胃ろうが外れた人も!「あきらめない」自立支援介護を実践する老人ホーム<前編>
ウェルケアガーデン馬事公苑
介護付有料老人ホーム「ウェルケアガーデン馬事公苑」を運営する「株式会社サンケイビルウェルケア」はフジサンケイグループの一員で、シニア事業を推進するために2011年4月に設立された。そして2012年にオープンした「ウェルケアテラス氷川台」を皮切りに自立支援介護を実践する介護付有料老人ホームを開設してきた。
当サイトでは昨年2月に同社が手がける「ウェルケアガーデン久が原」を紹介したが、今回訪ねた「ウェルケアガーデン馬事公苑」も理念は同様で、「入居者が健康を取り戻していくこと」を目指している。入居者が元気になっていく“自立支援介護”とはどういうものか。その理念を施設の様子とあわせて紹介していく。
できないことを介助するのではなく、再びできることを目指す介護
高齢者の介護を考える際、できなくなってしまったことをいかにして補うかを考えることが多い。トイレに行けなくなったのでオムツをする、自立して移動ができなくなったので介助する、といった形だ。しかし、高齢になったからといって失われた機能がそのまま回復しないとは限らない。ウェルケアガーデン馬事公苑では、できなくなった理由を探し、それを取り除くことによって、再びできるようになることもあるという視点で介護を行っているのだという。
「要支援・要介護の人に再び健康な心と体を手に入れてもらい、いつまでも明るく、楽しく暮らしてもらうこと」。それがウェルケアガーデン馬事公苑の自立支援介護が目指す目標だ。そのために“身体的”、“精神的”、“社会的”なサポートの3つからなる「Value aging(バリューエイジング)」というコンセプトを掲げている。
「自立支援介護」の4つのポイントとは?
自立支援介護では4つのことにポイントを置いている。それは水分、食事、運動、排泄。
入居者は、1日1500mlの水分摂取を目標としていて、そのため、食事や運動時などに飲んだ水分量をスタッフが正確に記録している。体内の水分量が不足すると、意識や覚醒の水準が落ちて、ぼんやりとしてきてしまうのだという。
なぜ、1日1500mlなのか。体から自然に排出される水分量は2400ml、体内で発生する代謝水といわれる水分と食事に含まれる水分の合計が900ml。これらを差し引きすると1500mlの水分が必要なのだ。この量の水分を補給することで、イライラや興奮状態の予防にも効果があるのだという。このことは自宅での介護でも実践できそうだ。
一人ひとりにあった「あきらめない介護」を実践
「アセスメントといいますが、入居前の状態をご家族などから細かく伺い、それにあったサービスを提供しています。例えば、寝たままでいないように、ホームに入居後、すぐに座位を取っていただいたり、食事もベッドではなく椅子に座って召し上がっていただいたりします。入居当日からそういったことをさせてもらっていますね。基本ケアの4つを忠実にさせていただくことで要介護度5から2に改善した方もいらっしゃいます。水分と排泄、運動、食事の4つを連動させ、実践しているのが『あきらめない介護』です」(ウェルケアガーデン馬事公苑・総支配人の今村卓弥さん。以下、「」同)
今村さんはウェルケアガーデン馬事公苑の開設以来の改善実績表を見せてくれた。そこからは実践の結果が如実に読み取れる。
開設以来の延べ人数でいうと、車椅子からシルバーカー・歩行器への改善が24人。寝たきり状態から車椅子になった人もいる。また、食事内容が軟飯から米飯(普通の固さのご飯)に改善が31人、中には胃ろうから常食にまで回復した人までいる。
こういった結果を生む一方で、自立支援介護を行うためには、介護スタッフの負担が当然大きくなるのではないか。
「私たちはスタッフの都合ではなく、ご入居者目線で介護を行っています。寝たきりのままにするのでなく、スタッフ2人がかりになってもトイレまでお連れしています。お食事面でも、やっぱり胃ろうよりも口から食べていただきたいという気持ちで介助を考えます」
もう一度、自分の足で歩くために
今村さんが話してくれた通り、ここではオムツを使わずにトイレに行って排便することを目指している。
排泄には4つのポイントで挙げた水分や食事、運動も関連している。十分な水分を補給し、栄養バランスの良い食事をよく噛んで食べる。そして運動を習慣にし、体調を整えていくと体に自然なリズムが生まれてオムツのいらない生活が可能になっていく。自分自身でトイレに行くことは自立につながり、外出ができるようになるなど行動範囲も広がっていくそうだ。
このような自立支援介護の基礎となっているのが、国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授の考え方だ。竹内さんはサンケイビルウェアの顧問でもあり、超高齢社会における自立支援介護の理論とメソッドの普及に尽力している。
元気になりたい、もう一度自分の足で歩きたい、好きなものを食べたい、外出や旅行に行きたいという方は、ウェルケアガーデン馬事公苑のような、自立支援介護を取り入れた施設入居を検討してみてもいいかもしれない。もちろん全ての人が理想通りに回復できるわけではないが、人との交流やいきがいを持ち続けることによって健康を目指すためのサポート体制がここには用意されていると感じた。
撮影/津野貴生
【データ】
施設名:ウェルケアガーデン馬事公苑
公式WEBサイト:https://www.sankeiwellcare.com/facilities/bajikouen/
所在地:東京都世田谷区上用賀2-2-15
最寄駅:東急田園都市線「桜新町」駅より徒歩19分、小田急電鉄小田原線「千歳船橋駅」よりバスで約10分、「農大前」バス停より徒歩1分
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:株式会社サンケイビルウェルケア
敷地面積:1952.53平方メートル
延床面積:4114.06平方メートル
室数:81室(全室個室・定員81名)
入居要件:満65歳以上、自立、要支援、要介護の方
構造:鉄筋コンクリート造、地上5階建
開設年月日: 2013年3月1日
料金:
【1】標準プラン
入居前払金/65~84歳3020万円、85~94歳2168万円、95歳以上1734万円
月額利用料(全年齢共通)/25万5500円(内訳は月払い家賃8万500円、管理費4万円、水道光熱費6480円、食費7万4520円、上乗せ介護費用5万4000円
【2】月額低額プラン
入居前払金/65~84歳3800万円、85~94歳2790万円、95歳以上2250万円
月額利用料(全年齢共通)/17万5000円(内訳は月払い家賃0円、管理費4万円、水道光熱費6480円、食費7万4520円、上乗せ介護費用5万4000円
【3】1年プラン
入居前払金/469万8600円
月額利用料(全年齢共通)/27万5500円(内訳は月払い家賃8万500円、管理費6万円、水道光熱費6480円、食費7万4520円、上乗せ介護費用5万4000円
【4】0円プラン
入居前払金/0円(敷金190万円)
月額利用料(全年齢共通)/66万7050円(内訳は月払い家賃47万2050円、管理費6万円、水道光熱費6480円、食費7万4520円、上乗せ介護費用5万4000円
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさった上、あくまでご自身の判断でお選びください。
【このシリーズのバックナンバー】
●小田急沿線で「住まい」にこだわるサービス付き高齢者向け住宅<前編>
●小田急沿線で「住まい」にこだわるサービス付き高齢者向け住宅<後編>