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健康

閉経後に上がるコレステロール値!薬はのむ?のまなくていい?

 閉経を機にぐんと上がるコレステロール値。しかし、いちばんの味方であるはずの薬が、使い方を間違えれば効かないどころか、副作用に苦しむ羽目になる。

「のまなくていい」人が不必要に服用し続ける現実も。その薬、のむかべきか、のまざるべきか…専門家が解説する!

「この薬、効いているのかいないのか‥‥。だいたい、体調が悪いっていう自覚がないから、のんでもよくなった実感が湧かないのよね」

 東京都に住むパート勤務の山中由利子さん(仮名・54才)はため息をつく。

 最近受けた血液検査の結果、医師から「コレステロールの値が基準より高い」と告げられたばかりだ。高コレステロールは「高脂血症」や「脂質異常症」などとも呼ばれる。

「『とりあえず、これをのんでみてください』と出されたのが、『スタチン』という錠剤でした。服用は1日1回。まだのみ始めたばかりですが、本当にコレステロール値が下がるんでしょうか。それに、風邪薬や頭痛薬と違って、ずっとのみ続けなければならないと聞きました。一体、いつまでのめばいいんでしょうか?」(山中さん)

 厚労省の調べによれば、日本人女性の17%がコレステロールの薬を服用。

 その割合は年を重ねるごとに増え、70才以上になると30%を超える。山中さんのように、医師に出されるままにのみ始め、その後に何十年ものみ続ける患者が多いのが現状だ。

確更年期後のコレステロール値が上がるのは自然な変化

  瀬戸循環器内科クリニック院長の瀬戸拓先生は、「すべての人がのむ必要はありません」と話す。

 まず知っておきたいのが、“コレステロール”と一言でいっても、血液検査で測るコレステロールに関する項目には、「総コレステロール」、「LDLコレステロール」、「HDLコレステロール」があるということ。

「3つの中で最も重要なのは『LDLコレステロール』の値です。これが高いと動脈硬化が進行しやすく、放置すると、狭心症や心筋梗塞といった病気を引き起こすリスクが高くなることがわかっています。その一方で、あとの2つに関しては、病気との関係性がはっきりしないため、数値が高くてもそこまで気にする必要はありません」(瀬戸先生)

 特に女性の場合、更年期になると女性ホルモンが低下するので、コレステロール値が上昇しやすい。なので、50代以上になると薬をのむ女性が急増することになる。

 ところが、新潟大学名誉教授の岡田正彦先生は、「更年期によって数値が上昇するのは、女性の体の自然な変化です。薬は必要ない」と話す。現在、薬を服用している50代以上の女性は、服用を再検討すべきだろう。

「高コレステロールによって引き起こされる心筋梗塞のリスクは、男性に比べて女性は非常に少ないことが明らかになっています。更年期以降の女性で、LDLコレステロール値が高いだけであれば、すぐに薬をのみ始める必要はありません」(岡田先生)

代表的な薬は「スタチン」

 では、のむ必要があるのはどのような場合なのか。

「喫煙の習慣があったり、ほかにも糖尿病に罹患していたりする場合は、薬をのんでコレステロール値を下げる必要があります。また、過去に脳梗塞や大動脈瘤を発症したことがある、動脈硬化が疑われるなど、血管の病気を持っている人も数値を下げた方がよい。薬を服用するかどうかは、数値と健康状態の兼ね合いで判断すべきです」(瀬戸先生)

 コレステロール値を下げる薬で代表的なものは「スタチン」だ。世界中で推定4000万人がのんでいるというメガヒットの医薬品だ。

「7種類ほどある薬の中で、確実に効果があるといわれているのはスタチンと呼ばれる薬です。スタチンは、肝臓でコレステロールを合成する際に必要となる酵素を分解するというメカニズムで、コレステロール値を下げる効果があります。この薬以外は大きな効果はありませんが、スタチンで効果がみられない時に、まれに『ゼチーアR』という薬を併用することがあります」(瀬戸先生)

 スタチンには、骨格筋が壊死を起こし、手足のしびれや筋肉痛を伴う「横紋筋融解症」という副作用がある。そのうえ服用すると筋力が低下するともいわれている。瀬戸先生は注意して使えば、副作用の心配は少ないという。

「私の患者でスタチンの副作用が重症化した人はいません。のみ始めて数週間後に診察して、患者さんにも異変があればすぐに来院してもらうようにしています。服用を始めてから数か月後に、コレステロール値を調べるための血液検査をするのですが、その際に必ず、横紋筋融解症を診断するCK値も同時に測定する。その時点でもし値が高ければすぐに処方をやめ、ほかの薬に切り替えるようにしています」

副作用は、のみ初めて半年以内で出る場合が多い

  その薬が合うかどうか、医師に判断を仰ぐことも重要だが、それ以上に大事なのは体の状態をセルフチェックすることだ。

「薬には必ず副作用があり、危険なものもありますが、のみ始めて半年以内に出ることがほとんど。それまでは自分でも体調の変化に気を使い、違和感があったらすぐに医師に相談しましょう。逆に同じ薬を5年、10年と問題なくのみ続けているなら、自分にとって相性がいい薬だと考えていい」(瀬戸先生)

 日本は諸外国に比べて薬の処方が多いと指摘される。厚労省によると、75才以上のおよそ4人に1人が6種類以上の薬を服用しているという。その一方で、高齢者が6種類以上の薬をのむと、体に害のある副作用が起きるリスクが高まるというデータもある。

「高齢化すると持病も増えるので、前からのんでいる薬があればおのずと種類が増えていきます。たとえば心筋梗塞に罹患すると、悪化・再発予防のために必ずのまなければいけない薬が最低4、5種類はある。もし、それに加えてコレステロールの薬をのむのであれば、6種類の薬を服用することになります。不必要に薬をのみ続ける人がいるのは確かで、本当に必要な薬だけを選んで処方するのも医師の重要な仕事です」(瀬戸先生)

 どの薬を使い、どの薬をやめるのか。瀬戸先生は「相談する主治医選びが大事」と話す。

「薬の選び方は、年齢に限らず、個人の体調や既往歴によっても変わります。特にコレステロールの薬に関しては、これまでの病歴や生活習慣など、医師が患者の情報をもとに判断して決めるのがベスト。薬の選択基準は、『あの薬は効きそう』といった患者さんの感情や印象ではなく、客観的な科学的根拠に基づく効果や有効性によってなされるべきです。ですから、動脈硬化や心疾患の専門知識がある循環器内科の医師に診てもらうことをおすすめします」(瀬戸先生)

コレステロールの主な薬と副作用

●スタチン
効能:肝臓でコレステロールを合成する際に必要となる酵素を分解し、コレステロール値をさげる。
副作用:横紋筋融解症で手足のしびれや筋肉痛になる可能性がある。

●ゼチーア(R)
効能:小腸からのコレステロール吸収を抑制し、血中コレステロール値を低下させる。
副作用:便秘や下痢、めまいや嘔吐の可能性がある。

※女性セブン2019年1月1日号

●「認知症」「糖尿病」「動脈硬化」女性が今すぐ受けるべき“超最先端”検診・検査

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