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介護士に向いている人・向かいない人の違い 「損得勘定で動く人は不向き」な理由

「介護の仕事は誰でもできると思われがちですが、それは違うと思います」。こう語るのは、介護士ブロガーのたんたんさんこと、深井竜次さんだ。介護の仕事に「向いている人・向いていない人」について考察。介護現場で働く人の適正とは?

僕は介護の仕事に向いていたのか?

 介護士ブロガーのたんたんと申します。

 5年間介護現場で働いてきた経験や知見をもとに、「多くの介護士さんが幸せな働き方を実現できるように」という思いを込めて、ブログを運営しています。

 介護ポストセブンでもこれまで僕が介護現場で経験した出来事や学びを、「介護士さんをはじめ介護にかかわる多くの人に参考になれば…」と思って連載を書いてきました。

 今回は自分が介護士として多くの介護業界と関わる中で感じた「介護士に向いていない人の特徴と解決方法」について解説していきます。

 僕自身、介護の仕事に向ていたいのか…経験をもとに考えてみたいと思います。

介護士に向いていない人の特徴3つと対処方法

 介護職は人と直接関わって介護サービスを提供する仕事なので“適性”があると僕は考えています。

「介護は誰でもできる」と思われている方もいますが、それは間違いだと思います。

 昔は介護は自宅で家族が行うことが主流だったので、「誰でもできる」と考えられがちでした。しかし、在宅介護は家族の負担も大きいので、人の手を借りたり、介護のプロ任せたりすることが一般的になり、今は介護士という仕事も確立しています。

 介護の仕事は「誰でも始めることはできる」とはいえますが、それは「誰でもできる」とはイコールではないと思います。

 なぜなら、介護士は、認知症など病気に対する知識や理解を深めることや、臨機応変な対応ができるスキルの高さ、チームで連携して入居者に関わっていく高度なコミュニケーション能力も必要となります。このように、介護の仕事は、とても奥が深くて難しいともいえます。

 何より、介護の仕事は、ケアする利用者によって対応が変わるため、正解がありません。

 一方で、明らかな間違いは存在します。間違った対応をせずに、正解を探し続ける、とても難しい仕事ともいえます。

 介護の仕事は誰でもできるものではなく、その人の“適性”はとても重要になってくると考えています。介護士として現場で働いた経験から、僕が介護士に向いていないと思う人の特徴は、以下の3つです。

介護士に向いていない人の特徴3つ

1.損得勘定で動く人、お金が優先の人

2.失敗したとき自分を責めすぎてしまう人

3.コミュニケーションが苦手な人

1. 損得勘定で動く人、お金が優先の人

 介護の仕事で損得を考えすぎる人は、介護の仕事を続けるのは大変だと思います。

「お金を稼ぐため」という観点だけで介護職に就いてしまうと、給料に納得できないかもしれません。ちなみに、介護士の年収は、以前より改善されてきてはいますが、400万円に満たないのが現状です。

 僕の回りの介護従事者は、介護の仕事は給料がそこまで高くないことをわかったうえで、働いています。自分の仕事で相手が喜んでくれることに幸せを感じたり、利用者さんとの心の交流を重視したりと、お金や損得勘定を抜きにして、仕事に関わっている人も多いです。

 損得勘定で動くこと自体は全然悪いことではありません。効率よく仕事をし、お金を稼ぐことは、自分の仕事をコントロールするうえで必要なことです。

 管理者など人をまとめる立場になれば、時間やコストを優先させなければいけないことも多く、損得勘定で動くことも必要になるでしょう。

 僕が介護の仕事をしていていつも感じていたことは、単純に「介護の仕事は面白い」ということです。

 相手によってケアの正解がなく、自分のケアひとつで利用者の生活が変わってしまうというプレッシャーはありましたが、正解がないからこそ、奥深い仕事。そこが、介護士の仕事の醍醐味だと思います。

 どの仕事も同じですが、ひとつの仕事を長く続けていくためには、「楽しい」「面白い」と感じることが大事だと思います。

 損得で動いてしまう人は、いずれ仕事が楽しくなくなってしまうかもしれませんし、決して高給とはいえない介護の仕事を続けていくのは難しいかもしれません。

対処方法「長い目で仕事を楽しめる人に」

 介護の仕事は、ある程度長く続けることで、やりがいを感じて好きになっていくケースもあるので、なるべく続けてみて欲しいと考えています。

 最初は「介護士に向いていないかも」と感じても、経験を重ねていくことで、損得勘定とは別の楽しさを見つけられるかもしれません。

 僕自身も実は、「介護士向いていない」と悩むこともありましたが、働いていくうちに、楽しさや面白さを発見でき、介護士として成長できたと思っています。

→僕が介護士として成長を感じた老人ホームの誕生祝い 回転寿司に仰天した利用者の実話

「向いていないかも」と様々な壁にぶつかりながらも、働き続けていられたのは、働く介護施設の環境や人間関係の要素が大きかったと思っています。

2. 失敗したとき自分を責めすぎてしまう人

 介護の仕事をしていると、自分のミスが原因で利用者に怪我をさせてしまったり、業務が停滞したり、さまざまなことが起こります。

 トラブルがあったとき、「自分が悪い」「自分のせいだ」と、自分を責めてばかりいると、いずれ精神的に辛くなってしまうかもしれません。

 介護士をしている人の中には、「自責の念」が強い人がわりと多いように感じます。

 実際、僕自身も失敗をするたびに自分を責めてしまうところがあります。介護現場で働いていたときは、自分を責めることで気持ちが落ち込み、ケアの質が落ちたり体調を崩してしまったりしたこともありました。

