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「自宅で穏やかに旅立ちたい」本人の希望を叶えるために…家族がやってはいけないこととは?【在宅緩和ケア医・萬田緑平さん解説】

 自宅で必要な医療ケアを受けながら最期まで自分らしく過ごす「在宅緩和ケア」に注目が集まっている。在宅緩和ケア医の萬田緑平さんはこれまで2000人以上の患者を看取ってきた在宅医療の第一人者。萬田さんが対談を含めて60ページに渡って在宅医療についての解説を担当した倉田真由美さんの著書『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題を集めている。同書から、一部抜粋して紹介する。

自宅で医療的ケアはどこまでできる?

 萬田診療所の在宅緩和ケアを希望される終末期のがん患者さんの場合、モルヒネなど医療用麻薬で痛みのコントロールさえできていれば、特別な医療ケアはほとんど必要ありません。

 医療用麻薬と聞くと、怖いと思うかもしれませんが、痛みを我慢して動けなくなることのほうが、命を縮めることになると私は考えています。繰り返しますが、筋力が弱って歩けなくなると身体は急速に衰えていきます。

 ある患者さんは肺がんの末期だったのですが、医療用麻薬を使いながら、1年半ほど普通に生活して大好きなゴルフも続け、亡くなる1週間前までコースにも出られていました。末期がんに限らず、緩和ケアで痛みを取ることで患者さんのQOL(生活の質)は高められるのです。

 ただし医療用麻薬は副作用もありますので、患者さんの体調や症状に合わせて、適切な量を医師がコントロールする必要があります。増量するにしても慎重に少量ずつ増やしていく。それが緩和ケア医の技術なのです。

「腹水」の処置は医師による

 がんが進行すると腹水が溜まるケースがあります。腹水によってお腹が大きく膨れ上がって胃が圧迫されて食べられない、呼吸が苦しいなど、不快な症状が現れます。しかし腹水を抜くか抜かないかは、医師の考え方と技量によります。

「腹水は身体にいい成分も含まれているから抜くと衰弱する」と、抜きたがらない医師も多い。萬田診療所では、患者さんが望まれる場合には腹水を抜く処置を行います。

 週に一度、腹水を抜くために通院されていた末期がんの患者さんは、処置後には食事がしやすくなるとのことでした。この方は、仕事も続けられ、3年ほどのお付き合いになりました。急いで腹水を抜くと血圧が下がるので、ゆっくり抜いたほうがいいという医師もいます。一方で、自宅に訪問した際に時間をかけても報酬がコスト的に見合わないので抜かない医師もいます。

 私の場合は、初回だけ血圧が下がるタイプかを見極め、その後はなるべく短時間で処置しています。血圧が下がってトラブルになることは滅多にありません。

急変しても救急車は呼ばず医師に連絡を

 在宅緩和ケアを選ばれた終末期のがん患者さんの場合、痛みのコントロールの他、ほとんどの医療ケアは必要ないケースが多いです。私が夜中や休日に緊急訪問することは年に数回程度です。

 もしも急変した時は、訪問医や訪問看護師に連絡をするようにお伝えしています。最期の刻が近づいている場合は、ご自宅で家族がどのように対処すればいいのかをご説明します。そして医師や看護師が伺って、痛みを抑えながら静かに旅立てるようケアをします。

「落ち着いて普段通りに」というのはなかなか難しいかもしれませんが、慌てて救急車を呼んでしまうと、そのまま病院に入院して延命治療が施されて、帰れなくなってしまうこともあります。

 ご家族が慌てて救急車を呼ばなくていいように、ケアの態勢や状況を作ってあげることが私たち在宅医療チームの仕事なのです。本人が「自宅で穏やかに旅立つ」ことを決めたのであれば、ご家族はその意思を尊重しましょう。

プロフィール/萬田緑平

1964年生まれ。群馬大学医学部卒業。大学病院の外科医として多くののがん患者の手術や抗がん剤治療を行う中で医療や看取りについて疑問を感じ、2008年から緩和ケア診療所に勤務。2017年「緩和ケア萬田診療所」を設立し、患者と家族のケアを続ける。『家で死のう!』(フォレスト出版)など著書多数。出会った患者と家族の日常と看取りまでを追ったドキュメンタリー映画『ハッピー☆エンド』も話題に。

撮影/五十嵐美弥

『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』<AMAZONで購入>

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