年代別【免疫力を高める食べ方】で病気を寄せつけないカラダに
私たちのカラダは、年を重ねることで変化していく。
「人は生まれてから乳幼児期、学童期、思春期を経て、成人期に至るまでにカラダは成長していきます。その後、働き盛り、更年期、高齢期を迎えるまでに、加齢などが原因で身体的機能が徐々に変化します。これに伴い、カラダに必要となる食材や栄養素も変化していきます」と語るのは新渡戸文化短期大学客員教授で管理栄養士の堀知佐子さん。
免疫力を高めるために、積極的に摂るべき栄養素について、年代別に考えてみよう。
* * *
基本:乳酸菌で腸内環境を整える
腸には、食べ物と一緒に口の中に入った有害な細菌やウイルスを、体内に吸収させない仕組みがある。その腸の健康は、腸内に存在する善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスで決まり、2:1:7であれば理想的な状態とされている。
「気持ちのいい排泄がある時は、腸内環境が整っている証拠。便の色からも腸内環境がわかり、いい便は黄褐色をしています。免疫力を高めるために腸内環境を整えるには、善玉菌を増やす乳酸菌を積極的に食べること。ヨーグルトなら1日250g程度が目安です。腸内細菌は腸内に留まることができないので、常に食事から摂る必要があります。ヨーグルトだけではなく、漬けものや調味料などの発酵食品を、毎食、少量でも摂り入れましょう」(堀さん・以下同)
30代:肉より青魚をメインにする
まだまだ若い20代は、少々無理をしようが気力でなんとかなるものの、30代も半ばを過ぎると、今までできていたことが苦痛になり、疲れを翌日に持ちこすことが多くなる。
「この年代は基礎代謝量が多く、カラダがエネルギーを必要としています。糖質はエネルギー源になるので、無理な糖質制限は体力不足につながり、免疫力を落としてしまいます。また、パワーをつけようと肉料理を好みがちですが、悪玉コレステロールが酸化され、動脈硬化などの生活習慣病のリスクが高まります。肉は週に1~2回程度に抑え、魚からたんぱく質を摂りたいもの。特にあじ、いわし、さばなどの青魚には、DHAとEPAというオメガ3脂肪酸が豊富。血流がよくなり、免疫力も高まります」
40代:ベジファーストを心がける
40代になると、基礎代謝量は著しく低下し、太りやすくなる。肥満になると、細胞膜を老化させる活性酸素が体内に増え、細胞を変異させ、がん細胞が発生する。
「健康な人でも毎日数千個のがん細胞ができていますが、NK細胞が増殖を阻止しています。免疫力が弱まれば、がんリスクが高まるため、抗がん作用のある食材の摂取が必要になってきます。中でもキャベツは、抗酸化ビタミンといわれるビタミンCと、免疫力を高めるイソチオシアネードという辛味成分、胃腸の粘膜の修復に働くビタミンU、がん予防や免疫力を高めるカロテンも含むため、おすすめです」
食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」を意識し、キャベツのせん切りを4~5口食べてからご飯を食べると、胃を守り、肥満を防ぎ、免疫力がアップする。
→血糖値急上昇をさせない!食べるならどっち?注目の指標GL値で比較
50代:血液の質を高める”鉄”を摂る
50代前後の女性にはさまざまな更年期の症状が表れるが、主な原因は女性ホルモンの減少によって自律神経が乱れること。血流を促すと女性ホルモンが規則的に分泌されるようになり、更年期症状が軽くなる。更年期まっただ中の人もこれからの人も、血液の循環を意識するといい。
また、いい血液作りにはたんぱく質、鉄分、葉酸、ビタミンB6とB12を含む食材をしっかり食べることが大切だ。
「血液といえば鉄分ですが、肉や魚介に含まれるヘム鉄はビタミンCと一緒に摂り、野菜など植物性の食材に含まれる非ヘム鉄は、動物性食品と摂るのが効果的。おすすめは、しじみをにんにく、にんにくの芽と一緒に炒めた『しじみのにんにく炒め』です。手軽に作れて鉄分の吸収率がいいメニュー。血管にも、血液にもいいですよ」
→閉経後に上がるコレステロール値!薬はのむ?のまなくていい?
60代:週に2回は赤身肉で、ロコモ予防
60代に必要なのはコレステロールだ。
「健康診断でコレステロールが高いと食事指導を受けますが、60才を過ぎたら、コレステロールが少し高めの方が〇。
コレステロールは脂なので、細胞膜や性ホルモンの原材料になる成分。若返り物質であり、免疫細胞の強化に働くのです。いいコレステロールを摂るには、良質な赤身肉がいちばんですが、動物性脂肪を含み、消化があまりよくないため、腸内の悪玉菌を増やすことにつながります。腸内環境を悪化させてしまうので、食物繊維が豊富な野菜を一緒に摂って、善玉菌を減らさないよう注意すること」
また、赤身肉のたんぱく質が筋肉作りの材料になるため、足腰が衰え、歩行や立ち座りなどに支障をきたすロコモティブシンドロームの予防にも有効だ。
70代以降:たんぱく質で筋肉を守る
70才を過ぎれば、たんぱく質、ビタミンB6、B12、鉄分が必要な栄養素。これらが足りないと貧血やうつ病を発症しやすく、筋肉の減少により健康を損ないがちになる。
「この4つの栄養素とたんぱく質を含んでいるのが、赤身肉やまぐろ、かつお。人の血や肉となるカラダを作り、筋肉を守って元気の源になるのです。いわしなどの青魚、納豆や豆腐などの大豆製品などと組み合わせて、毎日たんぱく質をしっかり摂って。免疫力を高めるには、食事環境も大切。いくら健康にいい食材でも、嫌いな人とまずい料理を食べては効果も半減。好きな人と語らいながらの食事なら、高価なサプリメントに匹敵するほどの免疫力をアップさせる効果があります」
この年代になれば、心地よく感じる人と過ごすのも大切だ。
イラスト/斉藤ヨーコ
※女性セブン2019年2月7日号