公的介護保険の申請から施設入居まで 親の介護のために子供が知っておきたい介護の手続き
介護保険を利用することでさまざまなサービスが受けられるが、「まだ他人の世話になるのは早い」と考えがちな親に任せていると申請も滞ってしまう。
子供が制度の使い方を理解しておけば、親が可能な限りメリットを受けられるようサポートできる。
子供が代行できる介護の手続き一覧
以下の表は、手続きで子供が代行できること、親がしなければいけないことをまとめた一覧だ。
離れて暮らす親の場合、代行申請が可能
介護保険の申請のために、地元の自治体にある『要介護認定・要支援認定申請書』に必要事項を書き込んで提出することは子供でも可能だ。
「離れて暮らす子供の場合、代行申請という制度が便利です。実家に最寄りの地域包括支援センターに電話すれば、職員が実家を訪れ、親に質問をしながら申請手続きをしてくれるので、仕事を休む必要はありません」(介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏)
認定調査員が来る日は、子供も付き添ったほうがいい
ただ、要介護認定のために親の元に認定調査員がやってくる日には「仕事を休んで付き添ったほうがいい」と太田氏が続ける。
「親はできないことでも『できる』と言いがちです。その返答が反映され、要介護度が低く評価されたり『自立』と認定されると、適したサービスを受けられない恐れがある。同席していれば、『親はああいっていましたが実は……』などと実情を調査員に伝えることもできる」
ケアマネの初回面接は同席すべき
要介護と認定されると、自治体から地元のケアマネージャーを選ぶための一覧表が送られてくる。
「近所の事業所を選んで子供が電話して構いません。まれに相性がよくないケースもあるので、ケアマネジャーと親との初回の面会には同席しておくとよいでしょう。見落としがちですが、ケアマネージャーが日頃からメールで連絡できるか確認しておくこと。後々、親の状態や希望を伝え合うのにスムーズです」(同前)
サービスの利用がかさみ、自己負担が一定額(市町村民税課税世帯なら4万4400円)を超えると、高額介護サービス費の支給申請をすれば還付が受けられる。
「限度額を超えた最初の時に振込先口座などを記入する申請用紙が送られてきます。返送、記入は子供がやる世帯が多い」(同前)
老人ホーム選びは、親の選択基準を聞きながら進める
老人ホーム入居が視野に入ってきたら、情報収集に動けるのは子供。親本人が見学できれば問題ないが、親の入院をきっかけに、退院後の老人ホーム選びを迫られるケースが少なくない。
「親の衰えが進んでいる状況では、情報収集のみならず老人ホームの見学から入居申し込みまで子供がやらざるをえませんが、その際も『親の家の近くか、子供の家の近くか』『ペット可かどうか』など親の選択基準を聞き、報告をしながら進めた方がいい」(同前)
入居後に、親が合わないと判断しても、90日以内であればクーリングオフ制度を使える。制度を用意していない無届け施設でないか事前に確認しておきたい。
教えてくれた人
太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト。介護・暮らしジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー(AFP)。1960年、京都市生まれ。20年にわたる取材活動より得た豊富な事例を基に、「遠距離介護」「ワークライフバランス」「介護とお金」等の新たな視点で新聞・雑誌・テレビなどで情報発信。行政、組合、企業での講演実績も多数。著書に、『70歳すぎた親をささえる72の方法』、『老親介護とお金』、『故郷の親が老いたとき』、『遠距離介護』などがある。NPO法人パオッコ(http://paokko.org/about/)代表。
※週刊ポスト2019年3月8日号