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暮らし

《ある日突然、親の介護が…》「介護保険」いざという時に慌てないために知っておきたいこと 認定を受けるには?想定より低い介護度になった場合は?

 親のけがや病気などである日突然、直面することになるのが介護だ。その際に欠かせないのが、介護サービスを自己負担1~3割で利用できる介護保険。利用には、要介護や要支援といった「要介護認定」が必要だ。いざというときスムーズに利用するために、申請の流れや注意点を知っておきたい。そこで、ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんに、介護保険について詳しく教えてもらった。

* * * 

教えてくれた人

丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー

 22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。

介護保険の対象者と認定までのフロー

 歩くのが大変になったり、転倒することが増えた。入浴や食事、着衣の脱着などに人の助けが必要になったなど、高齢などによる身体機能の衰えや、病気やけがなど特定の疾病で、日常生活で支援や介護が必要になったときは、介護保険サービスの利用を検討しましょう。

 介護保険サービスとは、寝たきりや認知症などにより、介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合に、要介護認定を受けることで、自己負担割合が1割・2割・3割負担で介護給付や予防給付のサービスを受けることができます。

 対象となる人は、65歳以上の第1号被保険者、または、40~64歳の第2号被保険者かつ16種類ある「特定疾病」いずれかの患者で、要介護認定を受け、要介護・要支援と判定された人が利用できます。

本人が住んでいる自治体の福祉課の窓口へまず相談

 要介護認定を受けるには、認定を受けたい人が住んでいる自治体の介護保険課か各行政センターの福祉係の窓口にまず相談しましょう。相談先は本人の自治体である必要がありますが、実際に窓口へ相談に行くのは本人でなくてもよいため、家族が代わりに相談に行っても問題ありません。

 また、高齢者のよろず相談窓口である「地域包括支援センター」で、介護保険の代理申請サービスを利用することもできます。

意見書の作成後、認定調査を実施

 介護保険の申請後は、市区町村からの直接依頼で、主治医に申請者の病歴や健康状態についての意見書を作成してもらいます。その後、市区町村の職員などの認定調査員が本人の自宅を訪問し、普段の生活の様子や心身の状態について本人や家族から聞き取り調査を行います。

2回の判定後、認定結果通知が届く

 認定調査後、コンピューターによる1次判定が行われ、その結果と主治医の意見書をもとに、2次判定として「介護認定審査会」で要介護度の判定が行われます。

 認定結果は「要介護1~5」、「要支援1、2」、「非該当(自立)」のいずれかが明記された認定結果通知書と、介護保険の被保険者証が届きます。通知書などが届くのは、申請から原則30日以内とされています。

要介護の認定を受ければさまざまな介護サービスが受けられる

 要介護1以上の認定を受ければ、自宅で利用するサービスや施設に入所して利用するサービス、日帰りで施設を利用するサービスなどを受けることができます。ただし、いくらでも自由に利用できるものではなく、毎月の利用限度額なども決まっています。そのため、ケアマネジャーに相談しながら作成したケアプランの内容に沿って、介護サービスを利用することになります。

ケアマネジャーは福祉課窓口などで紹介してもらえる

 ケアマネジャーは自治体の介護保険課の窓口で紹介してもらえるほか、地域包括支援センターなどでもらえる居宅介護支援事業所リストやハートページという冊子から探すこともできます。ハートページはWebサイト(https://www.heartpage.jp/)もあるため、自分たちで探したいという場合は活用するといいでしょう。 

 なお、ケアマネジャーにかかる費用は全額、介護保険から給付されます。

認定結果に納得いかない場合は不服申し立ても可能

 市区町村が行った審査結果(行政処分)に不服がある場合は、都道府県設置の介護保険審査会事務局または市区町村の介護保険担当課に、認定結果を受け取った日の翌日から3か月以内に不服を申し立てることができ、これを「再審請求」と言います。

  よくある事例として、自宅に訪問した認定調査員を来客だと思い、いつもよりも親がしゃきっとしてしまい、実態にそぐわない状態での調査となるケースです。そのことで、想定より低い認定度になってしまったり、「非該当」になってしまったりした場合は、再審査請求を行うことで、介護保険認定結果が妥当な判断であったかどうかを再審査してもらうことができます。

「介護保険審査会」は、市区町村等が行った介護保険における処分についての再審査請求の審理・裁決を行う中立的な第三者機関として設置されています。

不服申し立てを行うと認定までさらに時間がかかる

 不服申し立てを行う場合、都道府県の介護保険審査会(以下「県審査会」へ「審査請求書」を提出すると、県審査会から市区町村に対して、審査請求があった旨を通知するとともに、「弁明書」の提出が求められます。市区町村は県審査会に「弁明書」を提出し、この写しを審査請求人に対して「弁明書」の写しが送付されます。

「弁明書」の内容に反論があるときは、「反論書」を県審査会へ提出するなど、追加の書類のやり取りや、必要に応じて専門調査員による調査などが発生します。そのため、かなり時間がかかってしまう点には注意しましょう。また、再審査請求をしたとしても希望通りの結果になるとも限りません。

要介護の認定前は原則サービス利用ができないが例外も

 原則は結果通知書を受け取った後、介護度の認定を確認してから介護サービスを利用することになりますが、緊急の場合など結果を受け取る前に介護サービスを利用したい場合、申請後の利用であれば、結果受領後に、申請日まで遡って介護サービスを受けることはできます。

 ただし、認定を受けられなかった場合は全額自己負担になるほか、想定していた介護度より低い認定を受けた場合は自己負担額が増える可能性があります。

  不服申し立てを行った場合も同様で、申し立てによって高い介護度になることを想定して介護サービスをあらかじめ利用したとしても、低い認定度となった場合は差額が自己負担となるほか、結果が出るまではすべて立て替えることになるため、不服申し立てを行うかどうかは慎重に検討することをおすすめします。

認定後に介護の度合いが上がったら区分変更の申請を

 要介護認定を受けることができたものの、その後ケガや病気などで介護の度合いが上がったときなど、認定度を変更してもらいたいという場合は、「区分変更の申請」を行うことができます。これは、本人に身体的・精神的な状態変化があった際に行うもので、市区町村の担当窓口に「区分変更申請書」などの必要書類を提出するか、ケアマネジャーを通じて申請することができます。

  区分変更では、初回の認定調査と同様に原則30日以内に新しい要介護・支援度が出されることになっており、区分変更申請中でもサービス利用を継続できるというメリットがありますが、必ずしも区分変更が認められるとは限りませんし、場合によっては介護度が下がることもありますので、区分変更の必要性をよく確認しましょう。

要支援認定なら介護予防サービスを利用可能

 要介護ではなく「要支援1、2」の判定を受けた場合は、「介護予防サービス」を利用可能です。居宅介護サービスとも呼ばれ、状態の悪化を防ぐために生活機能の維持向上や改善を目的として行われるサービスです。介護予防訪問入浴介護や介護予防訪問介護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導など、寝たきりにならないためのサービスが用意されています。

  デイケアと呼ばれる「介護予防通所リハビリテーション」も、このサービスで利用可能です。動くことはできるが誰かのサポートがないと生活レベルが低下してしまうような場合は、「介護予防サービス」を利用し、悪化を防ぎながら生活の満足度維持・向上を目指していくといいでしょう。

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