血糖値急上昇をさせない!食べるならどっち?注目の指標GL値で比較
日本の糖尿病患者は1000万人、その予備軍も同数の1000万人といわれる現在。本来、米などの炭水化物は、主食として私たちの体を動かす大切なエネルギー源であるといわれてきたが、生活様式の変化から、現代人にとっては甚大な健康被害を与える側面もわかってきた。そんなリスクの1つが食後に血糖値が急上昇する「食後過血糖」だ。
“血糖値スパイク“の名称でたびたび話題となっている食後過血糖。これは、食後一時的に急上昇した血糖値が、今度は急降下する現象をいう。
食べたものに糖質が含まれていれば、誰でも食後に血糖値は上がる(ただし、正常な人は140mg/dlを超えない)が、この上記グラフように乱高下する状態こそが危険だと、総合内科専門医の團茂樹さんは言う。
「血糖値を上げるのは炭水化物であり、脂質やたんぱく質は関係ありません。空腹時にご飯をかき込んだり、糖質の高いものを大量に食べ続けたりすると、血糖値が一気に跳ね上がってくる人が出てきます。すると今度は、上がりすぎた血糖値を抑えようとして急降下してしまう。
食後過血糖かどうかは、食後1時間の血糖値を計るとわかるのですが、食事ごとに、この乱高下を繰り返していると、やがて血糖値を下げるインスリンを自力で分泌することができなくなり、糖尿病になってしまうのです」(團さん)
【1】食事中の炭水化物は口からの消化酵素により分解が始まり腸でブドウ糖となり、吸収されてすべて肝臓に流入する。
【2】すい臓から分泌されたインスリンがブドウ糖を肝臓に取り込ませる。
【3】肝臓を通り抜けたわずかなブドウ糖も、インスリンの働きで筋肉に取り込まれる。これらの作用により、正常な人は食後も過血糖になることはない。
→糖尿病は早期発見がカギ 血糖値スパイクをチェックできる最新検査
糖尿病患者が急増 過去最多に
2016年の厚労省の調査によると、日本での糖尿病有病者は前回の2012年の調査より50万人も増え、史上最多の1000万人を上回った。
とはいえ、日本人は長らく炭水化物が主成分の米を主食としてきたのに、なぜここに来て、糖尿病患者が増えたのだろう。炭水化物を含む料理や間食が多様化したことはもちろんだが、生活の変化による運動量の低下にも要因があると、専門家は口を揃える。
「かつてはどこへ行くにも、歩くしかなく、とにかく体を動かしてよく働きました。現代人は圧倒的に運動量が足りません」(團さん)
管理栄養士の麻生れいみさんも、動かない生活が招いたと語る。
「わずかここ数十年前の間に、車を使うようになり、買い物にも宅配を利用。テレビやパソコンの前に座って過ごす時間が増えました。昔と同じように白米を食べても、摂取した糖質を消費することができないのです」(麻生さん)
また、生活のストレスが増えたことや睡眠不足も、血糖値の上昇に大きな影響を与えていると麻生さんは言う。食後過血糖が起こると、血中ブドウ糖がインスリンの働きで中性脂肪として取り込まれるため、肥満の要因にも。私たち現代人を取り巻く血糖値の問題は、実はじわりじわりと深刻化しているのだ。
発見しづらく、動脈硬化、認知症、がんも招く
食後過血糖が頻繁に起きる人の場合、糖尿病の一歩手前の境界型、つまり糖尿病予備軍の状態にある。
「食後過血糖で問題なのは、発見しづらい点です。一般的な健康診断や人間ドックでは空腹時に血糖値を測るため、食後に血糖値が乱高下しているかはわからず、なかなか気づきづらいのです。動脈硬化は、高血圧や中性脂肪を含む脂質異常が影響しますが、最近の研究では、血糖値の乱高下が血管壁を傷つけ、糖尿病並みに動脈硬化を招くこともわかっています」(團さん)
そのほか、認知症やがんといった重篤な病を招くこともわかっている。食後過血糖による血糖値の上昇は、あらゆる面で恐ろしいことを知っておいてほしい。