油研究・第一人者の医学博士が教える体にいい油の種類|オメガ3系・オメガ9系って?油の使い方Q&A
生活習慣病予防、アンチエイジング、更年期対策…毎日の油を見直すだけでこんなに良いことだらけ!
油はエネルギーとして消費されて体に溜まりにくく、細胞膜やホルモンの材料にもなる優秀な栄養素。毎日の油を5種の“良い油”に変えるだけで、健康と若々しさが手に入ります。慶應義塾大学医学部教授で、油研究の第一人者の医学博士・井上浩義さんに今日から摂るべき油の選び方を教えてもらいました。
油が影響で生活習慣病に
「油の成分である脂質に含まれる“脂肪酸”は数種あり、体への影響もさまざま。外食や加工品の食事が多いと、生活習慣病を引き起こすトランス脂肪酸やオメガ6系などの摂り過ぎにつながります。積極的に摂るべきは、血液の状態を良くするオメガ3と9系の油。
オメガ9系は加熱しても健康効果が変わらず、サラダ油の代用にぴったり。日本人に不足しがちなオメガ3系は、料理の仕上げにかけると、無理なく摂れます」(井上さん)
サラダ油などオメガ6系の油から、熱で酸化しにくく調理向きなオメガ9系に切り替えることがおすすめだ。
摂るべき「オメガ9系」と「オメガ3系」ってどんな種類の油?
体のために、いいと言われる油は「オメガ9系」と「オメガ3系」だ。それぞれ、どのような種類の油で、特徴、期待できる健康効果は以下を参照してほしい。
●オメガ9系
●米油… 米ぬかに含まれるγ-オリザノールが自律神経を整えて更年期障害や冷え性を緩和。ほのかな甘みがある。
●菜種油…菜種油の中でも、海外産のキャノーラ油と呼ばれるものは、品種改良によりオレイン酸の割合が高い。
●オリーブオイル…脂肪酸の中でもオレイン酸が7割以上を占める。ポリフェノールが豊富で抗酸化作用が高い。
<特徴・使い方>
悪玉コレステロールを減らす、オレイン酸を多く含む。オメガ6系のリノール酸の弊害を緩和する働きも。熱に強く、揚げ物などの高温調理にも使える。
<健康効果>
・オレイン酸が血中の善玉コレステロールはそのままに、悪玉だけを減らす
・オレイン酸が胃腸を活性化し、胃もたれや便秘を解消
・酸化しにくく、体内の活性酸素を増やしにくい
●オメガ3系
●亜麻仁油…血液を凝固させ、骨を守るビタミンKが含ま れるため、重い月経や骨粗しょう症を緩和する。
●えごま油…ビタミンK以外の栄養素は亜麻仁油とほぼ同じで、α-リノレン酸たっぷり。
<特徴・使い方>
食品からしか摂取できない“必須脂肪酸”のα-リノレン酸が豊富。一部がEPAやDHAに変換され、血管や脳の健康を保つ。加熱すると活性酸素が増えるので、生食が◎。
<健康効果>
・α-リノレン酸が血中の悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす
・α-リノレン酸がアレルギー症状を緩和
・EPAが血管をきれいにして動脈硬化や血栓を予防
・DHAが記憶力や集中力を高める
→【オメガ3(えごま油・亜麻仁油)】&【オメガ9(米油・菜種油・オリーブ油)】を使ったレシピ
控えるべき油はどんな種類?
