介護施設は人材不足だが誰でも採用されるわけではない?「履歴書の書き方、面接の受け答え」採用側が見ているポイントとは【社会福祉士解説】
慢性的な人手不足が叫ばれる介護業界だが、「応募すれば誰でもすんなり採用されるわけではない事情もありそうです」と、社会福祉士の渋澤和世さんは語る。とあるグループホームの面接官が明かした、採用する側の本音とは?
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
人材不足の介護業界、採用側が考えていることとは?
厚生労働省の発表※によると、2022年度の介護職員数は約215万人。高齢者の増加とともに2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の確保が必要と試算されていますが、現時点ですでに深刻な介護職員不足となっています。
※参考/厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/001274765.pdf
人員を増やす必要があるのならば、求人に応募すれば誰でも採用されるのかといえば、そうではない事情もあるようです。
介護施設での働き方について、採用する側の事情についてリサーチしてみました。筆者の取材や筆者自身の経験に基づいているため、すべての人や法人に当てはまるものではありませんが、実例として参考にしていただけたら幸いです。
グループホームの施設長をしている60代の女性Aさんは、「募集しても応募が少ない、年中人材不足」といつも嘆いています。しかし、応募してくる人材はいても全員を採用するわけではないといいます。
書類や面接で何を基準に採用しているのか、話を聞いてみました。不採用となる人には「ある条件」があるといいます。それはどのようなものなのでしょうか?
*グループホーム(認知症対応共同生活介護)/認知症の高齢者が共同生活を送りながら必要なケアを受ける施設。
採用側の本音「不採用になる人」の特徴と傾向
施設長でありホームの採用も担当するAさんいわく、応募者の選考は20~30分の面接と書類で判断するといいます。一定の判断基準があり、採用を見送る傾向にある人は以下のような特徴があります。
【1】履歴書や職務経歴書
・履歴書や職務経歴書に空欄が多い、手書きの場合は字が雑に書かれている
【2】応募者の人となりや印象
・服装がヨレヨレ、髪がぼさぼさなど、身だしなみに清潔感がない
・時間を守らない、足を組むなどビジネスマナーに欠ける
・声が小さい、人の目を見ないなどおどおどしている
【3】面接での受け答え
・ハローワークに勧められたなど、志望動機に自分の意思が感じられない
・介護は誰にでもできる仕事だと見下している
・応募先の事業や募集内容をしっかり理解できていない
・マニュアル通りの受け伝えで自分の言葉がなく熱意が感じられない
・質問の内容からずれた答えをする
・前職を辞めた理由にネガティブな発言をする(残業時間、給料への不満、人間関係のトラブルなど)
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不採用になるにはこうした理由があるとはいえ、外見のみで判断することはなく、何か違和感があっても、なるべく総合的に判断することは留意しているとのこと。
もしも介護業界で働きたいと思った場合、こうしたポイントを踏まえて応募、面接に挑むのがいいでしょう。
長年採用を担当しているAさんは、未経験者を採用する場合、書類選考の段階でさまざまな条件を考慮して不採用となる場合もあるという。しかし、介護や育児、家事経験の豊富なシニア世代は、未経験でも即戦力になる場合も多いという。
どんなに人材不足の業界だとしても、不採用となってしまうには理由があります。そして働きたいと思っても「年齢や性別、経験の壁」があることも事実。介護業界の人材不足問題を解決するには、さまざまな課題がありそうです。