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健康

91才のシニア女性もハマるキックボクシングの魅力「筋力がついて毎日張り合いが出る」

 格闘家・那須川天心の活躍も記憶に新しいが、全身をバランスよく鍛えられると、藤あや子や広瀬すず、ホラン千秋、菜々緒、秋本奈緒美ら多くの芸能人がハマっているキックボクシング。「そんな激しい運動、私には無理!」と思うかもしれないが、実は高齢者のリハビリとしても注目され、90代から始めている人も! 打って蹴って、また打って、ストレス解消にも効果的。100才になっても歩ける体作りを今日から始めませんか?

全身をバランスよく使う効率のいい運動

「私のジムには60~90代の生徒が多いのですが、中には、杖が必要な89才の男性も。彼は3か月のレッスンで、杖なしの生活を取り戻しました」

 とは、元キックボクサーの生井宏樹(なまいひろき)さん(「」内以下同)だ。

 キックボクシングはパンチを打つときに肩甲骨を動かすので、肩回りの血流がよくなり肩こりが改善されるうえ、蹴る動作が加わることで腹筋や背筋がつく。片足立ちになるため、体幹も鍛えられる。

「腰回りに筋肉がつくことで腰痛などが改善され、体幹が鍛えられると転倒防止にもつながります。パンチ、キック、ガードなど手足を連動させる複雑な動きを繰り出すため脳トレにもなるんです」

 つまり、中高年以上にとって一生歩き続けるのに必要な筋肉をバランスよくつけられる要素がキックボクシングには詰まっているというわけだ。

 シニア世代にも話題のキックボクシング。その効果と魅力とは? 生井さんのジムに通う91才の川崎榮子さんと65才の笹原敦子さんら経験者にキックボクシングの魅力を教えてもらった。

実はリハビリに最適なスポーツ

 その動きの激しさゆえ、“若者のスポーツ”という印象が強いキックボクシングだが、いまシニア世代にも注目され、トレーニングを始める人が増えている。

 その先駆けとなったジムが、前出の生井さんが代表を務める「PEACE PACE」(東京・豪徳寺)だ。なぜこのジムにシニア世代が通うようになったのか──。

「たまたま見たテレビ番組でこちらのジムが紹介されていて、私よりも先輩のかたがたが楽しそうにトレーニングをしていたんです。なんて素敵なんだろうと思って…。それまで運動は一切してこなかったので、体を動かさないといけないとは思っていたのですが、マシンを使った筋トレのような決まった動きをひたすらするのは性に合わないなと。

 とはいえ、若い人がバシバシ打ち合うような本格的なキックボクシングは怖くて無理。こちらのジムは接骨院が併設されていて、もし何かあっても安心してトレーニングできるのが決め手になりました」

 と話すのは、2021年5月からキックボクシングを始めたという笹原敦子さん(65才)だ。

 生井さんのジムはもともと接骨院で、リハビリの一環として診療スペースでキックボクシングを教えていた。ガラス張りの接骨院なので、シニア世代の患者がグローブをつけてパンチを繰り出す様子が外から見え、地元で少しずつ話題になっていった。

 さらに、生井さんがTwitterで77才の女性生徒のトレーニング風景を投稿したところ大反響。キックボクシングがシニアのリハビリにも最適なスポーツとして認知され、トレーニングを希望する生徒が増えたのだという。ジムで最高齢となる川崎榮子さん(91才)もそのひとりだ。

「もともと少し足を引きずって歩いていて、それを見た孫から“こういう接骨院があるよ”と教えてもらったのがキックボクシングに出合ったきっかけです。最初は接骨院で治療してもらい、リハビリとしてキックボクシングを教えてもらうようになりました」(川崎さん)

 はじめは杖をついていた89才の男性も、3か月間トレーニングを続けた結果、補助なしでミットにパンチを打ち込めるまでに。

「鋭い右ストレートが打てるようになり驚きました!」(生井さん)

