91才の料理研究家・小林まさるさんが挑んだ「血糖値を下げる1か月生活」献立レシピ本の誕生秘話
91才の料理研究家、小林まさるさんは糖尿病予備軍で血糖値が高いことが悩み。そこで嫁で人気料理研究家の小林まさみさんが一念発起。夫・のりさんも巻き込んで小林家一丸となって「血糖値を下げる」生活にチャレンジした。その記録を1か月の献立とともにまとめた著書が話題を呼んでいる。はたして血糖値は下がったのか!?
実録「血糖値を下げる1か月生活」
「お義父(まさる)さんは昔からコーヒーにはお砂糖をドバドバ入れるし、ラーメンとか脂っこいものも好きで。血糖値も血圧も高くて、このままだと糖尿病になりますよとお医者さんから言われていたんです。
そんな義父を見ていた女性セブンのスタッフのかたが、『まさるさんと一緒に血糖値を下げる食事の特集をやりましょう』と、企画が持ち上がったのが2016年のことでした」と、料理研究家の小林まさみさん。
当時まさるさんは82才、血糖値の問題とは長い付き合いだ。時を経て、まさみさんの知恵と工夫が結晶した新著『血糖値を下げる1か月献立』(Gakken)が完成。長年の課題だった、まさるさんの血糖値の悩みに真っ正面から取り組んだレシピ本は、発売後たちまち重版となり話題となっている。
本書に登場するのは、91才で現役の料理研究家としても活躍する小林まさるさん。そして、まさるさんの長男であり、まさみさんの夫・のりさん(54才)も参戦し、小林家総出で「血糖値を下げる1か月生活」に挑んだ――。
甘いものが大好き、食べることが大好きなまさるさんは、糖尿病予備軍。のりさんは肥満気味で、家系的にも糖尿病のリスクが高め。そして2人とも食欲旺盛でラーメン・ライスが大好き。
そんな家族を心配するまさみさんが、専門家の指導のもと、血糖値を下げる工夫がたっぷり詰まった食べ応え満点の献立を考案。本書冒頭では、1か月間実践した様子がコミックで描かれている。
初めはお腹が空くとイライラしていた2人だったが、甘い物を我慢しておやつをナッツなど低糖質なものに置き換えたり、器やスプーンを小さなものに変えて食事の満足度をアップさせたり、さまざまな工夫を凝らしながら、血糖値を急激に上げない健康的な食べ方を学んでいく。
本書は、糖尿病に詳しい医学博士の田中明さん、管理栄養士の金丸絵里加さんが監修を務めており、レシピ本でありながら、血糖値の波をゆるやかにする食生活のコツをしっかりと学べるのも魅力のひとつだ。
低カロリー・低糖質、食物繊維量アップの献立
まさみさんが考案した1か月の献立は、すべて1食560kcal以下、塩分は4g以下、糖質は63g以下、食物繊維は6g以上と、血糖値が高めの人にとって理想的な食事になっている。
低カロリーで塩分控え目の献立では、「義父も夫も絶対に物足りないはず」と、まさみさんは知恵を絞る。やわらかく煮込んだジューシーな大根を豚もも薄切り肉でギュッと包んだ肉巻きステーキ、そのほか、お麩やしらたきなど低カロリーの食材でカサ増しをするなど、食べ応えをアップさせるコツが盛りだくさん。
著書からある日の献立を以下で紹介する。
ジューシーな大根に肉を巻いて食べ応えアップ!
表紙にも採用されている大根の肉巻きステーキは、見た目はまるでトンテキ!
