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認知症の母が毎年受けている長谷川式認知症スケールのテスト結果「点数は…」看護師さんの気づかいと息子の想い

 作家でブロガーの工藤広伸さんは、岩手・盛岡に暮らす認知症の母を東京から通いで介護している。母が認知症と診断された2013年から毎年、認知症の評価をするテストを受けている。認知症の進行とともにテストの点数は落ちてきているのが気がかり。果たして今年の結果は?

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(82才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

認知症の母が毎年受けている「改訂版長谷川式認知症スケール」

 毎年1月になると、母に改訂版長谷川式認知症スケールを受けてもらっています。

 このテストは認知機能を簡易的に評価するもので、全9項目で構成され30点満点です。20点以下になると認知機能の低下が疑われ、20点なら「軽度」、11点~19点は「中等度」、10点以下は「重度」と判定されます。

 2025年1月に受けたテストは4点で、母はすでに重度の認知症と診断されています。2013年にアルツハイマー型認知症と診断されてから13年が経ち、点数の改善は難しい状況になっていて、今後はテストを受けさせなくていいと決めて、もの忘れ外来へ向かいました。

重度の認知症でもテストを続ける必要はあるのか?

 診察室で、わたしはかかりつけ医にこう質問しました。

「重度の認知症になっても、毎年テストを続ける必要はあるでしょうか?」

 かかりつけ医の回答は、「テストの点数と薬の効果の相関を調査している医師は行うけど、うちではやってない」でした。わたしがテストについて質問したからでしょうか? 医師から続けて「せっかくだし、今回は受けてみますか?」と提案されたのです。

 断る理由はないので、結局診察終了後にテストを受けることになりました。

 院内にある個室へ移動し、看護師さんと母が向かいあって座りました。わたしは母の隣に座り、テストの回答に一切口を挟まず、反応もせずに黙って聞いていました。

テスト、スタート!

看護師さん「それじゃあ、いろいろ質問していきますからね、よろしくお願いします」

「あらら、どうしましょう」

看護師さん「まず、お年を教えてもらってもいいですか?」

「年ね、えっと、68才かな」

 母の年齢は82才なので、14才も若返ってしまいました。正解できないと思っていましたが、母が質問の意味を理解できたことがうれしくて、わたしは心の中で「よくやった!」と叫んでしまいました。

看護師さん「今は何月かわかりますか?」

「なんがつ? そういえばご近所さんが何か言ってたわ」

看護師さん「今年は令和何年ですか? 昭和、平成、令和の順番ですね」

「そうそう。この前うちのお父さんが来て、なんとかって言ってたわ」

 年齢の質問だけは理解できたようでしたが、それ以降は質問の意味がわからないのか、ご近所さんや亡くなった祖父の話ばかりになりました。

 母なりに、何か答えなければいけないと思ったのでしょう。わたしとの日常会話でもよく出てくる、祖父やご近所さんの話で取り繕っているように見えました。

看護師さん「これから言う言葉を繰り返してくださいね。桜、猫、電車」

「あら、なんだったかしら。ダメだわ。動くやつ?」

看護師さん「ありがとうございます。あとでこの3つの言葉を思い出してもらいますから、覚えておいてくださいね」

 動くやつ=電車のことかもしれませんが、ひとつも思い出せませんでした。去年の4点のうち3点はこの質問でとれたので期待していたのですが、得点チャンスを逃してしまいました。

 このあと野菜の名前を10個思い出す質問があり、料理が得意だった母なら1つくらい思い出せそうなものですが、今回もひとつも出てきませんでした。

テスト結果は?「看護師さんの気づかい」

 すべての質問が終わったところで、看護師さんがわたしに採点結果を伝えてくれました。

看護師さん「丸ですね」

わたし「そうでしたか。粘り強く付き合ってくださって、ありがとうございました」

 看護師さんが言った「丸」は、0点を意味していました。重度の認知症とはいえ、母が0点を理解してショックを受けるかもしれない。だから看護師さんは気をつかって、遠回しに伝えてくれたのだと思います。

 0点という結果に対し、わたしはそれほどショックを受けていません。母との日常会話から考えて、1点も取れないかもしれないと思っていたし、正直去年の4点と誤差の範囲くらいに思っています。

点数の受け止め方

 0点と聞くと、母が何もできない人間だと思われるかもしれませんが、そうではありません。まだできることは、山ほどあります。

 たとえば自宅でトイレに行きたくなったら、間違わずにトイレに行けます。眠くなったら、寝室に移動して布団に入れます。50年以上暮らしている自宅の間取りは、体が覚えているから、自然と移動できるのです。

 意思表示もはっきりできます。わたしが準備したレトルトのカレーライスを食べた母は、「おいしい」と言います。カレーライスという言葉は忘れても、「おいしい」「まずい」といった意思はわたしに伝えられます。

 この前はデイサービスのスタッフさんに、「わたし、あなたが大好きなの」と直接伝えてスタッフさんを喜ばせていました。テストができなくても言葉数が減っても、母は元気に自宅で生活しています。

 テストの点数が上下していた頃は、わたしのほうが一喜一憂していました。しかし今はテストの点数は気にならず、健康でいてくれればそれでいいと思えるようになりました。いい意味で、あきらめられるようになったのだと思います。

 今日もしれっと、しれっと。

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