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兄がボケました~認知症と介護と老後と「第61回 これからの生き方」

 長年一緒に暮らし、サポートしてきた兄が施設に入所したいま、一人で暮らすのは気楽・・・。と思ってきましたが、そうとばかりは言えないらしいとライターのツガエマナミコさん。自らの年の重ね方について、思うところがあるようです。

 * * *

「人づきあい」をちゃんとするために

 わたくしの「調味料が余りがちだ」というぼやきに「うちもそうです」と同感していただいたり、「カセットコンロの古いガスボンベの処理に悩んでいる」と言えば「うちではこうしました」と教えてくださるコメントに感激しております。読んでくださる方がまだいらっしゃることの喜びとともに、“なんて優しい方々だろう”とウルッとしてしまいました。

「在宅介護のドタバタやイライラ」や「認知症患者と暮らす家族の実情」を綴っていた頃は、どこかでどなたかの励ましになっているかもしれないという自負がございましたが、兄が施設に入所したあとのツガエは、言うなればただの一般人でございます。先日は、たまたま兄の救急搬送ニュースがございましたが、それ以外は、つたない初老の独り暮らしの日常をお伝えしているだけ。にもかかわらず、「ずっと読んでいます」のコメントにはグッときてしまいました。

 為になることはひとつも書けませんが、なとみ先生の秀逸なイラストとともに、お暇つぶしとしてこれからもたまに文を読んでいただければと願っております。

 暇つぶしといっても、つまらない文は読む気がしないものでございます。

 つまる、つまらないは読むときの気分や置かれている状況で変わってくるものだと思うのですが、総じて言えるのは「幸せな人の幸せなエピソード」よりも「誰にも知られたくないこと」の方が面白いということでございます。
ツガエにその面白いことが書けるのか?と問われますと、やはり誰にも知られたくないことは書けないので、結果として面白くないことしか書けないことになってしまいます。

 では、こんなお話はどうでしょう。

 わたくし、ツガエマナミコ62歳(もうすぐ63歳)は、一人暮らしでございます。

 一人が苦ではなく、むしろ好きだと自負しております。人と暮らすのは、家族であってもあれこれ気を遣いますし、逆に気を使われたり、心配されたりすることも億劫でございます。

 また、友人とワイワイするのは好きですけれど、家に頻繁に人を呼ぶほど好きではなく、ホームパーティーを年に何度も開く方々の社交性には異次元の違いを感じます。

 つくづく自分は一人が好きで、一人でつつましやかに暮らせる強いタイプの人間なのだと、むしろ誇らしく思っておりました。

 でも、とある本にこんなことが書いてあったのです。

「“一人で楽しむ”という選択肢を続けていくと、人と一緒にいるための”筋肉“は着実に衰えていきます」(「自己決定の落とし穴」筑摩書房)と。

 ハッと致しました。肉体的な筋肉の衰えは常に気にしているのに、“その筋肉”を意識したことはございませんでした。そして、人と会うことが億劫だったり、新しい人間関係を作るのはもういいやと思ってみたり、いわれてみれば身に覚えのある「一人好き」は、まさに“筋肉の衰え”だったのだと瞬時に自覚できたのでございます。

 わたくしの友人に、恐ろしく外向きなマインドで生きている人がおります。以前にここでも書きましたが、デフリンピック東京大会でボランティアをしてちゃっかりテレビに映った友人です。先日もLINEで「こんな人たちとお友達になりました~」とビールを作っているブリュワリーの姉妹とのスリーショットを送ってきました。会うたびに新しいことに首を突っ込んで、出会った人たちとすぐに打ち解けてしまう社交性のお化け。

 人懐こい笑顔と度胸の良さで、知らない人の中にグイグイ入っていくスタイルは高校時代とまったく変わらず、例の筋肉は衰えるどころか、むしろパワーアップしているのだと感じました。