メンタルにもいい変化が表れる

 キックボクシングの動きは、肩回り、腰回り、ひざ、腹筋、背筋がバランスよく鍛えられる。筋力がついて体幹がしっかりしてくると、反射神経もよくなって瞬発力が上がり、それが転倒防止にもつながるという。

「瞬発力が上がると、転びそうになったとき、とっさに手がつけたり、物が落ちてきたときにガードできるようになるので、突発的な事故からも身を守れるようになります。そういう意味でも、キックボクシングは高齢者にこそおすすめしたいんです」(生井さん)

 2020年12月からトレーニングを開始した川崎さんは、いま週に1回、20分程度のパーソナルトレーニングを行っている。

「始めてから2~3か月頃には足がうまく動かせるようになってきたと実感。いまは杖を持たないことも増えています。これまでは階段を下りるのに不安がありましたが、筋力がついてきたせいか、その怖さも少しずつ和らいできました」(川崎さん)

 いまでは外出も楽しみの1つになっているという。

 これまでインドア派だったという笹原さんも、キックボクシングを始めるようになってから出不精が解消された。

「60才になって、まったく知らない世界に飛び込みたいと思ってはいたものの、もともと虚弱体質で体力はないし、運動を何もやってこなかった私なんかにできるのかと、最初は不安もありました。

 でも、気持ちを盛り上げてくれるような声がけをしてくださるし、自分のペースで無理せず続けられるので、“私でもできる”という自信がつきました。汗をかくのも気持ちがいいし、体は確実に引き締まりました。いまは週1回続けていますが、最初まったくできなかった片足立ちでのひざ蹴りも、自分なりに少しずつ上がるようになってきたので、本当に楽しいですね。体力がついたのでお出かけもよくするようになって…。自分だってできるんだという気持ちになったことは私にとっていちばん大きな変化でした」(笹原さん)

70代までなら若者と同じメニューでOK

 生井さんの生徒は50代がメイン。キックボクシングに運動神経は関係なく、50~70代は、20~40代の若い世代と同じメニューでトレーニングしても、意外にもついてこられるという。

「もちろん、骨粗しょう症などの持病がある人は、専門医の指示に従って慎重に行った方がいいですが、キックボクシングの基本動作であるパンチ(ジャブ、ストレート)とキックはどの世代もやり方は同じです。基本動作を覚えた後はそれを組み合わせて動くだけ。レベルに応じて強度は変えますが、動きに素早さは必要なく、ゆっくりでも構いません。腕や足も上がるところまででOK。無理のない範囲で目標設定を行い、楽しんで続けることが筋トレや脳トレになるのです」(生井さん)

 腰を曲げ、杖をついて歩いていた80~90代の生徒たちも、週1回3か月ほどのレッスンで自分の足でしっかり立てるようになり、パンチやキックの威力も増して、ガードの反応も早くなるという。片足立ちで蹴りまでできるようになる様を目の当たりにすると、人間はいくつになっても成長できることを実感すると、生井さんは続ける。笹原さんも、

「高い目標ではなく、いまより少し上の自分を目指すようにしています。達成したい目標が生まれると、毎日に張り合いが出てきますから」

 と、キックボクシングを続ける意気込みを語ってくれた。

教えてくれた人

元キックボクサー・柔道整復師 生井宏樹さん/元J-NETWORKライト級日本ランキング1位。キックボクシングの指導と並行して接骨院にも勤務。2017年に独立し、東京・豪徳寺に「接骨院Palledo」を開院。2021年にはキックボクシングジム「PEACE PACE」も開設。主な著書に『60・70代からの不調と痛みに効く!キックボクシング・エクササイズ』(メイツ出版)。https://peacepace.shopinfo.jp

実演モデル/笹原敦子 指導・撮影スタジオ/PEACE PACE
取材・文/番匠郁 撮影/楠聖子、高柳茂、矢口和也、平野哲郎

※女性セブン2022年11月3日号
https://josei7.com/

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