「自己肯定感が低いあなたへ」夫や子供、仕事仲間にイライラしない最強のメンタル術をプロが指南
ちょっとしたことでイラついて感情をコントロールできないときはありませんか。そこで、コーチングの先生が“心のブレ”をなくす最強のメンタル術を明かしてくれました。イライラしない練習をしてストレスフリーな日常を手に入れませんか。自己肯定感が低いと思ってっている人こそぜひ取り組んでみて。
教えてくれた人
夢実現メンタルコーチ 一条佳代さん
子育てをしながら色彩心理学とコーチング術を学び、2020年「Vision Navigation」設立、ネクストコーチングスクール開校、2021年「人気コーチ養成講座」開講。著書に『「なりたい自分』へ加速する 問いかけコーチング 潜在意識に働きかける最短の方法』(三笠書房)がある。https://visionnavigation.co.jp/
5つの悩みから「自己肯定感の低さ」がわかる!
本題に入る前に、まずはあなたの悩みをチェックしてみましょう。これから紹介するメンタル術が役立ちますよ。
5つの悩みチェックシート
◆悩1 SNSで幸せそうな人を見るたび、自分がみじめに感じる。
◆悩2 いつもほかの人の意見に従ってしまい、後でモヤモヤする。
◆悩3 “目標を立てては挫折”の繰り返しで、常に自己嫌悪。
◆悩4 言うことを聞いてくれない夫や子供、パート仲間にイライラ。どうしてわかってくれないの?
◆悩5 人へアドバイスをしたら関係が悪化。彼女のためを思って言ったのに…。
上記の悩みはそれぞれ異なるように見える。しかし、どの悩みにも、根っこに「自己肯定感の低さ」が横たわっている。自分を肯定できるようになれば、みじめにもならずモヤモヤもイライラもしなくなるという。
「暗いニュースや人間関係に一喜一憂するのはいつの時代も同じ。しかし、現代は受け取る情報量が多すぎるため、その中から自分に必要なものを見極めるのは難しく、その結果、心がブレ(揺れ)てしまう人が増えています」と、メンタルコーチの一条佳代さんは言う。
“心がブレる”と、自分の気持ちに確信が持てず、誰かの何気ない一言で落ち込んだり、イライラしたり、振り回されるようになる。
では、振り回されない方法はないのか? 一条さんは「最強のメンタルを育てればいい」と言う。
「最強のメンタルとは、他人に左右されず、“起き上がりこぼし”のように、すぐに自分の軸(平常心)に戻せる力です。落ち込んでも心を切り替えられる人は、ピンチにもチャンスにも強い。自分の軸がないとなかなか起き上がれませんから」(一条さん・以下同)
このメンタルを養うためのメソッドがコーチングだ。以前はアスリートや経営者などが目標達成のために取り入れていたが、昨今、ビジネスマンや主婦層にも広がっているという。
「コーチングを行えば、自分と向き合う作業を通じて感情や思考の癖を知り、これまでと違うものの捉え方を養いながら、ブレない心を作っていけます」
すぐにイライラする自分を変えたい。毎日笑って過ごしたいと思ったら、まずはコーチングをスタート!
心の“ブレ”はなぜ起こるのか?その傾向と対策
冒頭に紹介した“悩1~5”の問題点と対策を、一条さんに解説してもらおう。
「その前に、心がブレる大きな原因をもう1つお伝えしましょう。それは、物事の評価基準が自分ではなく、“他者”になっていることです。つまり、他人の目を気にして、他人の言葉を自分の意見のように錯覚してしまうんです。
特に40代以上の人は、子供の頃から周りの人と比べられる機会が多かったのではないでしょうか? 当時は『みんなと同じが正解、外れたらダメ』という時代。この思考パターンが身についていると、悩1、2のように自己肯定感が低くなったり、自分の不運を人のせいにしがちです」(一条さん・以下同)
◆自己肯定感が低い人の特徴
【1】感情的になりやすい
【2】「でも」「だって」「どうせ」「できない」をよく言う
【3】過剰に人をうらやむ
【4】他人の言動が気に障る
【5】短所が嫌でしかたがない
【6】ストレスを長く引きずる
◇自己肯定感が高い人の特徴
【1】感情の起伏が少ない
【2】「ありがとう」をよく言う
【3】人と自分を比べない
【4】他人を批判しない
【5】自分の短所も受け入れている
【6】ストレスを上手に解消できる
他者の評価に影響されるから
悩3のように、目標が長続きしない人にも他者評価の影がちらつく。
「目標設定を『誰かに認められたい』『誰かに勝ちたい』と、他者との比較で決めていませんか? 親にゲームを取り上げられた子供が隠れてでもやろうとするように、“want to(本当にやりたい)”であれば、誰に何を言われようとやり抜く意志があります。
しかし、『もっとも尊敬する恩師に認められたい』というような確固たる思いではない場合、目標はやがて“have to(やらされ感)”が勝(まさ)り、認められたい相手によって一気にモチベーションが上がったり下がったりします。それでも、自分と向き合うことができるようになれば、いつか必ず本物の“want to”は見つかります」
相手だけを変えたがるから
悩4の「相手が注意を聞いてくれなくてイライラ」の原因も私の心のブレ?
