兄がボケました~認知症と介護と老後と「第59回 学び多き図書館の話」
認知症を患う兄のサポートを長年続けているツガエマナミコさんの生業はライター。取材やインタビューを行い本や雑誌、新聞に記事を執筆しています。現在、特別養護老人ホーム暮らす兄を定期的に訪問することをかかさず、仕事にも精を出す日常を綴ります。
* * *
兄の気持ちを探る
仕事の資料を探しに久し振りに図書館へ行って参りました。
図書館は、“学生さまが勉強する場所”という認識が昔からありまして、幼少のみぎりから勉強嫌いのわたくしには縁遠いところでございました。図書館を利用し出したのは、ライターの仕事を始めてからといって過言ではございません。しかも数年に1度という頻度でして、まったく図書館慣れしておりません。
どこをどう探せばいいのかわからないわたくしは、迷わず司書さまのいらっしゃるカウンターに直行し、「これこれこういうことが知りたいのですが、どのあたりの本を探せばいいでしょうか?」と伺ってみました。
年配の司書のお姉さまがとても親身になって調べてくださり、本のタイトルや書棚の番号や場所を細かく教えてくださいました。書庫から出してくださった本を含めて10冊ほど集めたら、次は席探しでございます。しかし本を広げられる席はほとんど埋まっており、10冊の本を抱えながらフロアをうろついておりました。
すると端っこに空席の机が並んでいるではありませんか。ホッとしてそこで本を広げ始めたところ、「ご予約の方ですか?」と職員の方に声をかけられました。
どうりで空いていると思ったら、そこは事前予約が必要な席だったのでございます。
図書館にも自由席と予約席があるのですね。
幸い、その後たった1つ空いていた自由席を確保できたのでよかったですが、今後は図書館でちゃんと調べものをしたいなら席を予約すべきだと学習いたしました。
無事に調べ物が完了し、3冊借りて帰ることにしたわたくしは、ここにきて初めて「自動貸し出し機」なるものがあることを知りました。中学生らしき女子がセルフレジの要領で本のバーコードを読み込ませている様子を拝見して「なるほど、これで借りられるのか」と感心いたしました。
その女子が立ち去ったので、わたくしが3冊の本とともに自動貸し出し機の前へ進み、手順の説明書きを読み始めたところ、すかさず職員の方が近づいてこられて「まず貸出カードをここにかざしてください」と教えてくださいました。そこでようやく「貸出カード」というものがないと作動しないことに気づいた昭和生まれでございます。
階下の窓口で貸出カードを作ってくるよう促され、3冊の本を抱えて階下へ向かったのは言うまでもございません。おかげさまで、できあがったカードで無事に本をお借りすることができました。いろいろな意味で学びの多い一日でございました。
今週は、兄に焼き菓子の差し入れをして参りました。
プリンとヨーグルトとジュースしか差し入れてこなかった1年半でしたが、スタッフさまの「ケーキも小さく切れば召し上がれますよ」とのお話に、「そうなんですね」と気を良くしたツガエなのでした。
とはいえ、生クリームを使ったケーキ類は日持ちがせず、冷蔵庫の場所も取ってしまうので、常温で1か月ぐらい保存できるフィナンシェなどを見繕って持参いたしました。
食べること以外、楽しみがない兄でございます。
趣味もなく、恋人もなく、歩くこともできず、本もマンガも読めず、テレビに向かっていても楽しんでいる様子も見られません。
画用紙とクレヨンでも持っていけば何か描くでしょうか。
手元にぬいぐるみなどあれば気晴らしになるでしょうか。
そんな子ども扱いに気づいてしまうでしょうか。
ときどき思うのです。表面に見えている兄とは別に、どこかで本来の兄がすべてのことを俯瞰して、周りの人の対応を冷静に見て喜怒哀楽しているのではないかと。もしもそうなら、何がしたいとか、何が食べたいとか言ってくれればいいのに……。
でも、わからないからその分あれこれ想像して、その人のことを長い時間思い続ける営みも捨てがたい。わかることは便利だけれど、わからないことも悪くない。
来週は何を差し入れましょう……。今はそんなことを考えているツガエでございます。
