『妻、小学生になる。』のような「転生」は実際にある?研究のきっかけになった江戸時代の少年の実例
今、大ブームの「転生」。非科学的だと、片付けるにはまだ早い。実は「生まれ変わり」の研究はあらゆる分野で進んでいるという。「前世の記憶」や「祖先の記憶」を受け入れることで「別の気づき」もあるはずだ。
ドラマ『妻、小学生になる。』はあり得るのか
「わたしは10年前に他界したあなたの妻よ」。ランドセルを背負った女児からそう告げられて、主人公の男性は恐れおののく──。
ドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)は、10年前に最愛の妻を亡くして空っぽの人生を送る男の前に、妻の生まれ変わりを名乗る小学生が現れる。主人公の男性を堤真一(57才)、他界した妻を石田ゆり子(52才)が演じるハートフルな物語だ。
近年、生まれ変わりや前世をテーマにした作品は「転生モノ」と称され、アニメや漫画、ドラマや映画などさまざまなジャンルで注目を集めている。今年も「転生ブーム」は続きそうだ。
しかし、実際に前世はあるのだろうか。実はいま、生まれ変わりや前世の記憶に関する研究が世界規模で進んでいるという。
「生まれ変わり」研究の歴史は長い
生まれ変わりの思想は、2600年前の古代インドにルーツがあるとされる。古代インドのバラモン教で「死んだ後の魂は何度も生まれ変わる」との考え方が生まれ、のちの仏教では現世で積み重ねた「業」に応じて、来世の運命が決定されるとの「輪廻転生」の教えが説かれた。
インドのカースト制度では、「低い身分のカーストに生まれたのは前世の行いが悪かったから」と、生まれ変わりが差別の正当化に利用されることもあったという。
日本でも、ちょうど200年前の文政5(1822)年に生まれ変わりが世間で騒がれていた。現在の東京・多摩地方に住む「勝五郎」という少年が前世の記憶を語り出したという。
「生まれる前は『藤蔵(とうぞう)』と呼ばれ、6才の頃に病気で死んでしまった」
そう語った勝五郎は「藤蔵」として暮らしていた村を訪れて、「当時はこのたばこ屋はなかった」と村の変化を正確に言い当てたとされる。
その史実は、国学者の平田篤胤(あつたね)が著した『勝五郎再生記聞』や、元大名の池田冠山(かんざん)によって記録され、その後、明治時代に民俗学者のラフカディオ・ハーンの著述によってアメリカに伝えられた。
それから長い時間を経た1960年代の終わりに、米バージニア大学医学部知覚研究室が学術的な「生まれ変わり研究」を開始した。「勝五郎」の史実は、その研究のきっかけの1つになったという。
同大学客員教授で、『「生まれ変わり」を科学する』の著者である中部大学大学院教授の大門正幸さんが言う。
「バージニア大学は、世界41か国から2600例以上の生まれ変わり例を収集しています。その研究では、前世の記憶を口にする子供からの聞き取り調査を進めて、前世に当たる人間が実在するかどうかを死亡証明書や当時の報道、手紙や日記といった私的な文書などを用いて徹底的に検証します」
大門さん自身も多くの聞き取り調査を行った。
多くの子供たちが持つ前世の記憶
いまから12年ほど前、関西地方に住む「トモくん」と大門さんは対面。彼は3才11か月のときに突然、「にんにくをむきたい」とつぶやき、利き手ではない左手で器用ににんにくの皮をむいた。
それからトモくんは「イギリスの飲食店に生まれて、ゲイリースと呼ばれていた」とカミングアウトし、生まれる前に起きたイギリスの列車衝突事故に言及した。「前のお金は円ではなくポンドだった」とも語ったという。
「3才で初めて地球儀を見たトモくんは、イギリスのエジンバラの場所を指差して、“このあたりに住んでいた”と話しました。私がインタビューしたのはトモくんが9才前後のときでしたが、彼は“目を閉じるとお母さんの姿が浮かぶ。いまもお母さんに会いたい”と涙ぐみ、前世の母親との絆の強さをうかがわせました」(大門さん)
ほかにも大門さんが調査した8才の小学生は太平洋戦争で戦死した日本兵の生まれ変わりとされ、4、5才のときに習ったこともない軍歌を口ずさんで母親を驚かせた。
前世の記憶を持つ子供たちには、いくつかの興味深い共通点がある。
「言語表現ができる2~4才くらいで前世の記憶を語り始める事例が多く、徐々に記憶が薄れていって8才ほどで大部分を失い、成人するまで覚えていることはほとんどありません。
また“やり残したことがあるので家族に会いたい”など、強い思いを持ったまま死ぬと、次の生で前世の記憶を口にする傾向があります。私が会ったトモくんは、以前は体が弱くてやりたいことができなかったので、今度は丈夫な体を選んで生まれてきたと語っています」(大門さん)
一連の検証から、生まれ変わりの「ある」「ない」を議論する段階はすでに終わったと大門さんは語る。
「検証結果が示したのは、生まれ変わり以外では解釈不可能な、数多くのエピソードが実在することです。大切なのは、真実か嘘かを問うことではなく、生まれ変わりの事実から何を引き出すかです」
※女性セブン2022年1月20・27日号
https://josei7.com/
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