「イライラしているのがあなただけで、相手は気にもしていないのだとしたら、原因は、そう感じるあなたの心にありますね。相手に『変わってほしい』と期待しても、そもそも人間は指図されて変わるのが苦手。相手もあなたも『自分は変える必要がない。変わるべきは相手だ』と思っている限りは平行線です。動物は影響の弱い者に強く出る習性がありますが、人間も同じ。自分自身が抱える不満を、自分より弱いと思っている相手にぶつけていないか、自分の心に問いかけることも必要です」
もちろん、相手が悪い場合もある。だからこそ伝える方法が重要で、イライラした態度で示すのではなく、冷静に問いかける必要があるという。
「たとえば相手が夫なら、私は、『私はこう思うけれど、パパはどう感じた?』と、必ず相手の意見を聞きます。話すのが苦手なら、LINEや手紙でもいい。絶対にNGなのは『みんなが言っているから』という、他者の意見を持ち出すやり方。これでは、『自分はどうなんだ』と、ますます反発されてしまいます」
心のブレを加速させる要因は、ほかにもある。
「それは“ジャッジ癖”です。SNSの『いいね!』数が多いからいい、少ないのは悪いというように、心がブレる人の多くは、自分がどう思うかを考える前に、すぐにジャッジしてしまうんです。だから、ちょっとしたことで『もうダメだ』と自分を卑下してしまうかたが多い。ジャッジするのが早すぎるんです」
たとえば悩5のように、友人への忠告が逆効果なのも、聞き手のジャッジ癖が関係しているという。
「相談者はたいてい、忠告は求めておらず、ただ話を聞き、気持ちを汲んでほしいんです。ところが、心がブレた人が相談事を聞くと、『なんでそんなことしたの?』と、すぐにその人基準のジャッジをしてしまうから、相手の心に響かずにギクシャクしてしまう。ジャッジ癖を取り払い、相手の思いに寄り添うことが大切です」
「メンタルステージ」で自分の現状を知り、次のステージを目指す
コーチングで「自分はどう思うか」を練習する段階が自己認識ゾーン。ここから自己肯定・自己効力ゾーンまでは、自分を知る段階となる。学びたいという意欲が湧き、日記をつけたり、コーチングに参加して知識を得るなどして自分の軸を構築する期間だ。
そして、自己変革のステージに入ると、その先は成長する段階。これまで得た知識をもとに、まったく新しい何かにチャレンジしたり、転職や起業など、自分の可能性を広げるために行動するようになる。
頂点は、他人の成長が自分の喜びになる段階だが、ここが目的ではない。自分がこうありたいというゾーンを目指し、メンタルを磨き続けることが重要だ。そして、困難に直面しても、前向きに一歩ずつ進める最強メンタルを身につけ、たくましく生きていこう。
“心の成長度” を表す「メンタルステージ」(R)
●“なりたい自分”への成長階段
・自他貢献
自他を尊重し社会貢献する
・自他実現
実現したことで他者を応援し、共に幸せになる
・自己実現
自分の目的、理想に向けて努力し成し遂げる
・自己変革
積極的に自己の生き方、在り方を変える姿勢
●自分を知る段階
・自己肯定・自己効力
自分の可能性を認知している
・自己承認
自分で自分の存在を認める
・自己受容
できない自分もありのまま受け入れる
・自己認識
自分の能力や性格を明確に理解する
●要カウンセリング
・自己無価値・自己否定
自分には価値がない、生きている意味がないと悲観する
資料提供:Vision Navigation
“いまの私でOK”が最強マインド
一条さんのコーチングを受けにくる女性の9割は、「自分を変えたい」が目的だという。
「特に仕事や人間関係の悩みや問題が多いですね。本来コーチングとは、なりたい自分になる、夢を叶えるという高いゴールへ導くためのものですが、問題を抱えたかたには、まず自己肯定感を高めることを目標に、『自分との向き合い方』を教えます。これを習慣にできれば、問題が起こる手前で“心のブレ”や“ザワつき”に気づき、落ち込む前に対処できるようになります」
“起き上がりこぼし”のようにブレないメンタルは、ピラミッド中間の「自己肯定・自己効力」ゾーンに該当する。
