閉経後【骨粗しょう症】は知らぬ間に進行する 自己チェックする方法
痛みなどを自覚しないうちに、気がつけば骨がスカスカになってしまう骨粗しょう症。進行すると、ちょっと転んだだけで、自分でも気づかぬうちに骨が折れてしまう危険があると、原宿リハビリテーション病院名誉院長の林泰史さんは言う。
「骨粗しょう症による骨折は“脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折”ともいい、調査を始めた1987年からは毎年、患者が増え続けており、医療界では今、予防に注力しています」(林さん、「」内以下同)
知らぬ間に骨折する”隠れ骨折”の予備軍って?
特に閉経後の女性の大多数が、知らぬ間に骨折する“隠れ骨折”の予備軍だという。
「骨の新陳代謝には女性ホルモンが深くかかわっています。閉経を迎えると、加齢とともにこの女性ホルモンの分泌量が激減してしまうため、どうしても骨がもろくなり、隠れ骨折予備軍になってしまうのです」
では、予備軍になる人と、そうでない人の差は、いつ生じるのだろうか?
「それには20代の最大骨量が深くかかわっています。骨の基礎が作られるのは、20才くらいまでなのですが、それまでに牛乳や乳製品をよく食べてバランスが良い食生活を送り、適度な運動をしていた人は、“骨貯金”が多く、隠れ骨折のリスクは高くありません。しかし、1980年代頃から過熱したダイエットブームで、小学生のうちから食事制限をした女性も少なくない、そのような人が隠れ骨折予備軍になる傾向が高いのです」
理由は、骨を作る栄養素は油と一緒に摂ることで吸収力が高まるものが多いため、ダイエット中に、気づかぬうちに油を必要以上に抜いていたとしたら、骨の形成に不可欠な栄養素が取り込まれていない可能性が高いからだ。さらに、生活習慣もかかわっていると林さんは言う。
「骨の成分の1つ、カルシウムは、水分とともに排泄されやすい特徴があります。利尿作用のあるアルコールやカフェインを多く飲む習慣がある人は、量を減らすなどの対策が必要です」
加えて、地方在住の人のほうが、危険度が高いとも。
「地方の人には車利用者が多く、都会の人は公共機関を使って、歩いている人が多い。実は骨を強くするためには、歩くときのトントンという衝撃が不可欠なのです」
普段、車での移動が多く、1日7000歩以下しか歩かない人は、骨が弱くなる傾向が高くなるので改善を。
隠れ骨粗しょう症チェックリスト
知らぬ間に進行してしまうのが、骨粗しょう症の怖さ。生活習慣も深くかかわるので、まずはセルフチェックで確認を。
□ 近くても移動手段は車だ
□ 牛乳、乳製品をあまり摂らない
□ 小魚や大豆食品(納豆や豆腐など)を積極的に摂らない
□ コーヒーやビールが好きで、よく飲む
□ 最近、背が縮んだような気がする
□ 体格はどちらかというと、スリムな方だ
□ 糖尿病など生活習慣病予備軍だと言われたことがある
□ たばこを吸っている(かつて3年以上喫煙していた)
□ 天気がいい日でも外に行くよりも、家でゴロゴロしている方が好き
□ 閉経を迎えた
※原宿リハビリテーション病院名誉院長・林泰史さんの話をもとに作成。
【判定結果】
◇0~2個の人は…基本的に心配なし!
現状の生活でリスクは少ない。だが、引き続き運動や食事に気をつけて。背が縮んだ気がする人は、病院で骨粗しょう症の検査を。骨の生成に女性ホルモンがかかわるので閉経を迎えた女性は特に注意が必要。
◇3~5個の人は…生活習慣から予防を
自覚せず骨粗しょう症が進んでいる可能性が。もし、2cm以上背が縮んだり、腰痛がある場合は、医師の診察を受けるべき。これらの症状は骨粗しょう症による隠れ骨折が起こっているサイン。早めの対策を。
◇5個以上の人は…リスク大! すぐに検査を
現在のままの生活を続けると、骨粗しょう症が進行するリスクが高い。ちょっと尻もちをついたり、転んだ瞬間に手をついただけで、骨がポキッと折れてしまう危険性を少なくするため、医師の受診を。
カルシウムを骨に沈着させる食事や運動を
生活習慣の改善も大切だが、予防には、食生活が重要だと、林さんは言う。
「丈夫な骨を保つためには、カルシウムさえ補給しておけば大丈夫だと考える人がいますが、それだけでは不充分。牛乳や小魚、青菜などに多く含まれるカルシウムは体内への取り込み効率が悪いもの。これらは、カルシウムとともに、吸収をよくするビタミンDや、骨を強化するビタミンK2を同時に食べることが重要なのです」
紅鮭やさんま、きくらげなどに多く含まれるビタミンDは、小腸でカルシウムの吸収を促す。
「ビタミンDは日光を浴びることでも体内合成されます。女性は紫外線対策を徹底している人が多いのですが、これも骨粗しょう症になるリスクを高めていると感じます」
納豆などに多く含まれるビタミンDは、吸収したカルシウムを骨に沈着させるたんぱく質のオステオカルシンを活性化させる。また、日々運動を行うことも予防につながる。
「骨は、衝撃を受けることで強化されるので、体全体に衝撃がかかるように、ドンドンと歩く習慣をつけたり、大股で歩いたりしてください。あとは、骨を支える筋肉を作るために簡単なストレッチを。背伸びをするとか、ラジオ体操をするとか、その程度のことでも充分です」
日常生活から隠れ骨折は予防できる。骨を意識した生活を始めよう。
初出:女性セブン
●骨粗しょう症を予防して丈夫な骨を!毎日できる簡単エクサと効果的な食べ方