《92歳現役ランナー》北畑耕一さん、トレーニングはAIに相談しながら行う 健康の秘訣は「野菜中心の食事」「8時間睡眠」、茶道やフランス語も学び「挑戦すると道が開ける」
いくつもの大会の最高齢記録を塗り替えている、現役フルマラソンランナーである北畑耕一さん(92歳)。74歳から走ることを始めた彼が、練習の相棒に選んだのはなんと「AI」。最新技術を駆使して体調管理を行う柔軟な姿勢や、心身の健康を保つ秘訣、人生を楽しみ尽くすためのアドバイスを聞いた。【全3回の第3回】
朝の体調不良を、AIに相談して克服
――普段は、どんな練習メニューをこなしているのでしょうか。
北畑さん:毎朝10年以上、ラジオ体操、ストレッチ、スクワットなどの筋トレを合わせて30分くらい行っています。それから週に2回は走っていて、夏は5km、冬は10km、自宅そばにある約500mの緩やかな坂を往復して距離を稼いでいます。
最近はトレーニングについて、AIに相談しています。例えば、真夏は昼間暑いので、朝5時に起きて練習することにしたのですが、すぐに息が上がってフラフラになるんです。AIに解決法を聞いたら、「朝は内臓が温まっていないから、白湯を飲みましょう」とアドバイスされました。
また、朝のランニング直前にオレンジジュースとケーキを食べていましたが、それもよくなかった。血糖値が上がるのでインシュリンが出て、逆に血糖値が急激に下がる。そこで「急に血糖値が上がらないようにバナナやヨーグルトを食べてから走りなさい」とAIが教えてくれたんです。
2週間ほどその通りにしてみたら、朝もしっかり走れるようになりました。昨年11月のニューヨーク・シティマラソンが終わって、今年1月のいぶすき菜の花マラソンまでの練習メニューもAIに考案してもらいました。90代のランナーはどうしたらいいか、相談する相手がいないじゃないですか。だけども、AIは膨大な蓄積データを持ってますからね、頼りにしています。
――その他、健康で意識していることを教えてください。
北畑さん:食事は野菜中心です。お酒はあまり飲みませんが、甘いものはよく食べます。運動もしているので、いくら食べても体重は増えないんですよ。あとは、早寝早起きは意識しています。夜は8時頃に眠くなって、8時間~9時間くらい眠ります。会社員の頃はそんなに寝る時間がありませんから、8時間睡眠はマラソンをするようになってからです。
他には、喉が乾燥しやすくなったので、マスクをして寝ています。それも健康に一役買っているかもしれません。とにかく、けがをしないように走ることを心がけています。朝の準備体操は大事ですよね。柔軟性があれば、けがも少ないと思うんです。とはいえ、私はそこまで体が柔らかいわけではありません。それでも続けることに意味がある。全力を尽くしてダメだったら、あきらめもつくじゃないですか。
挑戦し続けることで道が開けていく
――シニアランナーが増えているそうです。90代でもフルマラソンに挑戦し続けられる心身の健康を得るためのアドバイスをお願いします。
北畑さん:私の周りを見ていて、80歳代のランナーをあまり見かけません。70歳過ぎても決して遅すぎることはないので、気長に続けてさえいれば、90歳になっても走れるのではないでしょうか。
孔子の言葉に、これを知るものはこれを好むものに如かず、これを好むものはこれを楽しむものに如かず、とありますが、マラソンを楽しむことですね。スポーツ選手とは違いますから、記録はあまり気にしないことです。
私は3つほどランニングの会に所属していて、年齢に全く関係なく折に触れ集まって懇親会とか打ち上げ会とかしています。マラソンを始めて以来たくさんの友達に恵まれています。2018年から茶道を始め、お茶の仲間も増えています。月に2、3回練習に通っています。
70歳でリタイアしましたが、退職した月から約2年間フランスに語学留学しました。それまで仕事で英語ばかり使っていたのでいつかフランス語を学びたいと思っていました。そこでも友達ができ、今も続いています。昨年のパリマラソンで最高齢だったので地元のテレビ局のインタビューを受け、片言ですがフランス語で受け答えました。
――リタイア後はゆっくりしようと思わなかったのですか?
北畑さん:今まで朝早くから夜遅くまで家にいなかったのに、急に24時間私が家にいたら、家内はうっとうしくなるんじゃないかな(笑い)。留守がちなくらいが夫婦円満の秘訣かもしれませんよ。
元々好奇心が強いせいか、いつも何か新しいことにチャレンジしたくなるんです。マラソンだって始めた時は長く続くとは思っていませんでした。何かに挑戦してみると、そこからまた、楽しみ、生きがいが見つかると思います。たまたま私の場合ランニングだけでなくお茶やフランス語を続けています。これからも何か新しいことに挑戦したいですね。。
◆ランナー・北畑耕一
きたばたけ・こういち/1933年11月3日、神奈川県生まれ。伊藤忠商事を経て外資系日本法人の代表を歴任し、70歳で退職。74歳から走り始め、78歳で初マラソン完走。80歳でニューヨーク・シティマラソン年代別1位を獲得。83歳で脊柱管狭窄症の手術を受けながらも、わずか8か月後にフレンチ・リビエラマラソンを完走。以降、国内12回・海外22回、計34回のフルマラソンを走破し、最高齢ランナーとして注目を集めている。
撮影/小山志麻 取材・文/小山内麗香
