食事の支度が面倒に…そんな高齢者に「手抜きでOK」なレシピを紹介!慢性膵炎の母をサポートする栄養士が提案|NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~【番外編】
慢性膵炎を抱える母と暮らす漫画家のうえだのぶさん。栄養士の資格をいかし、母の膵臓に優しい脂質控えめの食事「NOオイル」レシピを日々研究している。そんなのぶさんが、地元・山口県で開催された講演会に母娘で登壇。講演会の様子とともに、高齢者の毎日の食生活に役立つポイントをレポートいただきました!
執筆/うえだのぶさん
栄養士の資格をもつ漫画家・イラストレーター。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。コミックエッセイ『NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~』連載中。インスタ:https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
膵炎の母と娘のコミックエッセイ「NO老い」の意味
一般財団法人 山口県老人クラブ連合会様主催「令和5年度健康づくり・介護予防セミナー」にて、老人クラブ会員の皆様を対象に講演させていただきました。母には調理のアシスタントとして参加してもらいました。
講演のタイトルは、ズバリ「NO老いるLIFE 〜美味しく楽しく健康長寿〜」。
現在、介護ポストセブンで連載中のコミックエッセイでは、数年前に突然原因不明の慢性膵炎を発症してしまった80代母とのふたり暮らしの日常(食生活や病気)の泣き笑いエピソードを描いています。
タイトルの「NO老いる」には、脂質制限の「NOオイル」と、健康長寿の「NO老いる」、両方の意味を込めました。
高齢の母の食事は、持病の慢性膵炎だけではなく「骨粗しょう症」や「糖尿病」そして最近特に重視されている「フレイル」など、色々なことを考えながら作らないといけません。栄養士のはしくれとして母のために献立を考え、日々料理をしています。
→NO老いるLIFE ~母と娘のほんわか口福日誌~ 第1回「母の膵臓が!救急搬送の夜」
今回セミナーの対象者が母と同じ高齢女性の皆さんと聞いて、我が家の料理や食べ方がお役に立つかも!と思い僭越ながら講演を引き受けさせていただきました。
当日は50名を超える会員のみなさまが集まり、皆さん熱心に話を聴かれていました。
私が何度か発した「食事の支度って面倒じゃないですか」という言葉に、ほぼ全員が「うんうん」と大きくうなずかれているのを見て、高齢者の皆さんにとって栄養バランス云々よりまず「食べること・作ること」が負担やストレスになっている現状を目の当たりにした気がしました。
講演会では、そんな人たちにも役立つ(であろう)、我が家の食事のポイントや手抜きでもヘルシーな料理を実演したので、以下でご紹介していきます。
高齢女性の脂質ってどのくらいがいいの?
わが家の食事は、母の膵臓に負担をかけないために基本「脂質控えめ」。これって、肥満や糖尿病予防などのポイントのひとつでもありますよね。
母は膵炎の治療中には「脂質1食5g」というハードな制限もしてきましたが、現在は脂質1食10g、多くても1日40gを目安に食べています。これは、75才以上の自立した活動ができる女性の目標量の範囲内です。
脂質量に加えて、毎日の食事で気を付けているのが、豆腐や肉、魚などの「たんぱく質」と「野菜」をしっかり摂ること。そして、我が家では「スキムミルク」も活用して乳製品をしっかり摂って骨粗しょう症の予防も心がけています。
それらを簡単に手抜きで食べているのが我が家の食事の特徴です。
私はどこに講演に行っても必ず「手抜きでいいんですよ」という話をします。
そこそこバランスが取れていればいい、食事が辛くなってはいけない、と思うんです。
実際の我が家の食事写真を披露するのも「こんなのでいいんだ」と安心してもらうことが目的です(母は「恥ずかしいからやめてくれ」と言いますが)
気楽に食べる→食べるのが楽しい→楽しく健康長寿。これこそが「NO老いる」な食生活だと思うんです。