 介護の仕事を長く続けるには、メンタルを良好に保つ必要があります。

 何かあったとき、「自分のせいではない」と考えるのは無責任かもしれませんが、必要以上に背負わないことが大事です。

対処方法「失敗の経験は今後誰かのためになる」

 問題が起きて落ち込んだときは、すぐにほかの職員や上司に相談をしましょう。チームとして次の対策を考えることが大切です。

 施設側が対策を考えてくれず、自分に全責任を押し付けてくるような場合は、職場を変えることを考えたほうがいいかもしれません。

 ミスは誰にでもあることなので、「次の仕事へのステップ」と考えて、チームで共有することが大事です。次は自分の経験をいかして、ミスをした人に対してフォローやアドバイスをすればいいと思います。自分を責めるのではなく、「自分の失敗が今後、誰かのためになる」と考えてみてはいかがでしょうか。

3.コミュニケーションが苦手な人

 介護の仕事はコミュニケーションが主な仕事だと思っています。

 最近は、認知症患者の介護も増えているため、より高いコミュニケーション能力が求められるようになってきているとも感じます。

 利用者様の体調や精神状態は、ひとりひとり違いますし、日や時間によっても変わってくるため、細やかなコミュニケーションが必要になります。

 友人や家族と接するのとは違い、有料のサービスを提供しているわけなので、高度なコミュニケーションが求められます。つまり、コミュニケーションが苦手な人は、介護現場で悩むことも多いと思います。

対処方法「積極的な関わりだけがコミュニケーションではない」

 コミュニケーションが苦手という人は、自分がやりやすい方法を見つけて試してみることをおすすめします。

 僕が現場で学んだのは、介護におけるコミュニケーションは、「どんどん話しかける」「元気に明るく接する」といった積極的なものだけではないということ。

 ときには、利用者様がどんなことに困っているか少し離れて観察したり、相手がどんなときによく笑うのか、悲しい顔をしているのか表情や感情を探ったりすることも、コミュニケーションのひとつといえます。

 利用者様が食事中によくこぼしてしまうことに気がついたら、エプロンを提案してみる。また、エプロンが嫌だなと感じていたら、それは使わずに、タオルでケアをするなど、相手の状況を見ながら、言葉をかけてみる。言葉の数は少なくても、相手を笑顔にできることもあります。

→介護士は食事の介助に”エプロン”を使うべきか…僕が介護現場で学んだひとつの答え

 人とたくさん話す「コミュニケーション」は苦手でも、人間観察なら面白いと思える人もいるのではないでしょうか?

 そして、コミュニケーションによるミスやトラブルは、なるべく早めに仲間や上司にSOSを出して、相談するようにしてください。

 さまざまな対処法を試したうえで、やはり「向いていない」と感じるのなら、まずは他の施設を探してみるという手もあります。

 環境や人間関係が変わることで、苦手を克服できることもあるかもしれません。

 たとえば、認知症患者さんとのコミュニケーションが難しいと感じているなら、受け入れをしてない施設を探してみるなど、自分の適性に合う職場を探すといいでしょう。

 そして、それでも「向いていない」と感じるなら、他の職種に転職を考える段階なのかもしれません。

介護士に向いていない人の特徴【まとめ】

 今回紹介した「介護士に向かない人の特徴」に当てはまっていたとしても、介護の仕事をすぐにやめるべき、ということではありません。

 どんな仕事も最初から「自分に向いている」と思える人はそう多くはないと思います。介護に真剣に向き合って、勉強を続けることによって、適性が身につくものだと感じています。

 介護には正解がない。だからこそ、やりがいや面白さがあります。仕事の面白さを知ることができれば、結果的に良いケアができ、長く続けていくことができるのではないでしょうか。

 僕自身は、介護の仕事を3か月でも続けられてたなら、すでに介護の仕事に向いているのではないか、とも思っています。

文/たんたん(深井竜次)さん

たんたん(深井竜次)さん

島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』(https://www.tantandaisuki.com/)を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。

●【体験談】50代未経験でも介護職に転職できる? 初めて介護の世界に飛び込んだ母の話

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この記事へのみんなのコメント

  • りりい

    老人病院の介護職です。国は看取りの基準を作るべきだと思います。寝たきりに酸素、点滴、流動食、と本人は苦しいばかりと思います。3から4日で便を出すのですが、その薬もかなり苦しいです。延命をしないという考えを公的に伝える書類などを国は、考えるべきだと思います。病院で寝たきりで生きるということがどんな事か、すべての人に知ってほしい。

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