認知症の母が食事中に落ち着きがない!食べこぼしの対策に導入したアイテムが想像以上に便利だった「使ってみてわかった感動と発見」
遠距離介護のエキスパートとしてさまざまなメディアで情報を発信している工藤広伸さん。岩手・盛岡に暮らす認知症の母は要介護4。最近、食事中の様子が気になっているという。工藤さんが発見した食事介助の負担を軽減するためのアイテムとは?
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(82才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
認知症の母の食事中の問題
母は週5で通っているデイサービスでしっかり栄養を取りつつ、朝や夜はヘルパーさんが自宅にある長期保存が利くパンや栄養補助飲料を用意してくれて、それを食べています。わたしが帰省した際は、通院等でデイがお休みになると1日3回わたしが料理を作っているのですが、一緒に食事をするときにちょっと困ったことが起きています。
母は居間のコタツで食事をするのですが、最近帰省時に感じているのが、「食事のときに落ち着きがない」ことです。
まだ食べ終えていないのに、突然お皿を持ち上げて底面を見たり、ヨーグルトの容器に書いてある文字を読もうとしたり、居間のカーテンを開けてご近所の様子を確認したりします。食後ならいいのですが、器に食材が残ったままなので、こぼれて衣服やコタツ布団が汚れてしまいます。
またテレビに気を取られて箸が止まり、再び食べ始めたときにおかずをこぼして衣服を汚してしまうこともあります。特に困ってしまうのが、ミートソースです。なかなか汚れが落ちないのに何度もこぼし、今もコタツ布団や衣服にシミが残っています。母に食事に集中してもらい、食べこぼしを減らすため、これまで様々な対策を行ってきました。
母の食べこぼしはどうしたら減るか?
まず取り組んだのが、テレビをオフにすることです。朝は食事だけでなく、顔を洗ったり歯を磨いたり、デイサービスへ出かける準備をしなくてはなりません。母にご飯をなるべく早く食べ終えてもらうため、テレビを消す日が増えていきました。
しかしテレビを消しても、食べこぼしは減りませんでした。おそらくですが認知症の進行によって空間認識能力が低下していて、食べ物を口に運ぶ距離感がつかめないのだと思います。
また母は食パンを箸で持つなど、食べ方がわからなくなっているため、わたしの食べ方を見よう見まねで口に運びます。よそ見しながらの食事になるため、おかずをこぼしてしまいます。認知症の影響で、2つの動作を同時にこなすは難しいのかもしれません。
コタツの天板を動かしてみたら…
次に、コタツ布団の上にものをこぼさないための対策として、コタツの天板を母の体にぴったり密着させてみました。本来なら母の座る位置を調整すべきですが、座椅子に座った母を移動させるのも大変ですし、背もたれに寄りかかっている姿勢がラクなので、コタツの天板をずらして対応するようになりました。
コタツ本体ごと移動させるのも手間なので、天板だけを母が座っている側へスライドさせていたのですが、これがなかなか大変。天板が宙に浮いた状態になるため、わたしが体重をかけて天板を押さえないと、皿が滑って落下してしまいます。食事中に、母の食べこぼしに注意しつつ、天板のバランスも保たないといけません。
その場しのぎの対策を繰り返してきましたが、1日3回一緒に食事をする日は、さすがにちょっと疲れてしまいました。そこで、食事の介助に使えるエプロンの購入を決めたのです。
エプロンを選ぶ3つのポイント
食事介助のためのエプロンを選ぶポイントは、3つあります。タイプ、素材・形状、機能です。
使い捨てタイプは、汚れたらそのまま捨てられるので洗濯の必要がありません。繰り返し使えるタイプは、洗濯機で洗えてランニングコストを抑えられます。
素材は、防水性の高いポリエチレンなどの薄いフィルム、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維、肌触りがよく肌に優しい綿などが選択肢になります。
形は、膝上や太もも、テーブルまで広くカバーできるロングタイプと、動きやすいショートタイプがあります。そして機能は、食べこぼしをキャッチするポケット付きや、エプロン裏面にすべり止めがついてテーブルにフィットするものもあります。
わたしは洗濯などの手間を省きたかったので、使い捨てタイプを選びました。また落ち着きのない母に合わせて、できるだけ広い面積をカバーできる大きめのもの、食べこぼした汚れが目立つと母が気にして食事が進まなくなりそうなので透明なものがいいと考えました。
こうした条件を満たしそうなものをAmazonで探したところ、ベストセラーと表示されていたプラスハートさんの『使い捨て食事用エプロン フラットタイプ60枚入 透明食べこぼしキャッチ』を見つけたので購入しました。価格は1箱694円でした。1枚あたり約12円とコストも気になりません。
使い捨てエプロンの導入でラクになったこと
正直なところ、介護用食事エプロンを買えば衣服やコタツ布団が汚れなくなる、ただそれだけの話だと思っていました。便利だけど、介護に大きな変化をもたらすほどではない、そう考えていました。
ところが実際に母にエプロンをつけて、一緒に食事をしてみると、予想していなかった発見があったのです。
これまでのわたしは、食事中の母の行動にいちいち目を光らせながら、食事をしていました。「ちゃんとお皿を見てね」「ほら、ミートソースがこぼれそうだよ」「ご近所さんのことは気にしないで」。そんな声掛けをしながら、こたつの天板やお皿の位置を気にしていたので、気づかないうちにかなり神経を使っていました。
しかし、エプロンのおかげで、「こぼしても大丈夫」という余裕が生まれ、母に口うるさく注意する必要がなくなっただけでなく、自分の食事に集中し、料理をしっかり味わえるようになったのです。
まさか母との食事が、これほどストレスになっていたとは思ってもいませんでした。実際に使ってみないとわからない感動がありましたし、意外な気づきとなりました。
近い将来、もっと大変な食事介助が始まるかもしれません。使い捨てエプロンのほか、食事用の補助具なども活用して、母とストレスなく食事を続けていけたらと思います。
今日もしれっと、しれっと。
