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【体験談】50代未経験でも介護職に転職できる? 初めて介護の世界に飛び込んだ母の話

 50代で介護の仕事にチャレンジしたいけど、今さら転職できる? 仕事は覚えられる?未経験でも大丈夫だろうか…。50代で初めて介護職に転職したという介護士ブロガーのたんたんさんこと深井竜次さんのお母さんの実体験を紹介。50代こそ挑戦すべき理由とは…。

 介護士ブロガーのたんたん(深井竜次)と申します。僕は5年間介護施設で介護士として経験したことを元に「介護士さんの幸せな働き方の実現」を目標としてブログを運営しています。

 これまで介護士として経験した体験と、そこから学んだことを記事にしてきました。

→認知症の徘徊に隠された理由|墓参りに行きたがるお婆さん

→初めての看取り|100歳のお婆さんの看取りケア

→20代介護士の僕が激しく後悔している知人の介護|出雲のお爺さんの話

 今回は「50代・未経験で介護業界への転職」をテーマに選びました。

 50代で未経験の介護業界に転職するのは非常に不安があると思います。そんな不安を少しでもこの記事を読んで軽くできたらいいと思います。

 実際に僕の継母が50代で介護職に就いているので、その実体験を合わせて解説していきます。

未経験の50代で介護職に転職して活躍できる?

 結論を先に伝えますが、未経験の50代でも介護職に転職をして職場の戦力として活躍することは充分可能です。

 実際に50代から介護職を始めて5年後に管理職になった方もいますし、定年を迎えた人が第二の人生として未経験で介護士のパートを始めた人もいます。

 50代の僕の母は病院で看護助手をしたり飲食店でパートをしたり様々な仕事を経験してきました。友人の紹介で未経験の介護職に転職をして3年目になります。最近はコロナウイルスの対応で忙しくて大変とは口で言いながらも、楽しんで働いている様子です。

 母は経験年数を重ねるごとに昇給して給料が増え、施設では主戦力として期待されているという話を施設の関係者に聞きました。

 母の実例のように、介護業界は未経験でも、年齢を重ねた人でも受け入れる懐の広さがありますので、年齢や経験関係なく「介護士になりたい」と思ったら施設の面接を受けることを強くおすすめします。

 向上心を持って日々学び続けられる人は未経験でも施設の中心人物として活躍することが充分可能なのが介護の世界なのです。

 逆に若くても、向上心がない人材は信頼を得ることはできずに仕事が減っていくこともあります。

面接で伝えるべきこと、転職成功の秘訣は…

 転職活動での面接では、やる気があることをしっかり伝えることが大事。介護業界はやる気のある人は年齢関係なく歓迎してくれるはずです。

 中には年齢を理由に断る介護施設もあるかもしれませんが、そのような施設とは「縁がなかった」と諦めて、自分を必要としてくれる施設を探すようにしましょう。

「未経験で50代だから」と思い悩まずに「50代だけどその分多くの人生経験をしているからそれを介護業界に還元したい」とポジティブに捉えて転職活動することが転職成功の秘訣だと思います。

介護職では50代、年齢を重ねることは大きな強みに

 介護職で働くに当たって、年齢を重ねているというのは大きな強みになります。

 具体的には以下のような強みがあります。

・自分の親と利用者様の年齢が近い(家族様と同年代なことが多い)

・介護職は今までの経験をそのまま現場で反映しやすい

 この2つの強みを以下の項目で掘り下げていきたいと思います。

1.利用者様と親の年齢が近い(ご家族と同年代のことが多い)

 利用者様からすると50代の介護職員は自分の子供と同世代であることが多いです。

 つまり、自分の親世代が「どんな音楽が好きなのか?」「どのような社会の背景があるのか?(高度成長期など)」などの情報を自分が幼い時に親を通して知っていることが、利用者やご家族とコミュニケーションを取る上で大きな武器になります。

