「34才の長男は結婚する気が毛頭ない」60代母親の悩みに92才料理研究家・小林まさるさんが回答|まさるの人生相談 第9回
92才の料理研究家・小林まさるさんが、読者のお悩みに真摯に答える人生相談企画。第9回は「子どもの結婚」に関するお悩み。自身の結婚にまつわるエピソードにも触れながら、まさるさんならではの結婚観を話してくれた。読んですっきり、心は晴々!
答えてくれた人
料理研究家・小林まさるさん
昭和8年、樺太(現在はサハリン)生まれ。70才から長男の嫁で料理研究家の小林まさみさんのアシスタントを始め、料理研究家として活躍。著書『人生は、棚からぼたもち! 86歳・料理研究家の老後を楽しく味わう30のコツ』(東洋経済新報社)ほか、小林まさみさんの著書『血糖値を下げる1か月献立』(Gakken)では血糖値を下げる企画にチャレンジ。88才でYouTubeを始めるなど、新たな挑戦を続けるシニア世代の星。小林まさる88チャンネル
お悩み「34才の長男が結婚しません。どうしたらいいですか?」
長男は34才ですが、結婚する気が毛頭無いみたいです。理由は「1人がよい」「今の会社での給与では子どもができても養えない」などです。
親としては、長男には寄り添って共に生きていける相手を探し、結婚を望んでいます。
息子に結婚をすすめた方がよいでしょうか? それとも、子どもの人生と割り切って、結婚のことには触れない方がよいでしょうか? まさるさんは結婚して良かったことって何ですか?(ペンネームなし・64才/女性)
まさるさんの回答「結婚するのもしないのも、息子さんの人生だ!」
俺は、ペンネームなしさんの息子さんの気持ちがよく分かるぞ。俺も全然結婚する気がなくて、親から「結婚せい! 結婚せい!」って何度も言われて、ちょうど34才の時に結婚したんだ。だから、そっくりだろ?
俺は「結婚せい!」と親にあまりに言われるものだから、もう面倒臭くなっちゃって、「それなら任せる! いい奴がいたら連れてこい!」と啖呵を切って、34才の4月にお見合いをした。見合いの後はお茶を飲みに1度だけ行って、5月1日には結婚しちゃったんだ。
俺たちの頃は、花嫁の家に男が迎えに行くのだけど、その途中で「あれ? ちょっと待てよ。おれのおっかあ(妻)になる人の顔、どんなだっけなぁ?」と思ったよ。会ったら、「ああ、そうだ、そうだ。この顔だ」って(笑い)。だって2回しか会ってないんだもの。
でも今は、俺たちの頃とは時代が変わったよな。かつては20代になったら結婚して、家族で暮らして、子どもができて、それが人生の喜びだったけど、今は自分の人生を楽しんで生きる時代だ。俺たちの頃は「結婚はしなければならない」と多くの人が思っていたけれど、現代はそういう考えではなくなっているだろう。
俺の孫も30才(男性)で、ペンネームなしさんの息子さんと同じようなことを言っているよ。「結婚ってどうなの? 結婚して子どもがいる人生は幸せなのかな?」って。
息子さんは「今の会社の給与では子どもができても養えない」と言っているようだけど、その気持ちもわからなくはない。
「お前、それは考えが間違っている! 俺の時代はこうだった!」なんて俺は言わないよ。今はもう、息子さんたちの時代だ。俺たちの頃とは価値観が違う。それがいいのか悪いのか、俺にはわからないけれど、「世の中は変わってしまった」とは思う。
「最近の若者は…」とは絶対言いたくない
「最近の若者はなっとらん!」「昔はこうだった!」という言葉が、俺は大嫌いだ。
今の若い人たちの方がよっぽどちゃんとしていて、俺たちの時代の方がチャランポランだったんだ。年をとると頑固で意地っ張りになっていく男たちを見て、「自分が年をとったらこうはなりたくない」と俺は思っていた。年を重ねたら、生きてきた経験があるのだから、補佐役に回ればいいんだ。今の若者に偉そうにアドバイスするなんて、俺はしたくない。
とはいえ、愛する息子の将来が不安な気持ちもわかる。若いうちは独身でもいいけれど、年をとったら心配だよな。でもそれは息子さんの人生だ。だから、「お前の人生だから、お前の好きにしなさい」って俺だったら言うな。
たまには「お前、将来どうするんだ?」って言葉はかけてしまうかもしれないけれど、「結婚しろ!」と親が何度も言うのは俺は反対だ。
俺が会社で働いていたとき、生涯独身を貫いた女性がいた。彼女は課長まで昇進して、アパートを3つも所有して、お金もたくさんあった。だけど定年を迎えたとき、送別会で酒を飲みながら、「お金はあっても、これからの人生どう生きていこう、結婚すべきだった」と涙を流していたことをよく覚えている。若い時はいいけれど、年を重ねてから悔やむってこともあるかもしれない。
「孫の顔が見たい」と言う親がいるけど、これも親のエゴだよな。自分の都合を子どもに押し付けるのはよくない。子どもの人生は子どものもの、その辺は割り切らないと。
俺自身、結婚して良かったとは思っているけど、おっかあが先に逝ってからは、仕事に育児に家事にと毎日懸命に生きてきた。もう結婚は…こりごりかなぁ。

まさるさん
子どもは子どもの人生を歩んでいる! 親の価値観を押し付けないようにしよう