親のトリセツ【心理編】親が怒らない“話し合い方”のポイント6つ
誰しも、「自分がボケた後、死んだ後」のことなんて考えたくない。介護や相続、親のこれからのお金について、相談を持ちかけ、賛同を得る上では、得する制度や手続きを熟知することに加え、「心理面」の配慮が欠かせない。
「縁起でもない」と怒りを買わないために、凝り固まった親の心をどう解きほぐせばいいか。
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1.「結論から入らない」
子供が親に対していきなり「相続家族会議をやろう」と呼びかけても「俺に早く死ねというのか!」とソッポを向かれてしまう。“結論から入らないアプローチ”も大切だ。
「まずは家族の“課題”を親子で共有する。その上で、『後になって兄弟で揉めないか、少し心配だなぁ……』とそれとなく伝えてみる。いかに、“親が開催を呼び掛ける”かたちに持っていけるかが重要です」(相続コーディネーター・曽根恵子氏)
2.相続会議ではまず、「親の話」を聞く
会議の場では「親ファースト」を心がける。
「『お父さん、お母さんはどうしたいの』と親の考えを尋ねる。財産を残してくれることへの感謝の気持ちを伝えて、尊重すれば親は決して悪い気はしません。親の提案が間違っていると感じても黙って聞き、しばらくしてから『ご近所はこうらしいよ』と緩やかに軌道修正を図りましょう。焦らないことが大事です」(相続コーディネーター・曽根恵子氏)
3.“第三者の指摘”にする
“子供たちが財産目当ての話ばかりする”と思われると話がこじれる。「ご近所では」「詳しい人は」といった、フレーズを使うことが有効なこともある。
「家族が認知症対策として成年後見人や家族信託の手続きをしたくても『俺はボケてない!』と親が反発することも多いでしょう。認知症の話は持ち出さず、『銀行からも“何かあった時に大変だから、そろそろ子供が管理した方がいい”といわれた』といった言い方をしてうまくいくケースもある」(弁護士・遠藤英嗣氏)
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4.数字の効果的な使い方
愛着があるだけに、実家の処分には心理的な抵抗が特に強い。「リアルな負担」を詳細に伝えることで、親に現実を認識してもらうやり方がある。
「不動産は高額なだけに、子供が被る損益も巨額になりやすい。空き家になった時の負担額を正確にシミュレーションして伝えれば、“負の遺産を残したくない”と処分に同意する親も少なくないはずです。いちいち数字を出せばいいというものではないが、親が“そんなにかかるのか”と驚きそうなら、選択肢の一つになる」(円満相続税理士法人代表・税理士・橘慶太氏)
5.「嫌だったら断わればいいから」できっかけづくり
老人ホーム入居についても、子供が焦っていいことはない。
「決して強制するのではなく、『嫌だったら断わればいいから、見るだけ見てみよう』と親に主導権を渡すかたちで施設を見学したり、体験入居やショートステイをしてみることが大切です。親が老人ホームに入居する際、『日中は自宅にいて昼食も家で食べ、夜だけは施設で過ごしてみよう』と提案してうまくいった例もあります。逆に『しばらくの間だから』と無理やり入居させると、後に大きな禍根を残します」(介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子氏)
6.流れを作って「聞く力」
相続と並んで、切り出し方を間違えると話がややこしくなるのが、“親の死”を前提とした葬儀や墓の話題。
「単体で葬儀の話をするのではなく、“晩年をどう過ごしたいか”という話の流れの中で『お墓は買っておくの?』『お葬式はどうする?』などと聞いていけば、話題にしやすくなるはずです。子供たちが“みんなで考えよう”という雰囲気を出すことで、話しやすくなる」(葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏)
共通するのは親の意向を蔑ろにしないこと。親が「自分で決めた」実感を持てることが、円満な解決につながる。
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※週刊ポスト2019年3月1日号