 これまで、彼女の旺盛なバイタリティに「なんでそこまでやるの?」と半ばあきれていたわたくしは、己こそ反省しなければいけないと考えを改めました。

 所詮、一人では生きていけない世の中でございます。人にご迷惑をかけずして老後の生活は成り立ちません。人と一緒にいるための筋肉はなくしてはいけないのでございました。

「一人の方が楽」と考えがちなわたくしは、「このままでは良くない」と気付きました。これからは人づきあいの筋トレを意識してなるべく人と関わっていこうと存じます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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この記事へのみんなのコメント

  • そらとぶうさぎ

    昨年夫が若年性認知症と診断され、母の病状もよくなく(その後9月に亡くなってしまいました)戸惑い、何か情報をと思い焦って色々調べていくうちの中で、ツガエさんの連載に行き当たりました。お兄様への寄り添い方、時にモーレツに怒りが湧いてくる、鬱陶しいなど今の私の気持ちを吐き出してくれているかのような内容に出会い、そうそれよ、この気持ちなのよ!と手を叩かずにはおれませんでした。ツガエさんとお兄様の年齢はおそらく我が夫婦と同年齢、、ツガエさんがなんで私がこんな事を…と思うのも兄妹、夫婦の違いがあれどすごくよくわかりました。今はまだ夫婦ともなんとか働いておりますが、この先いつ職場に夫の事を打ち明け、仕事を辞める時期をどうしようかとお金の事情も絡めつつ思い悩んでおります。。まだ夫はどうにか私のフォローで仕事はしておりますが…危うい場面は多々あります。泣 家族もまだ私が夫の世話できるでしょみたいな感覚でして、1人で思い悩んで辛くなり、眠れぬ夜を過ごし明け方まで…などとなる時も多々あり…ツガエさんには特養に入られたお兄様の状況などご自身の思い、考え等これからも発信していってくださいませ。私はこの先訪れるであろう、オシモの世話、どこに何を聞けばいいのか、介護認定、ケアマネ、特養の事など参考にさせていただき、この人生の荒波を乗りこなしていけるように頑張ります。ツガエさんの時に面白く、シュールな連載を楽しみにしつつ私も健康、人づきあいの筋トレを意識しながら日々暮らしてまいります。ありがとうございます。

  • みみ

    わが身を振り返る内容です。気づかぬうちに、すっかり人付き合いの筋トレ衰えています。 人並みの社交性はあったものの、中年過ぎると、若い時みたいに、一緒に楽しもうよ!っていうより、なにかとひとの生活を詮索する人が増えた気がします。 年とともに脳の前頭葉も衰えてくるからか、相手の気もちも考えず、ズケズケと自分が聞きたいままに質問してくる人が多くなり、人付き合いがニガテになってしまいました。よそのお金事情、家族構成、家族の介護や病気が気になるようで、楽しい会話というより、もはや国勢調査みたいです… つがえさまのご友人のように、視野が広がる人付き合いはいいなと思いつつ、また詮索やウワサ好きな人に会いそうでつい萎縮してしまいます。 ところで、お兄さまが、その後ご無事に過ごされていらっしゃって安心しました。お大事になさってくださいね。お兄さまの介護時の連載からの読者ですが、介護を離れられても変わらず、連載を楽しみに読んでいます。いつもありがとうございます。

  • ゆーびん

    お兄様と一緒に住み少しづつ症状が進んでいく‥というあたりから読ませてもらっています。 近い家族が軽度認知障害と言われ、新薬による治療も進めてきました。 不安ということも当然ですが、このお話を読ませてもらうことで 励まされたり 涙したり いろんな思いや感情をここでだけで表出させてもらっています。まだ周りには伝える勇気はないのですがこれからも続けて読ませてもらいながら力をつけていきたいと思っています。

  • せんだみ

    初めてコメントさせていただきます! 毎週かかさず読ませていただいていましたが、お兄様の様子などを今までわずかでも必ず書いてあったのが今回ついに無くて、おお!と思ってしまいました。 その一方で、イラストの 「ワイン農家さんのお手伝いに山梨行って来た~」 「なんで?;」 「病気の男の子の支援をする会があって~」 「まめだね~;」 「近所のカフェがオープンしたから手伝ってるんだけど~」 「よーやるわ;;」 の内容が気になって気になって仕方ありません笑 できれば詳しく。。。笑笑

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