猫が母になつきません 第372話「右大腿部骨折」
ふたたびの整形外科入院。前回の左大腿骨骨折の時と同じ手術を右でもすることに。術前に看護師の方からいろいろ説明を受けている中で「術後2日後の退院になります」という言葉が。「はい…えっ?」さらっと言われたので一度スルーしてしまいましたが「2日?診察の時に先生は2~3週間ておっしゃってましたけど?」。午前の診察時には担当医に2~3週間入院と言われたのに、午後の病棟の説明では2日に縮まっていたのです。「何かの間違いでは?」と問いただすと「確認しておきます」と言われましたが、その後やはり2日後に退院という連絡がありました。
知り合いの整形外科医に相談すると「術後管理を無視している」と。「感染症や合併症を起こしてしまうこともある、手術直後の管理は精神科医、精神科スタッフでは心配」「入院が短縮されたのは担当医が若いということだから、病棟のスタッフから突き上げをくらった結果だろう」。病棟としては認知症の患者を受け入れるのは大変…母は前回の骨折の時のことがあって「面倒な患者」としてまだ記憶に新しかったのでしょう。
病院に電話すると看護師は「このくらいで退院するのはうちではよくあるケース」。整形外科の担当医は「環境変化による認知症進行を危惧して術後2日での転院を精神科のドクターと相談して決めた」という返事。ドクター側では「精神科でも週2回は整形外科の受診ができる日があるから大丈夫」という判断だったようですが、精神科病棟の看護師の人と直接電話で話した時にはあきらかに術後すぐの受け入れを不安がっていました。ドクターが決定したとしても実際にケアをするのは現場のスタッフです。現場が不安なら私も不安でした。とにかく「術後合併症のことを考えると2日で退院は心配なので1週間くらいは診てほしい」とお願いしました。
手術当日、朝早くから病院にスタンバイ。今日もお願いしなくてはと身構えていましたが、担当医の方から先に「傷が落ち着くまで最低1週間は診ます」というお話があり、心底ほっとしました。手術前の検査で貧血が判明し、今回は輸血が必要になりました。前回の手術の時には輸血はしていませんでした。母、生まれて初めての輸血です。いずれにせよ2日後の退院は無理でした。
手術を終えた母のレントゲン写真は両足に人工物が入ってまるでサイボーグのよう。入院中の母は静かだったようで個室に移ることなくずっと大部屋で過ごしました。前回よりも体力的にだいぶ弱っていたし、精神科の薬で日中でもほとんど朦朧としているか寝ているかのどちらかだったからです。この頃、私は母の新たな受け入れ先を求めてあちこちの施設を見学していました。
【関連の回】
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。