兄がボケました~認知症と介護と老後と「第61回 これからの生き方」
長年一緒に暮らし、サポートしてきた兄が施設に入所したいま、一人で暮らすのは気楽・・・。と思ってきましたが、そうとばかりは言えないらしいとライターのツガエマナミコさん。自らの年の重ね方について、思うところがあるようです。
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「人づきあい」をちゃんとするために
わたくしの「調味料が余りがちだ」というぼやきに「うちもそうです」と同感していただいたり、「カセットコンロの古いガスボンベの処理に悩んでいる」と言えば「うちではこうしました」と教えてくださるコメントに感激しております。読んでくださる方がまだいらっしゃることの喜びとともに、“なんて優しい方々だろう”とウルッとしてしまいました。
「在宅介護のドタバタやイライラ」や「認知症患者と暮らす家族の実情」を綴っていた頃は、どこかでどなたかの励ましになっているかもしれないという自負がございましたが、兄が施設に入所したあとのツガエは、言うなればただの一般人でございます。先日は、たまたま兄の救急搬送ニュースがございましたが、それ以外は、つたない初老の独り暮らしの日常をお伝えしているだけ。にもかかわらず、「ずっと読んでいます」のコメントにはグッときてしまいました。
為になることはひとつも書けませんが、なとみ先生の秀逸なイラストとともに、お暇つぶしとしてこれからもたまに文を読んでいただければと願っております。
暇つぶしといっても、つまらない文は読む気がしないものでございます。
つまる、つまらないは読むときの気分や置かれている状況で変わってくるものだと思うのですが、総じて言えるのは「幸せな人の幸せなエピソード」よりも「誰にも知られたくないこと」の方が面白いということでございます。
ツガエにその面白いことが書けるのか?と問われますと、やはり誰にも知られたくないことは書けないので、結果として面白くないことしか書けないことになってしまいます。
では、こんなお話はどうでしょう。
わたくし、ツガエマナミコ62歳(もうすぐ63歳)は、一人暮らしでございます。
一人が苦ではなく、むしろ好きだと自負しております。人と暮らすのは、家族であってもあれこれ気を遣いますし、逆に気を使われたり、心配されたりすることも億劫でございます。
また、友人とワイワイするのは好きですけれど、家に頻繁に人を呼ぶほど好きではなく、ホームパーティーを年に何度も開く方々の社交性には異次元の違いを感じます。
つくづく自分は一人が好きで、一人でつつましやかに暮らせる強いタイプの人間なのだと、むしろ誇らしく思っておりました。
でも、とある本にこんなことが書いてあったのです。
「“一人で楽しむ”という選択肢を続けていくと、人と一緒にいるための”筋肉“は着実に衰えていきます」(「自己決定の落とし穴」筑摩書房)と。
ハッと致しました。肉体的な筋肉の衰えは常に気にしているのに、“その筋肉”を意識したことはございませんでした。そして、人と会うことが億劫だったり、新しい人間関係を作るのはもういいやと思ってみたり、いわれてみれば身に覚えのある「一人好き」は、まさに“筋肉の衰え”だったのだと瞬時に自覚できたのでございます。
わたくしの友人に、恐ろしく外向きなマインドで生きている人がおります。以前にここでも書きましたが、デフリンピック東京大会でボランティアをしてちゃっかりテレビに映った友人です。先日もLINEで「こんな人たちとお友達になりました~」とビールを作っているブリュワリーの姉妹とのスリーショットを送ってきました。会うたびに新しいことに首を突っ込んで、出会った人たちとすぐに打ち解けてしまう社交性のお化け。
人懐こい笑顔と度胸の良さで、知らない人の中にグイグイ入っていくスタイルは高校時代とまったく変わらず、例の筋肉は衰えるどころか、むしろパワーアップしているのだと感じました。
これまで、彼女の旺盛なバイタリティに「なんでそこまでやるの?」と半ばあきれていたわたくしは、己こそ反省しなければいけないと考えを改めました。
所詮、一人では生きていけない世の中でございます。人にご迷惑をかけずして老後の生活は成り立ちません。人と一緒にいるための筋肉はなくしてはいけないのでございました。
「一人の方が楽」と考えがちなわたくしは、「このままでは良くない」と気付きました。これからは人づきあいの筋トレを意識してなるべく人と関わっていこうと存じます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ
