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阿川佐和子さん、更年期障害に悩まされながら続けた9年半の両親の介護 疲弊しながらたどり着いた「介護は少々手を抜くくらいでちょうどいい」

エッセイ、小説、テレビと幅広く活躍する阿川佐和子さん(71歳)。多忙な50代は、12年続いた更年期障害や9年半の両親の介護が重なり、心身ともに疲弊したという。そんなトラブル続きの日々をどう乗り越えたのか──。

更年期障害のホットフラッシュに悩まされ、体裁を後回しにして対策をした

――ご自身の更年期に両親の介護が重なって、大変だったそうですね。

阿川さん:私の更年期障害は53歳くらいから本格的に始まったのかな。とにかくホットフラッシュに頻繁に悩まされるようになりました。10分に1回とか、カァッと熱くなって首の後ろあたりに汗が溜まってくる。美容院に行った時に「ここの毛だけすごい傷んでます」って言われるほど汗をかいていました。化粧をした横から汗が流れてイライラするから、それを1つずつ排除していくことにしたんです。

まず、イライラのもとになる前髪を短く切りました。それから、私は体の割に腕が太いので袖のある服で隠していたんだけど、涼しくて楽なノースリーブにしました。それに、ラジオの仕事はすっぴん(笑い)。体裁を後回しにして、ホットフラッシュ対策をしました。

だけど、精神的にも不安定になってくるんですよね。感情のコントロールができなくなって、理由もなく急に泣いてしまう。それもシクシク泣くんじゃなくて、豪雨のようにダーッと泣いちゃうことが何度か起こって、これぞ更年期障害かって思っていた頃に、父と母の介護が始まったんです。

長期戦の介護のコツは手を抜くこと

――当時はレギュラーの番組やインタビューをいくつも抱えていて、仕事だけで手いっぱいな時期ですよね。

阿川さん:2011年からインタビュー番組『サワコの朝』(TBS系)が始まって9年半続いたんだけど、週刊誌でもインタビュー連載を持っていて、月に延べ8人に会っていました。かかる時間は8日じゃなくて、資料を読んだりするから16日間くらい時間を取られる。プラス、小説やエッセイの連載もしていて、週末には親の介護に行かなきゃいけない。

認知症の母と話していると笑っちゃうことがあったし、きょうだいや知人とも手分けしていたから、介護自体はそんなにつらくはなかったけれど。それでも、週末が近づいてくると「介護だな」って重い気持ちになりました。

私は63歳で結婚したので、両親の介護にダンナさんの世話が加わったのね(笑い)。仕事に追われてピリピリしながら帰宅したところ、ダンナさんに「ご飯何にする?」なんて言われて、「もうやってられない!」って切れたことがあるんです。そうしたら、彼が私の後ろにヌボ~と立つから、「何してんの?」と聞いたら、「精神的サポート」って(笑い)。そうやって私のイライラをユーモアで受け止めてくれる相手がいるのはありがたかったです。

――それは癒されますね。仕事をやめようとは考えなかったんですか?

阿川さん:仕事を減らして介護に専念しようと考えたこともありました。両親の介護と更年期障害でパニックになっていた時期に、友人の集まりに誘われたんです。事情を話して断ろうとしたところ、「だったら、なおさら来なさい!」と言われて。顔を出したら、なんとみんな介護経験者だったんです。

友人に、介護は何年続くかわからないのだから、全力で頑張ったら自分がひっくり返る。手を抜きなさいと言われて、目からウロコでした。それで、自分の生活を保ちながら介護も続けなくてはいけないと考え直したんです。仕事をしながら介護をするのは大変でしたが、気分転換にもなったので、トータルで考えるといい選択でした。

あてもなく歩いているように見える「徘徊」にも理由があるのではないか

――阿川さんの介護関連の書籍は複数あり、エッセイだけでなく小説も書かれていますね。

阿川さん:1つは、徘徊について書きたかったんです。子供が道に迷うと迷子なのに、老人だと徘徊になる、その2つしか言葉がないのは変だなって。言葉にすると「徘徊」になりますが、その人たちは理由があって行動してると思うんですよ。

例えば、おじいちゃんとおばあちゃんが2人で暮らしていたけれど、おばあちゃんが先立ってしまった。それを忘れたおじいちゃんは、おばあちゃんが買い物から帰ってこないと思って迎えに行って、自分がどこにいるのかわからなくなってしまった。これが徘徊になってしまう。当初はおばあちゃんを探しに行かなきゃっていう理由も整合性もある。

途中から回路がずれてしまった時の扱いについて、違った描き方はできないかなと思って『ことことこーこ』(KADOKAWA)を書きました。本当に真実が一番大事なのだろうか。そりゃあ信号が赤なのに青と思って前進したら大変よ、命に関わることについてはちゃんとわかってなきゃいけないけれども。でも、ピーマンときゅうりの違いがわからなくても構わないじゃない。そこに、介護をする側の気持ちをもっと楽にさせるための方法があるんじゃないかなって思ったんですね。

「さっきも言ったでしょ!」「なんでわからないの?」と叱っても効果はありませんし、お互いに疲弊しますよね。私も母に話を合わせるようになったら楽になりました。繰り返しになりますが、介護は少々手を抜くくらいでちょうどいいんです(笑い)。

◆作家、エッセイスト・阿川佐和子

あがわ・さわこ/1953年11月1日、東京都生まれ。報道番組のキャスターなどを務めた後に渡米。帰国後、エッセイスト、作家、インタビュアーなど幅広く活躍。99年に檀ふみ氏との往復エッセイ『ああ言えばこう食う』で講談社エッセイ賞、2000年『ウメ子』で坪田譲治文学賞、08年『婚約のあとで』で島清恋愛文学賞を受賞。近著に『だいたいしあわせ』がある。2012年から父で作家の阿川弘之さんの介護が始まり、2020年に認知症の母親が亡くなるまで9年間介護を行った。。

撮影/小山志麻 取材・文/小山内麗香

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