「『短所を含めたいまの私でOK』と自己を受け入れ、他人のこともジャッジせずに認められる段階です。そこから先のステージは、さらなる高みを目指すものですから、まずは自己肯定まで行ければ上出来です」
自分が嫌い、他人をうらやむという思いが強い最下段ゾーンの人は、コーチングの力を借りながら少しずつ肯定感を育めばいい。なぜなら一足飛びに高いステージを目指し、自己流で「私はできる!」と暗示をかけて自己肯定感を高めてみても、ちょっとしたことで、すぐ元に戻ってしまうからだ。
「ボランティアは最上段の『自他貢献』に属する行為ですが、なかには承認欲求が強い、メンタル強度の低い人も。ある被災地で、ボランティアの救援物資の申し出を『もう足りてしまって』と丁寧に断ったら、『せっかく来てやったのに!』と暴言を吐かれた例もある。メンタルステージは一度上がったら不動、ではありません。メンタルが安定した人だって、耐えがたいほどつらい出来事が起こればグンと落ちる。誰でも上がったり下がったりするから、常に自分と向き合う時間と工夫が大切なのです。コーチングはものの捉え方を変え、習慣化していくもので、効果が出るまでに時間がかかります。ですが、続けていれば着実にメンタルが強くなっていくことを実感するはずです」
「自分はどうしたい」と常に問い続ける
実際、どんなセッション(授業)を行っているのか。
「たとえば、イライラした原因を書き出してもらい、質問を重ねて心の内を“掘って”いきます。幼少期からの失敗や成功体験、ショッキングな報道などの記憶が積み上がり、いびつな思考の癖の年輪が出来上がっている人もいます。最初は泣いてしまうかたもいますが、逆に『原因がわかった』と安心するかたもいます」
究極の質問は「自分はどうしたい?」なのだそう。
「他者評価が染みついている間は、答えられない質問なんです。だから、『なぜ私はイライラしたの?』『私はどうしてほしかったの?』と、自分主体で考えられるようにこの質問に答える練習を続けましょう。
たとえばイライラの原因が『同僚にもっと気配りをしてほしかった』だとします。けれど、実際に気配りを求めるのがゴールではありません。『なぜ気配りを求めたの?』『すごく頑張ったから』『けっこう残業しちゃったな』など、自分で自分と対話をするように、心を掘っていく。こうしてある程度自分の心を掘るとスッキリして、イライラが消えるんですよ」
「自分はどうしたい?」に答えられるようになれば、自分と向き合えている証拠。自分の軸ができ始め、起き上がりこぼしのメンタルに近づいているのだ。
脳は気になるものだけを拾う
一条さんのスクールでは、グループで「尊敬し憧れる人の好きな点を挙げる」という課題を行うことがある。
「同じ人物でも『自分の意見をハキハキ言えてかっこいい』『裏表がない』『笑顔が素敵』など、十人十色の意見が出る。実はこれが、“なりたい自分”を表す心のサインだったりするんです」
それは、脳に備わるRAS※(ラス)というフィルター機能によるものだ。
「RASとは、『妊娠すると街なかに妊婦が増えた気がする』『ほしい車が頻繁に目に入る』というように、潜在意識で気になっている情報だけを拾い、関心のないものはスルーするという脳の仕組みです。拾い上げるポイントが人によって違うので、同じものを見ても意見が分かれるのです」
当然、誰かの悪い点が気になってしまうと、RAS機能で欠点だけを拾ってしまうことになる。
「RASをネガティブに使うのはもったいないこと。これをプラスに利用し、自分が好きなことに意識を向ければ、物事をよい方向に引き寄せることができるのです」
※RASとは、Reticular Activating Systemの略で、脳幹網様大賦活系という脳機能のこと。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/オオノマサフミ
※女性セブン2024年3月28日号
https://josei7.com/
●アスリートのメンタルトレーニング術に倣う「苦しいときこそ笑顔」「オッケー」「な~んちゃって」