前世の記憶「生まれ変わり」は本当にあるのか 最新研究で判明した”転生”の実例3選
“転生”ブームで注目されている「生まれ変わり」。これは本当にあるのだろうか? 戦争の記憶を持つ少年、異国の地を思う女性… 前世の記憶は今世に何をもたらすのか。 2600以上の実例が示す「生まれ変わり」について、最新事情や実例を紹介する。
深田恭子「私の前世はイルカとマリー・アントワネット」
「私の前世はイルカとマリー・アントワネット」。かつて深田恭子(39才)はこんな発言をし、ファンや周囲をざわつかせた。
しかし最新の研究によれば、彼女のような記憶を持つ人は少なくないことがわかった。あなたの心の中にも、遠い国で過ごしたはるか昔の記憶が眠っているかもしれない…。
『転生したらスライムだった件』『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』。
昨今のアニメや漫画の売れ筋ランキングの中で目を引くのは、生まれ変わりや前世をテーマにした“転生モノ”だ。舞台や状況は違えど、生まれ変わりの神秘性と前世の記憶に助けられながらいまをサバイブする展開に、多くの若者が夢中になっている。
こうした“転生”は長らく創作物の中、あるいはスピリチュアルの世界にしか存在しない概念だった。
しかし、最新の大規模研究によって、現実世界においてもその存在が少しずつ裏付け始められている。
→『妻、小学生になる。』のような「転生」は実際にある?研究のきっかけになった江戸時代の少年の実例
生まれ変わり研究の最新事情「2600例以上」
中部大学教授で米バージニア大学の客員教授でもあり、20年以上にわたって「生まれ変わり」を研究してきた大門正幸さんが言う。
「多くの子供たちが“生まれ変わり”の記憶を語り、それは事実として裏付けられています。実際に聞き取り調査を行い、データ化して研究を行っているバージニア大学にはすでに41か国から2600例以上が集まっています」
もはや“ある” “ない”で議論するレベルはとっくに超えているということ。データに基づいた生まれ変わりの最新事情をお伝えする――
「生まれ変わり」概念の歴史
そもそも生まれ変わりの概念はいつから存在するのか。日本大学経済学部教授の伊佐敷隆弘さんは2600年前のインドに起源があると話す。
「古代インドで広まりヒンドゥー教の前身となった『バラモン教』の経典で同様の思想を確認することができます。バラモン教の教えでは、死んだ後の魂は月に昇り、その後雨として大地に降り注いで植物になり、それを食べた人間の精子になって母親の胎内で新たな人間となるとされていました」(伊佐敷さん・以下同)
古代インドで誕生した“生まれ変わり”思想は歳月とともに少しずつ形を変えながら、世界各地に広まっていった。
「たとえば仏教の『輪廻転生(りんねてんしょう)』は現世で積み重ねた“業”(ごう)に応じて、来世の運命が決定されると説いた教えです。業とは自らの意志で行った行為とその影響力のことを指し、善行を積めば来世での人生は明るく、悪行を重ねれば相応の報いを受けるとされています」
善行を積むためのモチベーションになる一方、階級による差別の正当化も生んだ。
「インドの厳しい階級制度である『カースト制』では、低い階級に生まれたのは、前世での自分の行いが悪かったせいだと説かれていました。このように差別を正当化するための道具として“生まれ変わり”が利用されることもありました」
ほかにも、古代ギリシャのプラトンやピタゴラスといった哲学者たちも輪廻転生を信じていたという記録がある。
「生まれ変わり」思想の大規模な研究が始まったのは約50年前のこと。
「現在、世界中で聞き取り調査を行っているバージニア大学医学部知覚研究室は1960年代の終わり頃から“生まれ変わり”現象に注目し、膨大なデータを集めてきました。それらをひもとくと、前世のエピソードを明確に話す人たちがいることが明らかになってきました」(大門さん・以下同)
同研究室の調査は、単純なデータ収集では終わらない。
「前世の記憶」を持つ人への調査方法
「前世の記憶を持つ人たちへの調査は、面接による聞き取りに始まり、そこで明らかになった“前世”にあたる人間が実在するかどうかを死亡証明書や検死記録といった公的な文書から当時の新聞や雑誌の報道、そして日記や手紙など私的な文書をすべて洗い出し検証します。その後、何度も追跡調査を重ねた後、綿密なデータ入力を行います」
思い込みやでっちあげの可能性がないか、細心の注意を払って調査しているのだ。
また、聞き取りの際には当人だけでなく家族や友人など複数の証言者にコンセンサスを取ることも徹底しているという。