活性酸素を増やしたり、血管を傷つけたりし、心臓病、動脈硬化につながる恐れもある控えるべき油は「トランス脂肪酸」と「オメガ6系」だ。
●トランス脂肪酸
活性酸素で老化が進む。
植物油に人工的に水素を加えたもの。マーガリンやマヨネーズ、カップ麺などに含まれる。体内の活性酸素を増やし、心臓病の要因、認知症の進行にもつながる。
●オメガ6系
外食などで摂り過ぎの傾向。
ごま、コーン、大豆などから採った油に含まれ、サラダ油はこれらの油を混ぜて作られている。主に含まれるリノール酸は必要な成分だが、現代人は摂り過ぎ。血管を傷つけ、動脈硬化につながる。また、細胞を酸化させてがんやアレルギーの原因にもなる。
油をおいしくヘルシーに使うためのQ&A
摂るべき油を扱うお店のプロたちと前出の井上さんに、油をおいしくヘルシーに使うこつを教えてもらった。
「揚げ物の温め直しは、香りの良い油を少量使い、弱火でゆっくり揚げ焼きするとサクサクに。嫌な油のにおいも取れます」(綾綺殿店長・山本修平さん)
Q.油はどのぐらいで使い切るべき?
A.酸化しにくい油も2~3か月が目安
「開封後は酸化しやすくなるので、オメガ3系は1か月、他は2~3か月程度で使い切って。アルミホイルを瓶に巻いておくと、遮光効果が高まります。25℃程度の室温保存なら問題ないので、冷蔵庫に入れる必要はありません」(井上さん)
Q.風味が落ちない保管方法は?
A.温度や光の影響を受けにくい戸棚や引き出しへ
「油は紫外線や空気に触れたり、高温になったりすると酸化が進みます。光や温度の影響が少ない冷暗所での保管を。ガスコンロの脇などに出しっぱなしはNG」(井上さん)
Q.揚げ油は何回再利用できる?
A.1回で処分を
「空気に触れる上、高温になったり食材に触れたりすることで、酸化が加速します。酸化した油は体内の活性酸素を増やす原因に。少ない油で揚げるなどの工夫で節約し、再利用は避けましょう」(井上さん)
Q.体に良い油は、たくさん摂るほどよい?
A.1日に大さじ3杯程度を目安に
「油は小さじ1杯で約37kcalと高カロリー。女性なら脂質は1日約400~500kcalに抑えるのが理想です。外食なども考慮すると、家庭で摂る油は大さじ3杯を目安に。オメガ3系のオイルはそのうち小さじ1杯程度で充分です」(井上さん)
Q.好みの油を見つける方法は?
A.淡白な食材につけて風味を確かめる
「味がシンプルなパンや豆腐につけると、風味がわかりやすいですよ」(金田油店店長・青木絵麻さん)。
「オリーブオイルひとつとっても、風味はさまざま。濃い料理には強い香りが合うので、こってりとんこつラーメンに合うか繊細な豆腐に合うか、想像しながら試してみて」(「ラ・カンティーナ・カンチェーミ」代表 エンツォ・カンチェーミさん)。
Q.店で買う時に気をつけることは?
A.箱に入っているものや量り売りが安心
「デリケートな油は売り場の照明でも少しずつ酸化が進むので、箱などに入っているものが安心です」(井上さん)。
新鮮なものを必要なだけ買えるシステムの店もある。「当店では完全に遮光できるステンレスの缶に油を保管し、購入の際瓶につめます。開封すると酸化が進むので、短期間で使い切れる量だけ買うことも重要」(カンチェーミさん)。
教えてくれた人
井上浩義さん:慶應義塾大学医学部教授。油研究の第一人者。著書に『知識ゼロからの健康オイル』(幻冬舎)などがある。
山本修平さん:江戸時代創業の老舗油店が営むカフェ「綾綺殿」店長。店URL:http://www.yoil.co.jp/ryokiden/#item1
青木絵麻さん:店内で30種類以上の油の試食ができる「金田油店」店長。店URL:https://www.abura-ya.jp/
エンツォ・カンチェーミさん:オリーブオイルの専門店「オリーヴォ」が手がけるレストラン「ラ・カンティーナ・カンチェーミ」代表。店URL:http://www.cancemi.jp/cantina/
撮影/奥村暢欣、柴田愛子、武見静香
※女性セブン2018年9月20日号