高齢者におすすめ!手抜き副菜&デザートを調理実演
講演会の調理実演コーナーでは、我が家の定番メニューである、カルシウムと鉄が摂れる「大さじごま和え」と、カルシウムやたんぱく質が摂れる「牛乳パックゼリー」を披露しました。
どちらもあっという間に作れますが、こういうのって実際に見ないと「やってみよう」という気にならないんですよね。そんなわけであちこちで実演をしています。
ごま和えのデモでは、そのまま器になる愛用のすり鉢に、参加者の皆さんの注目が集まっていました。牛乳ゼリーは完成品のプルプル具合に会場で「わあ~~♪」と声があがりました。
のぶさん考案!手抜きでもおいしい&ヘルシーレシピ
講演会で大好評だったレシピをご紹介します。
パックのまま牛乳ゼリー(5人分)
<材料>
牛乳…500ml(紙パックのもの)
粉ゼラチン…5g
熱湯…50ml(80°c以上)
砂糖…大さじ1〜2(甘さはお好みで)
<作り方>
【1】熱湯に粉ゼラチンを入れしっかり溶かす
【2】【1】に砂糖を加えて溶かす
【3】牛乳パックから50ml別の容器に移す(これは使いません)
【4】残った牛乳を少量【2】に加えてゼラチン液を薄める(温度を下げるため)
【5】【4】を牛乳パックに入れ柄の長いスプーンなどでしっかり混ぜる
【6】牛乳パックの口を閉じ冷蔵庫で約1時間冷やす
*プルプルで柔らかいできあがりです。パックから出す時は大きめのスプーンですくってください。あればフルーツ缶などをトッピングするのがおすすめ!
1人分(約100g) 約66kcal カルシウム102mg たんぱく質3.9g
大さじで作るごま和え(4人分)
<材料>
ごま…大さじ3
砂糖…大さじ1(あればきび砂糖)
しょうゆ…大さじ1
小松菜(茹でたもの)…200g(約1束)
<作り方>
【1】ごまをすり、砂糖・醤油の順にすり鉢に入れ、よく混ぜる(すりごまでもOK)
【2】食べやすい大きさに切った小松菜を水気を絞って入れ、よく和える
*30分くらい置いて味をなじませてから食べるのがオススメです
1人分(約50g)65kcal カルシウム176mg 鉄2.2mg 食塩相当量0.7g
講演は2部構成で、健康運動指導士の札本路美子さんが関西発の平成のお手玉こと“おじゃみ”で楽しみながら体を動かしました。
ちなみに、レクリエーションとエクササイズを融合したものをレクササイズと呼ぶんだそう。おじゃみを投げてキャッチしたり、脇や足の間に挟んで使ったり、母も私も楽しんで参加させていただきました。
「NO老いる」講演会で伝えたかった「楽しく食べる」
講演終了後、参加者のかたが来られ「気が楽になりました~」「牛乳ゼリー作ります!」と声をかけてくださいました。食材や食べ方について熱心な質問もたくさん頂きました。
講演後のアンケートには、「だんだん食事の用意が嫌になってきていたので、楽しんでできる料理は本当に勉強になった」「朝ごはんにたんぱく質が足りていないので参考になった」「献立のイラストや写真が参考になった」と、コメントをたくさん頂いて、微力ながらお役に立ったのかなと胸をなでおろしました。
今回の講演では「楽しく食べる」ということを伝えたいと思っていました。
偶然「食&運動」どちらも「楽しく」がテーマになっていたので、全体を通して「楽しい」ということが大切だと参加者の皆さんに感じてもらえたのがとっても嬉しかったです。
膵炎を抱える母との日常を描いた連載が始まって早5か月、会場のみなさんにもしっかりちゃっかり宣伝してきたので、きっと読者数も増えたかな。ウキウキしながら家路につく私でした。
「晩ごはんは簡単に済ませようねー」
冷蔵庫に小分け保存しているもち麦ごはんをレンチン、焼いておいた鮭をレンチン、講演会の調理デモで作った「ごま和え」をたっぷり添えて、デザートはもちろん「牛乳ゼリー」。
「あれは簡単でえかった(良かった)よねえー!」と、まるで自分が講師をしてきたかの如く盛り上がる母。寿命が少し伸びたかな。楽しい1日でした♪
■一般財団法人 山口県老人クラブ連合会
https://www.kirarasenior.jp/
取材・文・イラスト・写真提供/うえだのぶ
●NO老いるLIFE ~母と娘のほんわか口福日誌~ 第1回「母の膵臓が!救急搬送の夜」