猫が母になつきません 第454話「くつろぐ」
猫がそばに来てすわるのは「飼い主さんに対して信頼や安心の気持ちがある証拠」なんてよくネットに書かれています。さびはいつも定位置で私に背中をむけて寝そべり、じっとしているか寝てしまうか。私は「この時間よ、永遠に続け」と願い、さびを起こさないように静かにしていたのに、ふとみるといつの間にかいなくなっていて「なんだよ(寂)」と思います。あの絶対に気づかれないまま姿を消す技ってなんなのでしょうか。人間もこの技を使えたら社会人とかだと重宝しそうです。
この《くつろぎを共有する》という行為をさびはあきらかに「意図的に」やっています。私がデスクでパソコンに向かっている時にはさびは別の部屋の自分のベッドでくつろいでいて、そばにくるのはお腹がすいたときくらい。私がソファに座ったときにのみおもむろにこの尊い《くつろぎタイム》は始まるのです。今私には人間の家族はいないので、ごく近い関係で何かを共有するという感覚は忘れてしまっているというか、そもそもあったっけ?とすら思う。しかも共有するのはとても抽象的な《くつろぎ》という、まったりとした空気感です。長年連れ添った夫婦とかならそういうこともあるのかもしれませんが、経験がないのでわかりません。
それにしても幸せな時間が永遠に続けと願う欲張りな私が気がつかないように適当なところで《くつろぎタイム》を切り上げてそろっと姿を消すさびのクールさよ…。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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