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「お母さんをひとりにするのはかわいそう」遠距離介護を選んだら周囲から厳しい声・・・それでも13年以上母が元気で自宅で暮らせる理由

 介護の形は家族によって様々だが、離れて暮らす親を通いで介護する「遠距離介護」を選んだ作家でブロガーの工藤広伸さん。岩手・盛岡と東京を行き来し、介護を続けているが「親をひとりにするなんてかわいそう」という厳しい声に悩んだことも。どんな想いで介護を続けてきたのだろうか。

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(82才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

遠距離介護を選択した理由

 2012年11月、岩手と東京を行き来する遠距離介護がスタートしました。2026年の今も遠距離介護は続いていて、母は住み慣れた自宅で元気に暮らし、わたしは東京で生活しています。

 なかなか理解してもらえなかった遠距離介護について、改めて振り返ってみたいと思います。

 介護が始まった当時、母は69才。生まれてから一度も岩手以外の土地で暮らしたことがなく、手足に障がいを抱え、認知症を発症しました。母は岩手を離れたいと思っていなかったし、わたしも母を東京に呼び寄せるのは難しいと考えていました。

 一方で、当時40才のわたしが岩手に帰る選択肢もありましたが、学生時代の友人や職場の同僚など、生活の基盤を失ってまでUターンしたいと思わなかったし、東京で暮らす妻にも影響が及びます。

 介護が始まっても、親子ともに今の生活を維持したい。考え抜いた末に、遠距離介護を選んだのは、自然な流れだったかもしれません。

遠距離介護の発信を続けてきた13年間

 2012年当時、遠距離介護に関する情報は今ほどありませんでした。

 自分の介護経験が誰かの役に立つかもしれないと考え、2013年にブログ『40歳からの遠距離介護』を立ち上げ、さらに音声配信『ちょっと気になる? 介護のラジオ』や最近では『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』(翔泳社)を出版し、発信を続けてきました。

 発信を始めた頃、下記のようなコメントが寄せられました。

「どうしてお母さんと一緒に暮らさないのか」

「認知症の親をひとりにしておくなんてかわいそう」

「介護施設に入れないなんて信じられない」

 コメントは気にしないようにしていましたが、岩手にいる親族から同じように言われたときはさすがに悩み、遠距離介護は一般的な介護の形ではないのかと思った時期もありました。

 こうした声が寄せられる理由として、「介護は親の近くで行うべきもの」「親と同居できなければ、介護施設に預けるべき」といった考えが根強く残っているからではないかと考えたのです。

 であれば、自分が遠距離介護を続けて、親と離れていても介護はできると証明してみせようと火がついたのも事実です。誰に何を言われても、母の介護を手伝ってくれるわけではありません。自分を信じて、遠距離介護を続けました。

 13年間発信を続けてきた結果、こうした声は随分と減り、介護中のかたがたから応援のメッセージをいただく機会が増えました。少しずつですが、遠距離介護への理解が広がっているのを実感しています。

かかりつけ医の言葉に救われた

 先日、もの忘れ外来のかかりつけ医から、こんなうれしい言葉をいただきました。

かかりつけ医:「わたしが診ている認知症のかたの中で、お母さまが1番長く自宅で元気に生活されています。このまま長生きしてくださいね」

 片道5時間かけて岩手に通い、13年以上通院介助している家族は他にいないそうです。親の近くに住んでいる人のほうが充実した介護ができるはずなのに、なぜ母が1番長く元気で自宅で生活できているのか?

 1番の理由は、活動量の多さだと思います。ひとり暮らしだから、自分でやれることは自分でやるしかありません。認知症でできないことだらけだし、足が不自由で家の中は伝い歩きですが、ひとりで何とかするしかない環境が活動量を増やす結果になっています。

 もちろんケアマネジャーさんやヘルパーさん、訪問リハビリ、訪問看護、デイサービスといった介護保険サービスの助けがなければ、自宅での生活は難しかったでしょう。

 介護のプロの力を借りつつ、母の生活を支えるためにわたしが月2回ほど実家に帰省し、認知症の状況を確認しながら、安全に暮らせるよう細かく生活の見直しを重ねてきたから、今も元気に自宅で生活できているのだと思います。

 途中、新型コロナウィルスの感染拡大で思うように帰省できなかったり、足を骨折したりするなど、自宅で介護が続けられなくなりそうな場面は何度もありましたが、自宅で暮らしたいという母のために工夫を重ねて乗り越えてきました。

離れて暮らす母の生活を支えるために欠かせないもの

 母と離れて暮らす不安は、もちろんあります。しかしこの13年で、IoT機器は目覚ましい進歩を遂げました。見守りカメラの性能は向上し、手頃な価格で購入できるようになりましたし、エアコンなど家電の遠隔操作も容易になり、離れていても母の生活は支えられます。

 これからも自宅で介護を続けられたらいいなと思う一方で、特別養護老人ホームやグループホームの見学もしています。介護者であるわたしが疲弊したり、もう通えないと判断したりしたら、介護施設に入ってもいいという母の意思に基づいたものです。

 体よりも頭を使って賢い遠距離介護を続け、介護者として疲弊しないよう気をつけますし、これからも発信を続けていきたいと思っています。

 今日もしれっと、しれっと。

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