血糖値対策は「ベジファースト」、フレイル対策は「たんぱく質」を。目的で変わる「食べる順番」の考え方
食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」は、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できる一方で、高齢者が同じ食習慣を続けると、たんぱく質不足によりフレイル(※)のリスクが高まることもあるという。大切なのは、体の状態に合わせて「野菜が先か」「肉が先か」を選ぶことだと話すのは、管理栄養士の野口知恵さん。健康寿命をのばすための「状態・目的別」食事法について、野口さんに話を聞いた。
※加齢などで心身の活力が低下し、「健康」と「要介護」の中間の状態になること。
教えてくれた人
野口知恵さん/管理栄養士、野菜ソムリエ上級プロ。「おいしい!」の感動を多くの人と感じることをモットーに、大手食品メーカーでの勤務経験を生かし、商品開発やレシピ開発、料理教室、講演、栄養指導などを行う。
シニア世代は「ベジファースト」より食事のバランスが大切
食事のとき、最初に野菜を食べるべきという考え方が近年、否定されつつある。
きっかけは2024年10月に厚生労働省が公表した『日本人の食事摂取基準』。
これは、健康に必要なエネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示すもので、5年ごとに改定している。
「2020年版には記載があった『食物繊維が豊富な野菜から食べ始めることで、食後の血糖値の上昇を抑えて血液中の糖の指標であるヘモグロビンA1c(エーワンシー)を低下させ、糖尿病の予防や管理に役立つ』という文章が2025年版では削除されました」
と話すのは、管理栄養士の野口知恵さんだ(「」内以下同)。
削除されたということは、ベジファーストに意味がなかったのか。
「ベジファーストは無意味ではありません。本来のベジファーストは血糖値コントロールのために有効なのですが、ダイエット効果があると拡大解釈されて広がったため削除されたのではと考えられます」
野菜に含まれる食物繊維には小腸の消化・吸収を抑える効果があるので、野菜から先に食べることで後から食べる炭水化物に含まれる糖分の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ。血糖値の上昇がゆっくりになるとインスリンを分泌するすい臓の負担も軽くなり、食後血糖値の最大値も下げられる。
これらは血糖値を安定させることが重要な糖尿病の人に効果的なので、ベジファーストは糖尿病やその予備軍になっている人に適した食事法であり、誰彼構わず野菜を先に食べるのがいいというわけではない。
では、血糖値が気になる人は何から食べたらいいのか。管理栄養士の野口さんに、「状態・目的別」の野口式メソッドを指南してもらった。
65才以上の4割がフレイル予備軍。たんぱく質で筋力アップを目指そう
「健康状態や目的に合わせて、食べる順番は柔軟に変えるべきです」
とは、野口さんだ。筋力低下が気になる人、貧血気味の人や骨粗しょう症の人、筋肉をつけたい人などはたんぱく質を先に食べることが重要だという。
「筋力低下や骨粗しょう症は60才以降に多く、65才以上の8.7%がフレイル、40.8%がフレイル予備軍というデータ(※)もあるほどです」(野口さん・以下同)
フレイルを放っておくと、要介護状態に進みやすい。特に女性はフレイルの割合が高いため、筋肉の材料となるたんぱく質を積極的に摂る必要がある。
「夕食から朝食までには10時間以上の絶食状態が続くため、筋肉の分解が進行しています。失った分の筋肉を合成するためにも、朝食では意識的にたんぱく質を摂取する必要があります」
※東京都健康長寿医療センター研究所が2020年に発表
たんぱく質も血糖値上昇の抑制に効果あり
たんぱく質を最初に摂っても、食後の血糖値上昇は抑制される。
血糖値の上昇を抑えることに加え、野菜を食べる習慣がない人、野菜を食べる量が少ない人は、ベジファーストが向いているという。
「先に野菜を食べると、インスリンの分泌準備をするインクレチンという物質が消化管から分泌されます。インクレチンが充分に分泌されるとインスリンがスムーズに分泌されて血糖値が上がりにくくなりますが、野菜を食べ始めてからインクレチンが分泌されるまでに10分ほどのタイムラグがあります。そのため、ベジファーストの効果を最大限に引き出すには、野菜を食べてから炭水化物を食べ始めるまでに10分程度あけるのが理想です」
野菜に含まれる食物繊維は、カルシウムや鉄分の吸収を阻害するため、貧血気味の人はカルシウムや鉄分を補給してから、野菜を食べた方がいい。
同じ献立でも状態・目的別に食べ順を変えよう!~洋食編~
<朝食>
●温野菜サラダ(ブロッコリー、にんじんなど) [ポイント]抗酸化成分が豊富
※朝は体温が低いので、体を温めるために野菜は蒸したりゆでたりすると◎。
●ツナのスクランブルエッグ [ポイント]たんぱく質が豊富
●全粒粉の食パンのチーズトースト [ポイント]食物繊維が豊富
●季節のフルーツ [ポイント]抗酸化成分が豊富
●ヨーグルト [効果]腸内環境を整える
【糖尿病&コレステロール値が高い人】
温野菜サラダ→スクランブルエッグ→チーズトースト→ヨーグルト→季節のフルーツの順。
【フレイルが気になる人】
スクランブルエッグ→温野菜サラダ→チーズトースト→ヨーグルト→季節のフルーツの順。
<昼食>
●野菜サラダ [ポイント]緑黄色野菜をチョイス!
●鮭ときのこのクリームパスタ [ポイント]抗酸化成分と食物繊維が豊富
●ミネストローネ [ポイント]抗酸化成分が豊富
【糖尿病&コレステロール値が高い人】
野菜サラダ→ミネストローネ→鮭ときのこのクリームパスタの順。
【フレイルが気になる人】
鮭ときのこのクリームパスタ→野菜サラダ→ミネストローネの順。
※きのこは、食物繊維が特に多いしいたけがおすすめ。
<夕食>
●野菜サラダ [ポイント]食物繊維が豊富
●豆腐ハンバーグ大根おろし添え [ポイント]たんぱく質と食物繊維が豊富
※豆腐ハンバーグは使用するひき肉の一部をたんぱく質が豊富な豆腐に置き換える。
●かぼちゃのポタージュ [ポイント]栄養価が総じて高い
●ご飯 [ポイント]軽く1杯が理想
【糖尿病&コレステロール値が高い人】
野菜サラダ→豆腐ハンバーグ大根おろし添え→かぼちゃのポタージュ→ご飯の順。
【フレイルが気になる人】
豆腐ハンバーグ大根おろし添え→かぼちゃのポタージュ→野菜サラダ→ご飯の順。
取材・文/土田由佳 イラスト/さややん。 写真/Photo AC
※女性セブン2026年2月5日号
https://josei7.com
●医師・鎌田實さんがすすめる「朝たん」習慣。朝食にたんぱく質を多く摂れば筋力アップ、フレイル予防にも
●《たんぱく質不足は要介護リスクに》「片足立ちで靴下をはけない人」は要注意!サルコペニアやフレイルの“危険性”を医師が解説
●60才からの理想の食べ方「まずは肉・魚・卵・大豆類」に! 「ベジファーストは40〜50代まで。年代で考え方を変えることが重要」と管理栄養士