献立(1人分)熱量446kcal、糖質46.0g、塩分2.8g、食物繊維9.4g
■大根の肉巻きステーキ
熱量160kcal/糖質8.0g/塩分1.4g/食物繊維2.4g
【材料】2人分
豚もも薄切り肉…6枚(120g)
大根…約12cm長さ▶皮をむく
小麦粉…小さじ1
サラダ油…小さじ1
A【水…大さじ5、トマトケチャップ…大さじ1と1/2、塩…小さじ1/3、カレー粉…小さじ1/2】
ベビーリーフ…30g
【作り方】
【1】大根は縦1.5cm厚さに切り、2枚用意する(正味250g)。
POINT/大根は一番太さのある中央部分をぜいたくに使って。
【2】鍋に大根と水3カップ (分量外)を入れ、ひと煮立ちさせる。ふたをして弱火で15分、すっと竹串が通るまでゆでる。取り出してざるの上などで冷ます(ゆで汁は鍋に入れたまま全量を取っておく)。
【3】豚肉3枚を広げて並べ大根を包み、茶こしで小麦粉を薄くまぶす。
POINT/豚肉は少しずつずらし重ねて3枚1組に。【2】で冷ました大根を中央にのせ、両端から包む。
【4】フライパンにサラダ油を強めの中火で熱する。【3】の巻き終わりを下に並べ、両面を2~3分こんがり焼く。火を止めて油をふき、混ぜたAを加えて再び強めの中火にかける。
【5】肉を返し、スプーンでたれをかけながら、とろっとするまで1分ほど煮絡める。皿に盛り、ベビーリーフを添える。
■もち麦ごはん (120g)
熱量156kcal/糖質33.1g/塩分0g/食物繊維2.2g
■大根のゆで汁スープ 黒こしょう風味
熱量39kcal/糖質2.2g/塩分1.0g/食物繊維2.0g
【材料】2人分
大根のゆで汁…全量(約2カップ)
スライスハム…2枚 (20g) ▶半分に切って細切り
えのきだけ…大1/2袋(100g)(石づきを切り、長さを半分に切る)
塩…小さじ1/4、粗挽き黒こしょう…少々
【作り方】
【1】ゆで汁(大根の肉巻きステーキの作り方【2】)にすべての材料を入れ、強めの中火で 煮立て、えのきだけに火を通す。
■枝豆、きゅうりのヨーグルトサラダ
熱量91kcal/糖質2.7g/塩分0.4g/食物繊維2.8g
【材料】2人分
きゅうり1/2本(50g)▶薄い小口切り
塩…少々
冷凍枝豆…150g(正味70g)▶流水解凍し、さやから出す
A【プレーンヨーグルト…大さじ2と1/2、オリーブ油…大さじ1/2、レモン汁…小さじ1/2、塩…少々、粗挽き黒こしょう…少々】
【作り方】
【1】ボウルにきゅうりを入れ、塩を入れて混ぜて10分おく。
【2】別のボウルにAを混ぜ、枝豆、水気を絞ったきゅうりを加えて和える。
POINT/時間があれば、冷蔵庫で冷やすとよりおいしい。
時短調理のポイントも満載
家族を想うまさみさんの愛情たっぷりの献立は、作る人にも優しい工夫が。
レンジでできるエビチリや揚げない油淋鶏など、ヘルシーかつ手軽に作れるものばかり。副菜や汁物も食物繊維たっぷりで冷蔵庫にある食材でパパッとできる。31日分の献立は、「マネするだけで無理なく続けられる」仕様になっている。
「3日目から結果が出始めた」という1か月チャレンジの結果、父子のお腹まわりは、ぽっこり→すっきりシルエットへ(詳しい血糖値や体重の変化については、本書でチェックして欲しい)。
医学監修を務めた医学博士の田中さんによると、
「血糖値は毎日の行動の変化ですぐに影響を受けます。日々の積み重ねが大事です」とのこと。まさに2人の努力は、血糖値の数値の変化に現れている。
おいしく続けることでシニア世代でもしっかりと結果を出せるということを、身をもって証明してくれた。いつまでも健康でいたい人、そして糖尿病や高血圧、血糖値が気になる人におすすめしたい小林家渾身の1冊だ。
【データ】
書名:血糖値を下げる1か月献立
販売:Gakken
著者:小林まさみ
価格:1595円
構成・文/岸綾香
●90代で活躍を続ける小林まさるさんの元気レシピ「疲れたときに食べているのは豚肉だよ」