「死ぬなと思った」グレート義太夫さんは人工透析中 怖い腎機能低下を早期発見する自己チェックリスト「透明の尿は要注意」
自覚症状がないまま進行する慢性腎不全。50才で糖尿病性腎症による慢性腎不全を発症したグレート義太夫さんは息切れ、倦怠感で「死にかけた」という。腎臓の機能は加齢とともに低下するが、なるべく早く気づいておきたいもの。おしっこや健康診断の結果からわかるチェックリストで腎臓の状態を今すぐ確認しよう!
教えてくれた人
グレート義太夫さん(65)/お笑い芸人
上月正博さん/医師。東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長
黒尾誠さん/医師。『腎臓が寿命を決める』(幻冬舎新書)の著者、自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部教授
50代で人工透析を開始したグレート義太夫さん「めまいと吐き気がすごくて死ぬなと思った」
重篤な疾患につながりかねない腎臓の不調で、身体にどのようなシグナルが現われるのか。
「15年前、50才になった頃、全身にだるさを感じて疲れやすくなった。歩いているとすぐに息切れがして、近所のコンビニまで歩くのもしんどくなりました」
そう語るのは、お笑い芸人のグレート義太夫さん(65)。暴飲暴食がたたり36才で糖尿病を発症した義太夫さんは、その後も生活習慣を改善しなかった。
「じゃがバターが大好きで、毎日バターを塗りたくって食べていました。深夜の焼肉もしょっちゅう。でも野菜は全然食べなくてね。50才の時に全身に吹き出物ができて、かゆいし疲れやすいし、めまいと吐き気もすごくて、これは死ぬなと思いました。それで病院に行ったら、糖尿病性腎症による慢性腎不全だと」
以来、義太夫さんは現在に至るまで週3回の人工透析を受けている。
倦怠感、息切れは、腎機能低下の典型的な症状だが見逃しやすい
義太夫さんのように全身のだるさや息切れは代表的な兆候だという。
山形県立保健医療大学理事長で、東北大学名誉教授の上月正博医師が指摘する。
「腎機能の低下が進むとだるさや倦怠感を感じ、少し運動しただけで息が切れるようになります。私は腎臓病の専門医として40年以上、患者さんを診てきましたが、こうした初期兆候は『年を取ったせいだ』と見逃されやすい傾向があります」
要注意1:尿の色が透明になる
腎臓の異常が顕著に現われるのが「尿」だ。
「腎機能が衰えると尿の濃縮力が低下するため、尿量が増えて夜間頻尿になったり、薄い尿しかつくれなくなって尿の色が透明になることがあります。末期の腎症では尿がつくれなくなるのですが、進行中の場合はむしろ多尿になるのです。ただ、前立腺肥大や過活動膀胱といった泌尿器疾患を疑って、腎臓の不調だと気づかないケースが多い」(自治医科大学分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部教授の黒尾誠医師)
要注意2:夜間に2回以上トイレに起きる
健康な成人の尿量は1日1〜1.5Lだが、夜間に2回以上トイレに起きる場合は、腎機能低下の疑いがあるという。
前出・上月医師も排尿時のサインについて語る。
要注意3:排尿時に尿が泡立つ
「腎臓のろ過機能が低下することで、尿中にたんぱく質が漏れ出て、排尿時に尿の泡立ちが目立ちやすくなります」
腎臓は血液のろ過を通して体内の水分量の調節を担うため、腎機能の不調が身体のむくみにつながる場合もある。
「腎臓に障害が生じると血液を十分にろ過できず、老廃物や水分などが体にたまってむくみが出やすくなります。一般的には起床したばかりの朝方には顔がむくみやすく、一日活動した夕方に足がむくみやすいといえるのですが、朝から足のむくみ、夕方にも顔のむくみが見られる場合は、腎機能が低下している可能性があります」(上月医師)
要注意4:出生時に低体重だった
黒尾医師は「出生時に低体重だった人は腎機能の低下に関わる可能性がある」と言う。
「腎臓は毛細血管の塊である糸球体と尿細管からなるネフロンの集合体ですが、ネフロン数は個人差があり、最初から50万個程度の人もいれば、300万個ある人もいます。個人差が生じる要因はまだ研究段階ですが、出生時の体重が低いとネフロン数が少ない傾向があることがわかっている。出生時に低体重だった人で、尿の異常やむくみの症状が出る人は要注意です」
健康診断で気をつけたい「2つの数値」とは
ただし、慢性腎臓病の初期には自覚症状が少なく、症状に気づいた時には進行しているケースも珍しくない。
そこで健康診断の結果に着目する必要があるという。重要な指標となるのが「血清クレアチニン」と「eGFR(推算糸球体ろ過量)」だ。
クレアチニンは腎臓から排泄される老廃物のひとつで、腎機能が低下すると血液中の量が増加する。男性の基準値は「1.1未満」で、数値が上がるほど腎機能の低下が疑われる。「8.0」を超えると要透析と判断される。前出の義太夫さんは「受診した段階で血清クレアチニン値が『11.3』で、すぐに人工透析が始まった」という。
eGFRは、血清クレアチニン値、年齢、性別から計算される数値だ。「60.0以上」を基準値として下がるほど腎機能の低下を示す。「59.9以下」から段階的に腎機能低下が疑われ、「15.0未満」になると末期腎不全と診断される。
ただし、「基準値の範囲内であっても安心はできない」と前出・上月医師が警鐘を鳴らす。
「クレアチニン値はやせ型の高齢者は低く出る傾向があり、糖尿病患者のeGFRはよい数値となりがちで、ともに基準範囲内でも腎機能が低下しているケースがあります。
年に一度の健康診断の数値を毎年チェックして、これらの数値が2年以上連続して悪化していたら、腎機能の低下を疑ったほうがいい。日本腎臓学会の専門医がいるとベストですが、医療機関を受診して医師の指導を受けながら腎機能の維持・改善に努めましょう」
10項目でわかる「腎機能低下が疑われるチェックリスト」
※黒尾医師、上月医師への取材をもとに本誌作成。
自覚症状でチェック!
【1】腎機能が低下すると尿が凝縮できず、尿量や色などに異常が出たり、体内の水分量が調節できずむくみなどが生じる
●夜に2回以上トイレに起きる
●透明な尿が出る
●尿に泡立ちが目立つ
●身体にむくみが出る
【2】加齢による症状と勘違いしやすいが、腎機能の低下を示すことも
●歩くだけで息が切れる
●全身のだるさ、倦怠感がある
【3】生活習慣病患者はリスクが高い
●高血圧、糖尿病の持病がある
【4】先天的にネフロン数が少ない可能性がある
●出生時の体重が低かった
健康診断でチェック!
【1】数値が基準値内でも、毎年の健診で徐々に下がっている人は腎機能の低下に要注意
●血清クレアチニン値が年々上がっている
●eGFR値が年々下がっている
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