猫が母になつきません 第407話「ふくさよう」
「アカシジア(静座不能症):体や足がソワソワしたりイライラして、じっと座っていたり、横になっていたりできず、動きたくなる(*1)」そんな副作用がでるかもしれない薬があるんです。
母に処方された薬は数種類の《向精神薬》と《睡眠薬》。アカシジア(*1)のほかにもめまい、ふらつき、傾眠(意識障害)、運動失調(歩行困難、呂律がまわらない)など副作用がてんこもり。こうなるともう「副」作用ではなく、こういう症状を起こす薬なのだと思ったほうがいいのでは。私が見た《認知症医療》は常に矛盾に満ちていました。
*1:厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル アカシジア 平成22年3月」より https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j09.pdf
母は初診で処方された薬を飲んですぐにふらふらになっていました。
開示請求したカルテを見ると、この時のことが施設から病院に報告されています。
「処方初日(睡眠薬を)眠前内服で20時〜21時に内服すすめたが拒否。昨日夕食後(17時台)に内服すすめると他入居者も内服しており、すんなり内服された。しかし18時すぎより足取り悪くなり転倒リスクあり。」
施設から薬をへらしてもよいかという相談がされていました。
母に処方された睡眠薬は効き目が強いタイプで、「少量から投与を開始すること」という用法上の注意があるにもかかわらず、母にはいきなり高齢者への最大容量が処方されていました。薬を飲む習慣がなかった母は最初は拒否したものの、翌日は他の人たちが薬を飲んでいたのでなんとなく一緒に飲み、一時間も経たないうちにふらふらになったのです。さすがに医師からは服用を減量してもよいという指示がでていました。この経緯は私には報告されませんでした。
初診の翌週に私はまた母と一緒に認知症外来に行きました。この日は本来なら初診で処方された薬が適当だったかどうか検討するべき日でしたが、私は前述の経緯も知らず、母もぼーっとしてはいるもののこの日は機嫌がよかったので特に問題なしとされ、薬は同じように処方されました。睡眠薬の量も元のまま。いや、なんの説明もなかったので同じと思っていましたが、実際には薬は増やされていました。この日のカルテには「不穏時希望」との記載があり、不穏時に服用する「頓服(とんぷく)」と言われる薬が追加されていました。「飲み始めの強い立ちくらみに十分注意」という向精神薬が。私は希望していないので事前に施設が希望したものなのでしょう。さらに初診で処方されていた向精神薬のひとつもひそかに倍量に増やされていました。
→nurarinさんが「カルテ開示」を請求したエピソードを読む
12年前の私へ「《医療》を恐れよ」
編集部註:上記厚労省の資料「重篤副作用疾患別対応マニュアル アカシジア 平成22年3月」5pに記載されている通り、副作用は、必ず起こるものではありません。患者さんご自身、またはご家族がこのような副作用があることを知り、症状に気づいた場合は、自己判断で服用を中止したり放置したりせずに早急に医師又は薬剤師に連絡してください。自己判断での服用中止によって、さらなる重篤な症状が出現することに注意してください。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。