筋肉量は1年に1%ずつ減少 運動嫌いでもできる”チリつも運動10選”で筋力を強化
人生100年時代。健康で長生きしたいと願って、食事に気をつけるところまではしていても、運動までは…。専門家いわく、健康で長生きのカギは「筋肉量」にあるという。とはいえ「筋トレ」はちょっとムリ…。そこで、日常的生活の中で手軽にできる筋トレの秘策をご紹介。題して「チリつも運動」。チリもつもれば筋肉量も増えていく!
筋力は1年に1%の割合で減っていく…
「人間は、筋肉から衰えていく動物であり、衰えるのも、甦(よみがえ)るのも、元気に長生きできるかどうかのカギも、筋肉が握っている」
筑波大学大学院人間総合科学研究科教授の久野譜也さんは、そう断言する。
筋肉量は20~30代をピークに1年に1%の割合で減っていき、閉経によってホルモンバランスが変わると減少のペースが加速。年代ごと下記のようなトラブルを引き起こし、80代の筋肉量はピーク時の30~50%になってしまう。
●30代
・疲れがたまりやすくなり、翌日に持ち越す
・運動会で転んでしまう
・肌のたるみが気になる
・冷え性がひどくなる
●40代
・たまにつまずいたり、転んだりする
・代謝が落ち、中年太りが進む
・姿勢が悪いと言われる
・腰痛や肩こりに悩まされる
●50代
・体力がめっきり低下、階段を急いで上ると息切れする
・反射神経が鈍くなってきた
・体が硬くなる
・健康診断でメタボと指摘される
●60代
・よろけたり転ぶことが増えた
・座り姿勢からすっと立ち上がれない
・ひざや腰など、関節が痛む
・尿漏れするようになった
●70代
・歩くスピードが落ちた
・ちょこちょこ歩きになった
・ペットボトルのふたが開けられない
・むせたり、せき込むことが増えた
体の不調は筋肉量の低下に原因が
「これらの体の不調の主な原因は、筋肉量の低下にあると考えられています。『ウオーキングをしているから大丈夫』という人がいますが、残念ながら筋肉量の低下にウオーキングの効果はほぼゼロ。筋肉を増やすには、筋トレをするしかないんです。ただ、いくつになっても筋肉は鍛えられ、増やせることも事実です」(久野さん)
つまり、筋肉を意識して体を動かし、筋肉量をキープすれば、衰えを食い止めることができ、最後まで「動ける体」をつくることはできるのだ。
とはいえ、「運動は苦手」な人はどうすればいいのか? 秘策は「チリつも」にあり!
普段の生活の中に“筋トレ”を取り込む
「朝起きたら顔を洗い、歯を磨くように、筋トレも習慣づけることができれば、3週間ほどで効果は自覚できる」
そう力強く語るのは、『簡単ストレッチですぐにペタ腹!10秒おなか伸ばし』(光文社)の著者でスポーツ&サイエンス代表の坂詰真二さん。
「でも、最初から張り切りすぎると筋肉痛に悩まされ疲れてしまい、三日坊主になりやすい。テレビを見ながらでも、ふと気づいたときに筋肉を意識して正しく動かせば、たとえ1分であっても効果はあります」(坂詰さん・以下同)
たとえば下で紹介している、【1】の「上体反らし」の場合、お腹の上部が床から離れるまで反らせば、充分に背筋が鍛えられる。しかしつい張り切りすぎてお腹の下部が床から離れるほど無理に上体を反らすと、効果が出るどころか筋を痛める可能性がある。
「それに、立ち上がるごとに姿勢を正すのもいい方法です。加齢によって下半身の筋肉が衰えると、足の裏の外側に体重をかけて立とうとします。これではひざが外に開いてO脚になり、ひざや股関節に大きな負担がかかります。足の裏の内側を意識して歩けば、下半身に力が入りやすくなり、ふらつくこともありません」
最強の筋トレといわれるスクワットも、正しく行うのは難しいイメージがある。
「椅子の背もたれなどにつかまって行えば、初心者でも簡単にできます。私の祖母はそれまで何も運動していなかったのに、70代後半から今回紹介した家でできる筋トレを始めて、98才でも元気に台湾旅行に参加することができました」(久野さん)
何才からでも筋肉を鍛えられる筋トレは、“いま”こそ、始め時なのだ!
リビングでくつろぐなら…チリつも運動10選
くつろぎのスペースであるリビングは、床に座ったり、寝転んだりした姿勢からの筋トレに最適。1時間に1回、筋トレタイムを組み込めば、いまいる場所がトレーニングスタジオになる。部屋の移動の際も、たとえ数歩でも筋トレにつなげよう。
1.【背中・腰】ちょい上体反らし
腰痛予防にもなる。床にうつ伏せになってテレビを見ているあなた、いまこそ背中を鍛えるチャンス!
体をまっすぐに伸ばし、ひじを曲げて両手を重ねてアゴを乗せる。息を吐きながらひじを床から少し浮かせて10秒キープ。息を吐きながらゆっくり元に戻る。これで、背中の脊柱起立筋が鍛えられ、腰痛予防や姿勢改善の効果が得られる。
※腰を反らしすぎないように注意!
