嚥下力の衰えをチェック!“のどの老化度”を知る3つのテスト【医師解説】
「声が出にくい」「むせやすくなった」などと訴える人が増えている。これは、マスクで会話が減ったぶん、のどを使わなくなったことによる“のど老化”が進んでいるサインかもしれない。のどが老化すると、例え40代でも飲み込む力(嚥下(えんげ)力)が衰えていく可能性があるという。早速、自分ののどの状態を見てみよう。
3つのセルフチェックで状態確認
単に「声が出にくい」「むせる」「せき込む」くらいでは、のどの状態を判断するのは難しい。そこで、簡単にできる「発声能力」「のど年齢」「肺年齢」の3つのチェック法で、実年齢よりも老化が進んでいないか、まずは確認してみよう。
【1】発声能力チェック
「発声能力チェック」では、年齢を問わず、男性で15秒以上、女性で10秒以上続けられない場合は、声帯が萎縮している可能性がある。
「発声と嚥下は、ほぼ同じ器官を使用します。しっかり発声できていれば、のみ込む力も備わっていると考えられるので、現状をキープできるよう心がけましょう」
と、教えてくれたのは、「池袋大谷クリニック」院長の大谷義夫さんだ。(大谷さん・以下同)
<方法>
深く息を吸い込み、ふだん話す声と同じくらいの大きさで「あー」とできるだけ長く声を出し、何秒続いたかをチェックする。
<判定>
男性15秒以上、女性10秒以上 →発声能力に問題なし。
男性15秒未満、女性10秒未満 →発声能力が弱っている。
【2】のど年齢チェック
「のど年齢チェック」では、唾液をのみ込む動作(空(から)嚥下)から、のみ込み力を調べるテスト。
「唾液をのみ込むときに、のどぼとけが上下に動きます。動かすときにのどに指を当てておけば、動かす回数を数えやすくなります。実年齢よりも少なければ、のみ込む力が衰えている可能性に加え、唾液の分泌量が減っている可能性もあります」
唾液の分泌量が減ると、のどの粘膜にある線毛の動きが悪化し、異物の排除がスムーズにできなくなる。結果、免疫力が落ち、肺炎のリスクが高まる。5回以下の人は、誤嚥性肺炎のリスクが高いので要注意。
<方法>
水をひと口飲んで口の中を湿らせてから、指をのどぼとけの少し上に当て、30秒で何回唾液をのみ込めるかをチェックする。
<判定>
10回以上:のど年齢20代、
9回:30代、
8回:40代、
7回:50代、
6回:60代、
5回:70代、
4回以下:80代以上。
5回以下の場合は誤嚥性肺炎のリスクが高くなる。
【3】肺年齢チェック
「肺年齢チェック」は、呼気の強さを調べるテストで、肺年齢を推定するものだ。
「このテストをするだけでも呼吸にかかわる横隔膜などの筋肉を鍛えられ、肺年齢を若返らせることができます。週に2~3回行いましょう」
<方法>
ティッシュペーパーを1テーブルの上に置き、離れたところから息を吹きかけ、ティッシュが動く距離を調べる。
<判定>
180 cm:肺年齢男女20代
170 cm:男性30代、女性30代前半、
160 cm:男性40代、女性30代後半、
150 cm:男性50代、女性40代、
140 cm:男性60代、女性50代、
130 cm:男性70代、女性60代、
120 cm:男性80代前半、女性70代前半、
110 cm:男性80代後半、女性70代後半、
100 cm:男性90代、女性80代
のどを元気にしてオーラルフレイルを回避!
「東京都健康長寿センター」歯科口腔外科部長の平野浩彦さんは、「のどを鍛えることは健康長寿に大きく役立つ」と話す。
「口から食べ物をこぼす、ものがうまくのみ込めない、滑舌が悪くなるなどの口腔機能が低下することを、“オーラルフレイル”といいます。これを見逃すと、将来の誤嚥性肺炎のリスクが高まるだけでなく、全身の機能の低下が進むフレイルにつながります。些細な口のトラブルを年齢のせいにせず、口腔機能を鍛え、若々しさをキープしましょう」(平野さん)
教えてくれた人
大谷義夫さん/池袋大谷クリニック院長。
呼吸器内科のスペシャリスト。著書に『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)などがある。
平野浩彦さん/東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長。
80才で20本の歯を残す「8020運動」に加え、健康長寿につながる「オーラルフレイル管理」の重要性を発信している。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2021年7月22日
https://josei7.com/
●健康長寿には「歯」が命!オーラルフレイル予防に必要な10のこと