の4つの事業が展開され、さらに同じ施設内でカフェと貸し出しスペースを運営している。
リバービレッジ杉並を運営しているのは社会福祉法人「真光会(しんこうかい)」。昭和54年の法人設立以来、東京都青梅市を中心に地域密着で福祉拠点作りに取り組んできたという。現在は18事業で約400人の職員が働いており、子供やパラリンピック選手を対象としたスポーツ事業、無料学習塾の運営など、地域公益事業にも積極的だ。創始者は元々旅館業を営んでいたが、戦後に困窮している高齢者などの様子を見て、私財を元に社会福祉法人を立ち上げたそうだ。蛇足だが、いずれの宗教法人とも関係性はない。
こちらの施設ではスポーツ教室や様々な学びの場を通じて、子供たちの力を育てる「キッズ元気プロジェクト」を実施しているという。本部のある青梅市で6年ほど前から無料の学習塾やスポーツ教室を運営し、地域の子供たちを明るく元気に育てる活動に取り組んできた。その蓄積を活かして、杉並区でも地域の子供たちを支援している。
カフェと貸し出しスペースは、道路を挟んだ向かいにある緑豊かな妙正寺公園とまるでひと続きになっているかのように建てられている。カフェではコーヒーや紅茶、食事、スイーツが楽しめ、近所の住民の憩いの場になっている。貸し出しスペースは1時間1000円で借りることができ、地域の人や団体がスポーツやサークル活動、催し物、パーソナルトレーニングなどに利用しているそうだ。地域との交流が深まることは中にいる高齢者にとってもメリットがあるという。
杉並区の土地を真光会が借りるかたちで、設立されたリバービレッジ杉並。杉並区の公募で選ばれた提案には、カフェや貸し出しスペース以外の部分の設計にもこだわりがあるという。例えば、こちらの施設の中心部分である特養。10名前後の人数で1つのユニットを形成するユニット方式の場合、見守りのしやすさなどの理由からリビングを取り囲むように居室を配置するのが一般的だが、ここは全く違ったコンセプトの住空間となっている。
居室は入居者が静かな環境で過ごせるように、わざとリビングから離れた場所に作られている。見守りのしやすさという職員目線ではなく、入居者の生活の質を優先させたという。見守りのためにベッドでの様子が分かる眠りスキャンを入れるなど、ICTを活用。ほとんどを間接照明にするなど照明にもこだわり、落ち着いた雰囲気で過ごせるようにしたそうだ。
※眠りスキャン:入居者の睡眠状態や起床、離床などの様子をベッドに敷いたセンサーで把握できる機器
居室のトイレの入り口と壁は広く開放できるので、車椅子での移動や介助を受けやすくなっている。居室から共用部に至るまで、機能性とデザインにこだわっているという。
入居者が快適に過ごすための配慮は共用部のちょっとした所にも。フロアの少し引っ込んだ人目につかないような場所にくつろげるスペースが用意されている。居室以外のゆっくりと過ごせる場所は入居者にも好評だという。
いかがだっただろうか。昭和54年の設立以来、こつこつと積み重ねてきた実績を活かし、地域との交流を建物の設計と運営に組み込んでいるリバービレッジ杉並。杉並発の新しい福祉の拠点に地域が寄せる期待は大きく、満室になっていることが多いようだ。
→地域の福祉拠点として子供から高齢者まで集う総合福祉施設<前編>
→離職率9%!人材育成に力を入れている総合福祉施設<後編>