飲み込む力をアップして誤嚥予防になる【早口言葉エクササイズ】をボイストレーナーが伝授
「声が出しにくい」「以前の声と変わった」と、発声にまつわる不調を感じるシニア世代が急増しているという。そこで専門家による解説と、人気ボイストレーナーによる「早口言葉エクササイズ」を紹介する。声の通りがよくなり、飲み込む力も強くなるので誤嚥予防にもなるエクササイズは、日々の継続がおすすめだ。
教えてくれた人
高牧康さん/ボイストレーナー
発声指導法の開発と臨床研究、音痴矯正、吃音矯正、誤嚥予防音楽療法などを行う。
楠山敏行さん/耳鼻咽喉科医
東京ボイスクリニック品川耳鼻咽喉科院長。声と喉の疾患を専門とし、声に悩む患者の診察、治療を行う。
声変わりをする中高年女性が多い2つの理由
声が出るメカニズムを説明すると、喉の奥にある声帯と呼ばれる2枚のヒダが振動することで音が作られ、その音が喉や口、鼻で共鳴することで、ふだん私たちが聞いている声になる。
「このメカニズムがうまく機能しないと、声に異変が現れます。特に、女性が中高年期に声変わりをするのは、2つの理由が考えられます」と耳鼻咽喉科医の楠山敏行さん。
「理由の1つは、声帯のむくみによるものです。声帯の血流をよくし、潤すためには、女性ホルモンであるエストロゲンの働きが不可欠ですが、閉経後にエストロゲンが減少すると血流も悪化し、声帯が乾燥してむくむことが明らかになっています。声帯は弦楽器の弦のような働きがあるため、弦が太くなると低い音になることから、女性は閉経後の50代半ばくらいから声が低くなるのです」(楠山さん・以下同)
2つ目は横隔膜の低下によるものだ。
「息を吸うとき呼吸筋である横隔膜が収縮して平たくなり、同じく呼吸筋の外肋間筋(がいろっかんきん)が収縮することで肋骨が持ち上がり、胸郭が前後左右に広がります。そうすると肺が膨(ふく)らみ、たくさん息を吸い込めます。声は息を吐く力で声帯を振動させて出るのですが、横隔膜が加齢により衰えると息を吐く力も衰えるため、声が出しにくくなるのです」
早口言葉で声帯を鍛える
「声帯まわりの筋肉を鍛えるには、裏声と地声を使って早口言葉を言うのがおすすめ」と言うのは、ボイストレーナーの高牧康さん。
「早口言葉は自ずと声が高くなるので、音域が広がり、口を大きく動かすので言葉が明瞭になります。
裏声は特に高い声なので、声帯が伸びやすいように声門(せいもん)を開く筋肉が働き、地声は低い声なので、声門を閉じる筋肉が働きます。
地声と裏声を交互に使うことで、声帯まわりの筋肉が鍛えられ、声の通りがよくなり、飲み込む力も強くなるので誤嚥予防にもなります」(高牧さん・以下同)
早口言葉を言う前に、行いたいのが次の2つ。
「1つ目は、口を“い”の形にして笑うことです。『ひーーーーーっひひひ』と裏声まじりの悲鳴のような声を出して笑ってから、早口言葉を言ってみてください。声が出やすくなり、滑舌もよくなります」
2つ目は、早口言葉の前後に水を一口ずつ飲むこと。
「喉が潤うのでスムーズに声が出るだけでなく、早口言葉を言った後の方が飲みやすさを感じるはずです」
準備ができたら下の早口言葉を言ってみよう。
「1日1つを1回でも、4つ全部でも問題ありません。大切なのは毎日続けること。1つずつ行い、慣れたら2つ、3つと増やしていくのもいいですね。時間を決めて行うのもいいですが、気づいたらやるのもOK。これで表情筋も鍛えられ、若々しい表情になりますよ」
早口言葉エクササイズ4選
早口言葉を日々取り組むことで、声帯、あご、舌、唇を動かすことができ、顔全体が鍛えられる。高牧さんおすすめの「早口言葉エクササイズ」4つを紹介する。
早口言葉エクササイズ<1>
赤パジャマ、青パジャマ、昼間のパパ邪魔
赤パジャマ、青パジャマ、昼間のパパ邪魔
赤パジャマ、青パジャマ、昼間のパパ邪魔
【ポイント】
【1】地声→裏声→地声の順に3回読む。
【2】次に、パ行とマ行を裏声にして発声する。これで喉全体の筋肉を使うことができる。
早口言葉エクササイズ<2>
生麦、生米、生ごみの日
生麦、生米、生ごみの日
生麦、生米、生ごみの日
【ポイント】
【1】地声で1回読み、水を一口飲む。
【2】同じ速さで、今度は高めの声で読み、水を飲む。
【3】【2】の後で「水が飲みやすい」と感じない場合は、さらに高い声で読んでみよう。
早口言葉エクササイズ<3>
ブル、パグ、ブル、パグ、3(み)ブル、パグ、飼い主ブル、パグ、同じ顔
ブル、パグ、ブル、パグ、3ブル、パグ、飼い主ブル、パグ、同じ顔
ブル、パグ、ブル、パグ、3ブル、パグ、飼い主ブル、パグ、同じ顔
【ポイント】
【1】口パク(声は出さない)で、できるだけ早い速度で読む。このときオーバーに口を動かし、眉毛、まぶた、口角が上がっていることを意識する。
早口言葉エクササイズ<4>
庭にはニラ、裏庭にもニラ、ニラ好きがいる
庭にはニラ、裏庭にもニラ、ニラ好きがいる
庭にはニラ、裏庭にもニラ、ニラ好きがいる
【1】自分が出せる最も高い声で口を大きく動かしながら読む。
【2】唇をゆるめた状態にして、上の前歯で下唇を軽く噛み、できるだけ唇を動かさずに自分が出せる最も高い声で読む。これで滑舌がよくなる。
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2024年9月5日号
https://josei7.com/
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