 利用者様側にしても「自分たちのことをよく知っている人に介護をして欲しい」という思いもあります。

 もし親の介護を経験している人ならご家族の悩みに経験者の立場でアドバイスや共感することもできるでしょう。

 利用者様やその家族とのコミュニケーションにおいて年齢を重ねていることは大きな有利なポイントになります。

2.介護職は今までの経験を現場でいかしやすい

 年齢を重ねた人は、今までの経験をそのまま介護職の現場でいかせることが多いと感じます。具体的に以下の通りです。

・過去の仕事経験から利用者様との会話が膨らみ信頼を得やすい

・子育ての経験があれば利用者様と子供や孫の会話がしやすい

・事務系の仕事をしていた人は、備品の管理を任される可能性がある

・営業の経験があればケアマネジャーの仕事に向いている可能性もある

・保育士をしていた人はレクリエーションや行事の起案に強い

 僕が介護士として働いてきて思うのは、介護職は「人の生活そのものをデザインする」総合的な仕事だということ。

 50代、これまでの仕事や暮らしの経験は、介護施設でのレクリエーションやコミュニケーションをはじめ、事務仕事でも反映させることができます。

50代未経験介護の仕事は覚えられない不安も

 介護職は3大介助(入浴、排泄、食事)がメインだと思われがちですが、認知症患者の増加もありコミュニケーションやレクリエーションなどが重視される傾向があります。

 これらの要素は勉強してある程度は学ぶこともできるのですが、今までの人生経験で身につくものです。

 3大介助は働きながら徐々に身につけていけばいいと僕は考えています。

→排泄ケアに積極的に取り組んでいる特別養護老人ホームと介護付有料老人ホーム【まとめ】

50代介護職への転職で必要な2つのこと

 50代で介護職に転職することはたくさんのメリットがありますが、注意しなければならないこともあります。

・年下の上司の意見を素直に聞くこと

 1つめは、「年齢が上だから偉い」と勘違いしてはいけないということです。
確かに年齢を重ねて多くの人生経験をしているのは事実ですが、新人として介護現場に入ると、ほとんどの先輩が年下ということになります。
つまり新人として若い上司の指示に従うことが求められるのです。

・ある程度の体力が必要

 2つめは、ある程度の体力が必要だということ。介護職の仕事は体力仕事もあるので、転職後を見据えてある程度の体づくりをしておいた方が後々働きやすくなると思います。

 家で軽い筋トレをしたり散歩やジョギングで体を動かす習慣をつけておくといいでしょう。体力面に不安がなくなると仕事での心身的負担も軽くなります。

→50歳からの筋トレ入門|厳選!動ける体になるシニア向けトレーニングジム

→筋トレとあるものを組み合わせると「筋肉を作るスイッチが入りっぱなしになる」!?

50代で介護職に転職した男性のケース

 50代の男性と女性の転職については大きな違いはないのですが、介護施設は女性の利用者が多い傾向があり、介護士の仕事は女性のほうが現場に溶け込みやすいかもしれません。

 前述のように年上の上司の意見を素直に聞けるかどうか、これは男性のほう壁があるかもしれません。

 中途採用で入社した50代の人が自分より年下の上司を見下して指示を聞かなかったり、「最近の若い人は…」と言ってマウンティングをしたり…。僕が働いていた介護施設にもそんな人がいました。

 僕自身、未経験で転職してきた50代の男性スタッフの教育担当になったことがあるのですが、「私の若い頃は…」が口ぐせのようで、困ったこともありました。

 年下の上司とはいえ、介護技術も現場経験も豊富なので、素直に従うことが大切だと考えます。過去の仕事では実績があるかもしれませんが、未経験の介護現場では、心機一転、一から学ぶ姿勢が大事だと僕は考えます。

 介護現場では年下の上司とうまくやっていけるのか、スタッフどうしの人間関係が良好だと良い仕事につながり、スキルや知識も身についていくと考えます。

50代未経験で介護職への転職【まとめ】

 介護士の仕事をするのに50代という年齢はそこまで関係はないと僕は考えます。やる気があれば施設も同僚も認めて受け入れてくれますし、頑張り次第では役職につくことも充分可能です。実際にそういう50代もいました。

 介護業界は慢性的な人手不足なので、年齢に関係なく未経験でもやる気のある人材を施設側も求めているはずです。

 50代になって新しい業界でチャレンジすることは非常に素晴らしいことです。

 最後に、僕の母が語った介護の仕事についての言葉を紹介します。

「今までの仕事や生活では味わえなかった多くの刺激があって、多くの人に感謝されるやりがいのある仕事ですよ。

 実力があれば出世のチャンスもありますし、チームで利用者さんの生活を一緒に作っているという実感もあって、介護士を始めて本当に良かったです」

文/たんたん(深井竜次)さん

たんたん(深井竜次)さん

島根県在住。保育士から介護士へ転職し、介護士として働いた経験を持つ。主に夜勤を中心に介護施設で働きながら介護士の働き方について綴ったブログ『介護士働き方コム』(https://www.tantandaisuki.com/)を運営。著書『月収15万円だった現役介護士の僕が月収100万円になった幸せな働き方』(KADOKAWA)が話題に。

●医師に嫌われる患者の特徴6選|診察時に嫌われる服は?メイクは?

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この記事へのみんなのコメント

  • ぬくぽか

    著者の深井さんは、お母様が亡くなったことを公言されていますが…。 どういうことでしょうか?

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