医師・鎌田實さんがすすめる「朝たん」習慣。朝食にたんぱく質を多く摂れば筋力アップ、フレイル予防にも
食事のとき、あなたは何から食べるだろう。「野菜から」を意識している人が多いのではないだろうか。たしかに野菜から食べると血糖値の急上昇を抑えて健康にいいという「ベジ(タブル)ファースト」が浸透しているが、実は万能ではないらしい。その真相を究明するため、医師の鎌田實(みのる)さんに100才まで元気でいられるための食事法を徹底解説してもらった。
教えてくれた人
鎌田實(みのる)さん/医師。1948年、東京生まれ。1988年、諏訪中央病院院長に就任し、2005年より同院名誉院長に就任。『医師のぼくが50年かけてたどりついた 鎌田式 長生き食事術』(アスコム)など著書多数。
野口知恵さん/管理栄養士、野菜ソムリエ上級プロ。「おいしい!」の感動を多くの人と感じることをモットーに、大手食品メーカーでの勤務経験を生かし、商品開発やレシピ開発、料理教室、講演、栄養指導などを行う。
※加齢などで心身の活力が低下し、「健康」と「要介護」の中間の状態になること。
ベジファーストは糖尿病の人に効果的
食事のとき、最初に野菜を食べるべきという考え方が近年、否定されつつある。
きっかけは2024年10月に厚生労働省が公表した『日本人の食事摂取基準』。
これは、健康に必要なエネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示すもので、5年ごとに改定している。
「2020年版には記載があった『食物繊維が豊富な野菜から食べ始めることで、食後の血糖値の上昇を抑えて血液中の糖の指標であるヘモグロビンA1c(エーワンシー)を低下させ、糖尿病の予防や管理に役立つ』という文章が2025年版では削除されました」
とは、管理栄養士の野口知恵さんだ(「」内以下同)。
削除されたということは、ベジファーストに意味がなかったのかーー。
「ベジファーストは無意味ではありません。本来のベジファーストは血糖値コントロールのために有効なのですが、ダイエット効果があると拡大解釈されて広がったため削除されたのではと考えられます」
野菜に含まれる食物繊維には小腸の消化・吸収を抑える効果があるので、野菜から先に食べることで後から食べる炭水化物に含まれる糖分の吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を防ぐ。血糖値の上昇がゆっくりになるとインスリンを分泌するすい臓の負担も軽くなり、食後血糖値の最大値も下げられる。
これらは血糖値を安定させることが重要な糖尿病の人に効果的なので、ベジファーストは糖尿病やその予備軍になっている人に適した食事法であり、誰彼構わず野菜を先に食べるのがいいというわけではない。
では、何から食べたらいいのか。『医師のぼくが50年かけてたどりついた 鎌田式 長生き食事術』を執筆した鎌田医師によると、究極の食べ順のキーワードは「たんぱく質」だった。
おすすめの食べ順は、朝にたんぱく質を摂る「朝たん」
冬は毎朝スキー場に通い、3kmのダウンヒルを滑走。2〜3本滑ったら家に帰り、原稿執筆、メディア出演、診察をこなすーー喜寿を迎えた医師・鎌田實さんの毎日は現役並みに忙しい。
そんな鎌田さんが実践し、おすすめする食べ順は、たんぱく質を最初に摂る“たんぱく質ファースト”。特に朝食にたんぱく質をしっかり摂る「朝たん」は、効率よくたんぱく質を筋肉に変えられるので大切だという。
「高齢女性を対象にした調査では、夕食よりも朝食にたんぱく質を多く摂った人の方が、骨格筋指数や握力が高いという報告があります。ただ日本人の場合、3食で摂るたんぱく質の割合は夕食がもっとも多く、朝食はその半分程度。朝と夜のたんぱく質の割合を逆にするだけで、効率よく筋肉をつけられ、その結果、フレイル予防も期待できます」(鎌田さん・以下同)
たんぱく質量の多いさば缶やチーズ、野菜を入れたみそ汁が鎌田さんの朝食の一例。ご飯に蒸し大豆を混ぜたり、しらす干しをのせたりと、たんぱく質をプラスするためのひと工夫も欠かさない。そんな朝たんの効果は如実に出ている。
「2年前までは66kgのバーベルを肩に担いでスクワットするのが精一杯だったのが、いまでは83.5kgを担げるように。それくらい筋肉がついたということです。人間は40才を過ぎると毎年1%ずつ筋肉が減るとされますが、私の場合は毎年100gくらいずつ増えていると思われます」
食べ順を意識しつつも大切なのは楽しむこと
「先に食物繊維を摂るとたんぱく質の吸収を抑えることがあるため、フレイルが気になる高齢者にベジファーストはおすすめしません。また、炭水化物を先に摂ると、血糖値が急激に上昇し、血管が傷ついたり、詰まりやすくなったりします。すると、血管や脳細胞の慢性炎症が起こりやすく、認知症のリスクを高めます」
肉や魚などの主食を食べ、そのときにサラダなどの副菜も一緒に食べれば、血糖値の上昇を抑えつつ、たんぱく質も摂れる。そして最後にご飯を食べるのがおすすめの食べ順というわけだ。
「たんぱく質を摂り終えるまでご飯を食べてはいけないわけではありません。肉か魚→野菜→ご飯の順を繰り返すのがいいでしょう」
完璧を求めず、食事は楽しく食べた方が、健康的な食べ順を続けやすい。
鎌田さんの一日の食事を紹介
<朝食>
1品の量は少なめにし、品数を多くしている。生しらす、ゆで卵、ごま豆腐、チーズ・きゅうり・ミニトマトのサラダ、ブロッコリージュース、にんじんジュース、バナナとブルーベリーのヨーグルトがけ、なし・ぶどうの順に食べているという。
<昼食>
昼食はたっぷり。この日のメニューは、ご飯、目玉焼き2個、厚切りのベーコン、カレー。卵には良質なたんぱく質が豊富で、1日3個食べることが目標。
<夕食>
夕食はローストビーフと野菜サラダ。この日はちょっと多め。普段は、サラダ、めかぶの酢のもの、納豆(ご飯なし)といったメニューが多く、1日3食の食事量の割合を4:4:2に決めて実践している。
取材・文/土田由佳 写真/Getty Images
※女性セブン2026年2月5日号
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