多世代交流ができる 複合開発の街に生まれた老人ホーム<前編>
老後の住まいを探す際に注目したいポイントの1つが街の環境だ。特に自立の人が住み慣れた地域から離れて暮らす場合、周囲の環境が生活の快適さを左右するはず。入居先の施設を検討する際、建物自体やサービスはチェックしても、街の様子を確認するところまで余裕がある人は少ないようだ。
介護付有料老人ホーム「センチュリーシティ王子」
複合開発の街に立地する有料老人ホーム
首都圏では近年、街ぐるみで大小さまざまな規模で再開発が行われているが、高齢者向けの施設の建設を再開発計画の中に入れる事例が増えてきている。2018年4月、東京都北区王子に生まれた「住」「商」「育」の揃った複合開発の街の中にオープンした介護付有料老人ホーム「センチュリーシティ王子」もその1つ。「商」を担う複合商業施設の中心を担うのは大手スーパー。医療モールや保育園も入っているので子育て世代にもうれしい環境だ。また近隣には商店街や病院、図書館などがあり、生活しやすい環境が整っている。最寄駅の東京メトロ南北線「王子神谷」駅からも徒歩約6分と近く、都心にも出やすく利便性も高い。
「住」としては賃貸マンションと分譲マンションが建てられている。これらを活用することで、離れて暮らす世代の違う家族が近居を可能にするのも街のコンセプトの1つ。同じエリアに親世代と子世代が住むことによって、程良い距離感を保ちながら日常的に助け合って暮らすことができるようにしたのだという。「センチュリーシティ王子」の支配人を務める佐野浩一さんに複合型施設の中にある利点について聞いてみた。
「分譲マンション、賃貸マンション、保育園、学童保育などが入っていて、街の中で生活の多くが完結できる環境になっています。多世代が交流できるように一体開発されていて、実際に入居者の方々と学童保育の子どもが昔ながらの遊びを楽しむ交流をしています」(佐野さん 以下「」は同)
「センチュリーシティ王子」自体も賃貸マンション、学童保育との複合施設。施設内には四季折々の草木を楽しめるコミュニティガーデンやパーティールームといった共用部があり、多世代交流の場になっている。
「ジェントルブリーズ」のサービスとは?
高齢者向けのサービスは加減や距離感が難しい。やり過ぎると高齢者の意欲や能力を削いでしまいかねない。「センチュリーシティ王子」を運営する株式会社センチュリーライフのサービスコンセプトは“ジェントルブリーズ~やさしい風~”だ。
「当たるか当たらないかくらいの風をイメージしています。介護保険がない時代からそういったことをコンセプトに看取りまでやっていました。やり過ぎず、本人にできることは本人にやってもらって、できないところは押し付けない形でしっかりとサポートしています」
「センチュリーシティ王子」には自立型の「リビング居室」と介護型の「ケア居室」が1つの建物に併設されている。住み替えも可能なので、年齢を重ねていく中で心身の状態が変わり、介護が必要になっても住み続けることができる。
リビング居室には、IHクッキングヒーターが付いたシステムキッチンがあり、自炊も可能。現時点では入居者の約半分が自炊をしているという。またリビングルームには床暖房も完備。フロントのスタッフと話せるインターフォンや緊急通報装置が備え付けられているので、いざという時の備えとして安心感がある。
「緊急通報ボタンは、リビング、トイレ、風呂に備え付けられています。ペンダント型のものもご入居時にお渡しするので、ご心配な方は枕元に置いておけば、何かあった時に押すことができます。そうすると、すぐにスタッフが駆けつけますし、部屋のスピーカーで話をすることもできます」
自立の人の生活には干渉せず、快適な生活の手伝いを自然な形で行っているそうだ。例えば、一時的な体調不良の際の通院付き添いもその1つ。要支援期には、外部の訪問サービス等も組み合わせて対応していく。「センチュリーシティ王子」の近隣には同社が運営する訪問介護サービスもある。そして要介護期には、ケア居室に住み替えることで24時間の見守り、生活の介助、健康管理など、心身の変化に合わせた対応をしてくれる。
午前中に訪れた際、自立の入居者がどんどん外出していく様子が印象的だった。佐野さんたちスタッフも、入居者が中に閉じこもらずに外部と触れ合うことを歓迎している。
老後の住まいを探す際、街を楽しむという視点も入れると選択肢が広がり、新たな発見があるかもしれない。地域の資源を活用することを重視しているセンチュリーシティ王子は一つの良い例になりそうだ。
撮影/津野貴生
【データ】
施設名:センチュリーシティ王子
公式WEBサイト:http://www.centurylife.co.jp/home/ouji/
所在地:東京都北区王子5-1-49
最寄駅: 東京メトロ南北線「王子神谷」駅徒歩約6分、JR京浜東北線「東十条」駅徒歩約7分
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:株式会社センチュリーライフ
敷地面積:5901.94平方メートル
延床面積:12818.18平方メートルのうち6080.95平方メートル
室数:リビング居室(自立型)60室、ケア居室(介護型)30室
入居要件:混合型(自立含む)
構造:鉄筋コンクリート造、地上10階建
開設年月日: 2018年4月1日
料金:
【1】リビング居室(自立型)前払い金方式:入居一時金3120~5480万円(70~85歳)+月額費用(1人入居)17万2800円(管理費10万8000円+食費6万4800円)+光熱水費は実費
【2】リビング居室(自立型)一部月払い方式:入居一時金2560~4930万円(70~85歳)+家賃3万円(月額)+月額費用(1人入居)17万2800円(管理費10万8000円+食費6万4800円)+光熱水費は実費
【3】ケア居室(介護型)前払い金方式:入居一時金1050万円(65歳以上)+月額費用(1人入居)18万3600円(管理費10万8000円+食費6万4800円+光熱水費1万800円)+介護費
【4】ケア居室(介護型)月払い金方式:入居一時金0円(敷金として家賃3ヶ月分が必要)+月額利用料41万1850円(家賃17万5000円+管理費10万8000円+介護費用53250円+食費6万4800円+光熱水費1万800円)
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
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