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《医師の前できょうだいゲンカも》山田邦子、実母の介護を振り返って今思う 治療方針は「元気なうちに本人から聞いておかなきゃダメ」 目の手術や胃ろうをめぐって弟と意見の相違が発生

芸歴約45年、漫談家、俳優、司会者などマルチに活躍するタレントの山田邦子さん(64歳)。初めての介護に戸惑いながらも、YouTubeを通して介護の知識を得た経験や、意識のない母親の治療の方針で、きょうだいで揉めた日々を振り返った。

母親の意識があるうちにしておけばよかったこと

――介護について調べる中、YouTubeなどの視聴者にも助けられたそうですね。

山田さん:初めての介護で何もわからなかったんです。本を読んだりもしましたけど、YouTubeなどで発信していくことによって、「うちもそうだった」とか「こういうやり方があるよ」っていっぱい教えてもらえたんですよ。

視聴者さんに「介護認定を受けた方がいいよ」と教わるまでは、ヘルパーさんに手伝ってもらう発想すらなかったし、「近所に絶対にいい施設あるはず」と聞いて、とてもいいサービス付き高齢者向け住宅を見つけることができました。

YouTubeではファンの方とも楽しく交流していましたけど、実はたくさんの人が経験していたんだ、抱えていたんだとわかって、このつながりは素晴らしいと思いましたし、とても心強かったです。いろんなこと教えてもらいました。例えば、母は口が動かしにくくなったので、聞きたいことを紙に書いて見せて、うなずくだけで済むようにすると、まだコミュニケーションが取れるとかね。

――母親の介護で「こうすればよかった」と思うことはありますか?

山田さん:今は長生きする時代ですから、元気なうちから近所に介護施設がないか探したり、その介護施設を訪問したりすることは大切かもしれません。車椅子や電動ベッドの借り方を調べておくとか。便利なサービスはいっぱいあります。

それから、どうしたいかを本人から聞いておかなきゃダメですね。それをビデオに撮るのもいいですし。もっと厳密なことを言えば、弁護士の立会いのもとで一筆書く。「延命はしない」とか「こういう薬は使わないでほしい」とか。

それがなかったので、うちは母のことをきょうだいで決めなきゃいけないシーンがいっぱい出てきたんです。父は既に他界していますから。すると、みんな母のことを思って意見するのに揉めてしまう。だから、自分の場合には早めに意思を残そうと思っています。

どんな最期を迎えたいのか、家族でコンセンサスを取る難しさ

――どんなことで揉めたのですか?

山田さん:たとえば、目の手術です。もう母の意識はほとんどなかった段階で、お医者さんに「片目が見えてないかも」と言われたんです。弟は手術を選びました。私はしなくていいと考えたんですけどね。それに、胃ろうもしましたし、薬を入れるために喉に穴をあけたりして、私はそこまでしなくても、と思いました。

母の介護は弟がメインで行っていましたから、意見が割れた場合は私が引きました。医師の前で姉弟で言い合いのようになってしまって、恥ずかしいこともありましたけど(苦笑)。弟は母を治そうと一生懸命でした。

どっちがいいのかわかりませんよね。私は高齢になって弱ってしまえば、無理をさせないである程度は自然に任せた方がいいという意見だったんですけど。弟はあきらめず、母を叱咤激励していました。「頑張れ!」「ここ捕まって!」「立って!」って手足を動かしたりしてね。

頑張れって言われてもね……母は頑張ってましたけどね。弟は、母とのお別れを認めたくなかったんでしょうね。いくら嫌でも、いつかお別れは必ず来ます。母が亡くなって1年半ほど経ちますけど、弟はまだ立ち直っていません。

「心臓止まらないかしら」と胸を叩く母を見て――

――山田さんが母親の昭子さんの介護をされていて、印象に残っていることは?

山田さん:母に喜んでもらおうと思って、好きな食べ物を持って行った日に、ドンドン、ドンドンと音が聞こえてきたんです。なんだろうと母の部屋を覗いたら、「心臓止まらないかしら」って言いながら心臓を叩いていたんです。本当につらかったです。母は子供に迷惑をかけていると気に病んでいましたけど、私と弟は1日でも長く母といたかったんですから。

父は自宅で、心臓発作で突然亡くなりましたので、どういうお別れがいいかは、なんとも言えないですね。父とは悲しむ暇がないほどせわしないお別れでしたが、母とは長くお別れの時間が持てましたから、そこは幸せだったのかもしれません。ただ、だんだん弱っていく姿を見るのはつらかったです。でも、これが親が子供に見せる最後の教育、学びだと感じました。

――介護に関わっている方にアドバイスをお願いします。

山田さん:とにかく1人で抱え込まないこと。そして「まあまあの日」を作ること。つい100%を目指しますけど、一緒になって昼寝しちゃってもいいとか、任せられる人が来た日は外出してリフレッシュするとか。必死になり過ぎるとテンパっちゃうんですよね。本気で向き合ってるからこそイライラするし、身内だからこそケンカみたいになっていく。そんな時は、距離を置いて深呼吸です。

私がしておいてよかったなと思うのは、母の頭がしっかりしてるうちに、一緒にモノの整理・片付けができたこと。「お母さんこれいる? いらない?」って言いながら、口紅のような小さいものまで全部確認したんです。このおかげで遺品整理はスムーズでした。

◆タレント・山田邦子

やまだ・くにこ/1960年6月13日、東京都生まれ。1980年に芸能活動を開始し、翌年にデビュー曲で有線大賞新人賞を受賞。1982年第20回ゴールデンアロー賞受賞(第27回にも受賞)。1988年~1995年まで、NHK「好きなタレント調査」において8年連続で第1位。2007年に乳がんが発覚し(のち寛解)、がん啓蒙活動も行っている。2020年より約2年、母親の介護を行う。

撮影/浅野剛 取材・文/小山内麗香

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