「解熱鎮痛剤に潜む副作用リスク」認知機能や腎機能が低下する危険性も “薬を減らし&やめる”3ステップを断薬専門医が解説
年齢を重ねると、体のさまざまな部位に痛みを感じやすくなる。強い痛みや炎症に即効性がある「解熱鎮痛剤」は入手しやすいため、薬で対処しがちな人も多い。しかし、漫然と薬を服用することで副作用のリスクを高めていると、日本初の外来「薬やめる科」を開設した断薬専門医はいう。服用中の薬を減らし、やめる方法を聞いた。
教えてくれた人
松田史彦さん/医師・松田医院和漢堂院長、2012年に日本初「薬やめる科」を開設
飲む薬が多すぎると体に悪影響も。薬以外の選択肢を知ろう!
「化学物質である薬には、効果効能とともに数えきれないほどの副作用リスクがあり、飲む薬の種類が多いほど、副作用のリスクは高まります」
そう話すのは、2012年に日本で初めて「薬やめる科」を開設した松田史彦医師(松田医院和漢堂院長)だ。
「患者さんは症状に応じて循環器内科、糖尿病内科、泌尿器科、整形外科など専門分化した複数の診療科を受診して多くの薬を飲むことになるため、特に加齢で薬を代謝・排出する腎臓や肝臓の機能が低下する高齢者ほど副作用は出やすくなる。不調の原因が薬の副作用であることが見逃され、新たに薬を処方される悪循環に陥るケースも少なくありません」(以下、松田医師)
松田医師が「薬やめる科」を立ち上げたのは、自身が麻酔科出身であることも影響している。
「ほぼ全ての診療科に関わる麻酔科医師として、医療を横断的に見てきました。症状に応じて薬が“足し算”され、多剤併用による副作用の弊害が問題視される医療の現状を前に、薬を減らす“引き算”の視点が大事だと考え『薬やめる科』を立ち上げたのです」
具体的に、どのように薬を「減らし」「やめる」ことができるのか。
頭痛や関節痛の治療薬に潜む深刻な副作用リスク
慢性的な頭痛や関節痛などに悩み、“お守り”がわりに「解熱鎮痛剤」を常用するケースも少なくないが、松田医師はこう指摘する。
「解熱鎮痛剤は効果が強いものほど副作用が強く、神経障害性疼痛治療薬のように脳にまで作用する薬には失神や錯乱、認知機能低下の副作用が報告されているものもあります。医師に痛みを訴えるほど強い薬が処方される傾向がありますが、これを飲み続けることは深刻な副作用のリスクを高めることに繋がります」
処方薬、また市販薬として身近な存在の非ステロイド性抗炎症薬(ロキソプロフェン、ジクロフェナク、イブプロフェンなど)にも注意が必要だ。
「身近なロキソニン(ロキソプロフェン)でさえ、連用することで胃潰瘍や腎機能の低下といった副作用を起こしやすいことが知られています。ほかにも湿疹、下痢、便秘などの副作用がありますが、軽度な症状は薬の副作用が疑われにくく、症状を訴えると追加で薬を処方されかねないため、注意が必要です」
解熱鎮痛剤の副作用リスクを遠ざけるには、[1]不調があれば薬が原因かもしれないと疑う癖をつける(ほかのすべての薬も同じ)、[2]痛みを恐れて予防的に飲まず、辛い時に限り飲む、というステップを踏む必要がある。
「第3のステップとして、薬以外の痛みを和らげる方法を探ることを検討してください。痛みは整体、鍼灸、マッサージでも和らぐことがあるし、お風呂で温まるだけで楽になったりします。痛みに対処する方法が見つかれば、“お守り”の薬すら不要になるかもしれません」
服用中の薬を減らし、やめたい時、主治医にはどう切り出せばいいのか。
「『薬をやめたい、減らしたい』との意向をきちんと示すことです。相談の際は『おくすり手帳』、薬の『添付文書』や、12種類以上の処方を受けている患者に送付される『お薬相談通知書』を準備し、副作用が疑われる症状を具体的に伝えます。自分で説明が難しい時は家族に同席してもらうのもいいでしょう。経験上、生活習慣の改善から始めて薬を減らすと、顔色が良くなる人が多い印象です」
減薬や断薬で得られるものは、副作用の解消だけではないのだ。
解熱・鎮痛・消炎剤のやめ方、減らし方を解説
松田史彦医師への取材をもとに『日経メディカル処方薬事典』を参考にして解熱・鎮痛・消炎剤の「やめやすさ」と「やめ方のステップ」を作成。医療用医薬品の内用薬(のみ薬)を抽出し、薬は分類ごとに処方薬事典で表示される順に記した。やめやすさの○は「やめやすい」、△は「条件付きでやめやすい」を示している。
【神経障害性疼痛治療薬】やめやすさ:◯
主な販売名:リリカ、タリージェなど
興奮性神経伝達物質の過剰な放出を抑えることによる鎮痛作用などがある。効果は強いものの、意識消失やめまいなどの危険な副作用に要注意。
【非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)】やめやすさ:△
主な販売名:ロキソニン、アスピリン、セレコックス、ボルタレン、ナイキサンなど
炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、痛みを和らげて熱を下げる。プロスタグランジンの生成を抑えると、病気の治りが遅くなる。
<解熱鎮痛剤のやめ方>フローチャート
【1】気付かぬうちに副作用が出ていないか疑う
日常的に解熱鎮痛剤に頼っている人は、薬の副作用が出ていても気付いていないケースが。胃潰瘍や湿疹、下痢、便秘などの症状がある場合、解熱鎮痛剤の副作用の可能性を疑う。
【2】予防的な服用をやめ、耐えられない症状でのみ使用する
わずかな頭痛や微熱での服用や、予防的に服用している人が多い。どうしても辛い時にのみ服用する癖をつける。
【3】マッサージ、入浴ほか薬以外の痛み緩和方法を試す
頭痛をはじめ体の痛みは、整体やマッサージ、入浴などで収まるケースが多い。薬以外に痛みを緩和する方法を試していく。それが見つかれば解熱鎮痛剤の服用はやめられる。
写真/PIXTA
※週刊ポスト2026年1月16日・23日号
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