血糖値上昇を抑え、疲れない体をつくる【8つの食事術】「たんぱく質豊富な“鶏むね肉”は疲労や老化を避ける“ミラクルフード」
うだるような暑さが続く夏。食欲がない、体がだるいなど、疲れが溜まりやすく、睡眠不足にもなりがちだが、それは「糖質」の摂り方に原因があるという。「疲れない体」をつくる最高の食事術をベストセラー医師が指南する。
教えてくれた人
牧田善二さん/AGE牧田クリニック院長。最新刊に『疲れない体をつくる最高の食事術』の著書がある。
「丼物」より「定食」? 8つの食事術で「疲れない体」を作ろう!
病気でもないのに体がだるい。睡眠は取っているのに日中に眠気がひどい……そんな慢性的な疲労の原因は、食事にあるかもしれない。
「すべて疲労を蓄積させている」と指摘するのは、『疲れない体をつくる最高の食事術』(小社刊)の著書があるAGE牧田クリニック院長の牧田善二医師だ。糖尿病などの生活習慣病やアンチエイジングを専門に20万人以上の患者を診てきた牧田医師は、疲労の原因は食事にあると断言する。
「疲労の対策として良かれと思って摂っている食事が、実は『糖質疲労』を招く原因となっている可能性があります。年を重ねても若い頃のように疲れ知らずの日々を送るには、正しい食事術を身に付ける必要があります」(以下「 」内は牧田医師)
糖質がもたらす不健康を回避するために、毎日の食事で気をつけるべきことは何か。疲れない体を作る8つの食事術を紹介する。
<1>「おかずファースト」で食べる
糖質の摂り過ぎで疲労を招かないために、牧田医師は「食べる順番」の注意点を指摘する。
「最初に白米や玄米などのご飯を食べると、食中・食後の血糖値が上昇しやすくなります。そうではなく、最初におかずの肉や魚を食べることで胃の中で分解作業が進み、その後に食べる米飯の消化吸収が遅くなります。そうすれば血糖値の上昇が緩やかになり、疲労の抑制につながります」
<2>「丼物」ではなく「定食」を選ぶ
血糖値の急激な上昇を抑えるには、食事のメニュー選びも鍵を握る。
「早めにかきこんでしまう食事は血糖値を急上昇させやすい。丼ものを避けて定食にすれば、おかずや汁物もバランスよく摂ることができるため、血糖値の上昇幅を抑えやすくなります。早食いは満腹感が追い付かず、つい食べ過ぎてしまいますが、よく噛んでゆっくり食べると適量で満腹感が得られて、脳の血流もよくなります。一口20回の咀嚼、30分ほどかけて食べるのを目安としてください」
<3>白米よりチャーハン
かきこみがちな食事でも、メニューの選び方次第では糖質の吸収を抑え、血糖値の上昇を緩やかにできるという。
「糖質はたんぱく質や脂質、食物繊維などと一緒に食べると消化吸収が遅くなり、同量の炭水化物を摂取しても血糖値の上昇が緩やかになります。米飯は五目チャーハンなどにして食べたほうがよい。麺類も同様に、ざるそばより山菜そば、ただのラーメンよりチャーシューメンが望ましい。パンを食べるならバターをたっぷり塗ったりオリーブオイルに浸したりするほうがよいでしょう」
<4>肉や魚は「脂身多め」でOK
脂質が太る原因となる―そう考えている人も多いが、牧田医師は「糖質に比べれば脂質を摂るほうがよい」と指摘する。
「脂質を摂り過ぎるともちろん太りますが、脂質が分解されてできる脂肪酸は身体にとって重要な成分なので、体内でどんどん使われます。脂の多い肉や魚を積極的に食べてもOKです」
肉や魚を食べる際は、その調理法にも気をつけたい。
「万病のもととなる老化促進物質のAGEは糖質過多だけでなく、肉や魚を加熱調理することでも増加します。AGE量は火力の強さと比例するので、生で食べられる魚は刺身で食すのがベスト。生食できない肉や魚は焼く、揚げるより、蒸したり茹でたりするのがベターな食べ方です。牛肉や豚肉はグリルよりしゃぶしゃぶ、鶏肉は唐揚げより蒸し鶏のほうがよいでしょう」
<5>最強のミラクルフードは「鶏むね肉」
疲労や老化を避ける“ミラクルフード”として牧田医師が注目するのが「鶏むね肉」だ。脂肪が少なくたんぱく質が豊富なほか、様々な効果が期待できるという。
「鳥が長時間、飛び続けられるのは羽ばたく際に使う胸の筋肉に、強い疲労回復作用を持つイミダゾールジペプチドが含まれるからです。イミダゾールジペプチドの働きで疲れにくくなる疲労回復効果があるだけでなく、記憶力の低下が抑制されたとの報告もあります。調理の際に出るスープにはイミダゾールジペプチドが溶け出ているので捨てずに飲んでください」
<6>ビールよりワイン
毎日の晩酌を楽しむ牧田医師は「飲酒は血糖値の観点から見ると、むしろ健康の味方になる」と指摘する。
「適度な晩酌をすることで早食いを控えることにつながり、糖質過多を抑えられます。海外の研究では、ワインとジンを飲むと食後血糖値がほとんど上昇せず、インスリンの分泌も抑えられました。ビールや紹興酒、甘い梅酒などは糖質が多いですが、ワインのほかにも、ジンと同じく蒸留酒であるウイスキーや焼酎なども同様に食後血糖値やインスリン分泌量を抑えられると考えられます」
<7>長寿世界一が好んだチョコレート
牧田医師が指摘する意外な長寿食がチョコレートだ。甘いものには糖質が多く、控えるべきかと思いきや、122歳まで生きた世界一の長寿者とされるフランス人の女性は、毎日ショコラ(チョコレートドリンク)を飲んでいたといい、世界2位の日本人女性、3位の米国人女性もチョコレートが大好きだったという。
「チョコレートに含まれるカカオポリフェノールは活性酸素を抑えて生活習慣病予防になるとの研究があり、近年は疲労回復や脳血流量の増加、血圧低下など、様々な健康促進効果が報告されています。中でも糖質の少ないカカオ成分80%以上のチョコレートは効果抜群とされ、私も毎日のおやつにしています」
<8>エナジードリンクは「避けるべき」
一方、疲労回復のつもりで口にしているものが逆効果であるケースもある。その代表例がエナジードリンクや栄養ドリンクだ。牧田医師は「避けるべき飲料」だと断言する。
「同じ糖質でも固形物は咀嚼や消化に時間がかかるため血糖値の上昇が穏やかですが、液体の糖質は消化の手間がかからないので即座に血糖値が上がり、大量のインスリンが分泌され糖質疲労を増進します。他にも『〇種類の野菜が摂れる』などと謳われている野菜ジュースや、果汁100%のフルーツジュース、清涼飲料水も大量の果糖が含まれているので避けたほうがよい」
最高の食事術を実践して、疲れ知らずの毎日を取り戻そう。
※週刊ポスト2024年8月2日号
●“ひと口目”を変えて「糖質」の摂り過ぎを防ぐ|納豆はご飯より先に食べるべし