2.【お腹】背起こし腹筋
頭と背中を浮かそう!「あーダルい」と、仰向けに寝ころんで休憩中。そんなときは、足を腰幅に開いてひざを立て、息を吐きながらお腹に力を入れてゆっくり背中を浮かせてみよう。
このとき、勢いよく上体が起き上がるまでやる必要はない。息を吐きながら肩甲骨が床から離れる程度に浮かせればOKだ。続けて、息を吸いながらゆっくり背中を床につける。約10回繰り返せば、腹直筋が鍛えられる。
※お腹に力を入れよう!
3.【お尻・二の腕】尻浮き座り
手を後ろにつくほど効果あり!体の後ろに手をつき、ひざを立てたリラックススタイルでも、お尻を少し床から浮かせるだけで、お尻の筋肉を鍛えることができる。
手と足で体を支えたままお尻を10cmほど床から浮かせて10秒キープ。このとき、ひじを伸ばして指先を後ろに向けること! この姿勢のままひじを軽く曲げれば、二の腕も鍛えられる。
※指先を後ろに向けるのがポイント!
4.【脇腹・骨盤矯正】お尻歩き
”ズボラ?”いいえ、筋トレ中。床に座っているときに、「あー、耳かきが欲しい」などと思ったら、わざわざ立ち上がる必要はない。座ったままで腕を大きく振ってお尻歩きで取りに行こう。これで脇腹にある腹斜筋の筋トレに。骨盤を動かすので骨盤や姿勢を整える効果も期待できる。
※腹筋を意識してトレーニングしよう!
5.【お尻・太もも】アヒル歩き
中腰歩きで美尻に10歩前進!トイレに行くなど、移動するときは、腰を落としたままの中腰姿勢で歩いて、下半身を鍛えよう。背すじをまっすぐ伸ばしたまま、腰から下だけを動かすように歩くのがポイント。大きな下半身の筋肉を鍛えれば代謝がアップ。全身の引き締め効果も。
※大胆に大股歩きで!
6.【ふくらはぎ】ドア開閉足首伸ばし
押してっ!引いてっ!で血流促進、むくみ解消!部屋の扉を開けるときは、一方の足を鍛えながらもう一方のふくらはぎとアキレス腱を伸ばしてみよう。
【1】右足を大きく前に1歩踏み出してドアノブに左手をかける。【2】上体と両足のつま先を正面に向け、右足に体重を乗せて腰を落とし、左足のふくらはぎに心地よい伸びを感じる位置で、ゆっくり呼吸をしながら10秒キープ。反対側も。
※ふくらはぎの筋トレになります!
7.【お尻・太もも】つかまりスクワット
お尻を突き出し“どっこいしょっ”。「椅子に座って休憩~」と思ったら、椅子の背もたれ側に回り、足を肩幅に開いて立って背もたれに手をかけ、息を吸いながらひざを直角に曲げて腰を落とす。次に、息を吐きながらゆっくり元に戻る。
このとき、ひじは伸ばしたままで、お尻を後ろに突き出すように腰を落とせば、ひざ頭がつま先よりも前に出ず、正しい姿勢に。これで下半身の筋肉が効率よく鍛えられる。
※足は肩幅に開いて!
8.【前もも】スマホ操作deプチトレ
太もも強化はこのタイミングがバッチグー! 椅子に座ってスマホチェック。そんなときは椅子に浅く腰かけてひざを閉じ、かかとを少し上げて手前に引き、背すじを伸ばして目線の高さでスマホを見れば、太ももの前面が鍛えられ、腰や首の負担も減る。このままお尻を軸に少し前に体を傾ければ、負荷がアップする。楽に呼吸をしながら10秒キープしよう。
9.【お腹】背中丸め座り
猫背と見せかけて腹筋中デース!「だらけた座り方をしてしまった~」というとき、どうせなら椅子に浅く腰かけて両足を前方に出し、かかとを床につけて、背もたれにつく手前まで背中を丸め、お腹に適度な負荷をかけてみよう。このまま楽に呼吸をしながら10秒キープすれば、腹筋、鍛えられますよ。
※かかと床につけるのがポイント!
10.【お腹】10秒de腹ペタポーズ
立ったついでに、姿勢を整えるストレッチ! 「たるんだお腹が気になる~」。そんなときは、【1】足を軽く開いて立ち、つま先をやや内側に向け、足の内側に体重をかける。【2】上半身はまっすぐにしたまま両手で骨盤あたりを持ち、そのまま骨盤を前に倒す。【3】手を助骨のあたりに移動させ、親指以外の指を肋骨にあてて胸を高く引き上げる。【4】そのままひじを伸ばして肩を引き、目線を上げて楽に呼吸をしながら10秒キープ。
教えてくれた人
久野譜也さん/筑波大学大学院人間総合科学研究科・教授、坂詰真二さん/スポーツ&サイエンス代表
取材・文/山下和恵 イラスト/斉藤ヨーコ、カツヤマケイコ
※女性セブン2021年9月16日
https://josei7.com/
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