インプラントやセラミック矯正が歯の自然治癒力を止める?「首の骨」のズレを整える噛み合わせ治療法を歯科医が解説
噛み合わせが悪いと特定の歯に負荷がかかったり、ケアが行き届かず虫歯や歯周病のリスクが高まる。歯並びや噛み合わせを治すには歯科医院で矯正歯科治療を受けるのが一般的だが、姿勢や体の位置を整えることも重要だという。その理由を歯科医の宮野敬士さんに聞いた。
教えてくれた人
宮野敬士さん/歯科医、歯科技工士、上部頸椎専門カイロプラクター
大阪歯科センター代表取締役、MTC歯科臨床研究会理事。歯科医師でありながら歯科技工士の免許を取得し、MTコネクター(R)を用いた咬合再構成を得意とする。『歯身一体(R)』を掲げ、噛み合わせを主軸にした包括医療に取り組む。著書に『放っておくと危険な身体を蝕む歯の噛み合わせ』(幻冬舎)。
噛み合わせは「首」が命
「噛み合わせのカギは首の上部頸椎にある」と語るのは、歯科医の宮野敬士さん。
「単なる歯の問題ではなく、私が考えるいい噛み合わせとは、上部頸椎に歪(ひず)みがなく、脳からの神経伝達が妨害されていない状態です。たとえ歯並びが悪くても、神経伝達への妨害がなければ、それは悪い噛み合わせではないと思っています」(宮野さん・以下同)
体は、脳から正常な神経伝達が送られることで自然治癒力が働くのだという。
「体と同様、歯も自然治癒力があり、自分に最適な状態に戻そうと日々動きながら独自の噛み合わせバランスを調整しているのです」
歯は1本1本「歯根膜」というクッション組織に覆われており、ミクロン単位で動くことができるのだ。
「そのために重要なのが上部頸椎。頭を動かす支点となる場所で、第1頸椎と第2頸椎を指します(下図参照)。この2つの頸椎は噛み合わせと密接に関連していて、噛み合わせが悪くなると上部頸椎がずれ、その逆も起こる。上部頸椎には『延髄(えんずい/脳幹の一部)』が入り込んでおり、上部頸椎がずれると延髄が圧迫され、神経伝達が妨害される。それにより、凝りや頭痛など、体の不調が生じるのです。上部頸椎のずれは全身の骨格のゆがみや姿勢の乱れといった『代償作用』をもたらし、さまざまな不定愁訴の原因となります」
その意味では過度な治療やそぐわない治療が上部頸椎を歪ませ、さまざまな症状を引き起こしている可能性がある。
「たとえばインプラントやブリッジ、セラミック矯正などは歯を固定させるため自然治癒力が働かなくなり噛み合わせを悪くし、上部頸椎を歪ませてしまうことがあります。噛み合わせを考慮した歯科治療は必須ですが、自然の法則に則り、治療は最小限に抑えながら歯のあるべき形・大きさ・方向性を実現することが重要です」
噛み合わせをよくするためには治療だけでなく、姿勢や体の位置を整えることこそ大切なのだ。
肩の高さや腰の高さが左右で違う人や、左右どちらかに首を動かしにくい人は、ほぼ上部頸椎がずれているそうだが、体に深刻な不調がなければ日頃のケアを地道に続けることが最善策だ。
歯科医だけでなく、上部頸椎を科学的に分析して施術する専門家に相談してみるのもいいかもしれない。
取材・文/佐藤有栄 写真・イラスト/PIXTA
※女性セブン2025年4月24日号
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