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健康

健康長寿には「歯」が命!オーラルフレイル予防に必要な10のこと

 最期まで寝たきりにならず”ピンピンコロリ”で旅立った人に共通するのは、自分の「歯」で食べられること。介護のきっかけとなり得る口腔機能の低下、今話題の“オーラルフレイル”とその対策について、専門医師に取材した。

オーラルフレイルとは?

 食べることは生きることとはよく言ったもの。そもそも、なぜ歯や口の状態と全身の健康が関係するのか。東京歯科大学口腔インプラント学講座教授の矢島安朝さんが解説する。

「高齢期になり心身の機能や活力が衰え、虚弱となった状態を身体的フレイルといいます。健康と要介護の中間にある、“要介護予備軍”の状態で、そのきっかけとなるのが、“オーラルフレイル”と呼ばれる口腔内の機能低下です。

 “残っている歯の本数が20本未満”“咀嚼力が弱い”“舌の力が弱い”などがその症状に当てはまります」

 口腔内の機能が落ちると、食べにくい肉や野菜を避けてご飯やうどん中心のやわらかい食事が多くなる。すると食べる力が低下するだけでなく、栄養が偏りがちになり、いずれは全身の健康状態に影響を与えるといわれている。  

 実際にオーラルフレイルの人は、要介護認定や死亡リスクが高いという研究もある。矢島さんが続ける。

「千葉県柏市在住の高齢者2000人以上を対象にした調査では、口の働きが衰えている人は、そうでない人に比べて、4年後の身体的フレイル、要介護認定、総死亡リスクがどれも2倍以上ありました。つまり、オーラルフレイルの人は、そのまま放置していくと健康寿命が短くなるのです」

→80才で自分の歯は何本残る?実態はなんと……

オーラルフレイルは早期発見が重要

 それでは、どうすれば口腔機能の低下を防げるのか。東京歯科大学老年歯科補綴学講座教授の上田貴之さんは、何よりもまず“早期発見”が大事だと訴える。

「オーラルフレイルは、高血圧や糖尿病に似ています。発見されたからといってすぐに命にかかわることはありませんが、長い目で見ると死亡リスクを高める。もし口の機能が衰えたとしても、早期に発見して、歯科医のもとでしかるべき治療を受け、それ以上症状が先に進まないよう食い止めることが大事です」 

オーラルフレイルのチェックリスト

 1つの指針となるのが下のチェックリストだ。

「以前に比べて硬いものが食べにくくなった」「食事の時間が長くなった」「薬をのみ込みにくくなった」など気になる項目が1つでもあれば、オーラルフレイルの可能性がある。一度、歯科医院で検査を受けることが望ましい。

□ 食べ物が口に残るようになった
□ 硬いものが食べにくくなった
□ 食事の時間が長くなった
□ 食事のときにむせるようになった
□ 薬をのみ込みにくくなった
□ 口の中が乾くようになった
□ 食べこぼしをするようになった
□ 滑舌が悪くなった
□ 口の中が汚れている

 1つでも当てはまったら口腔機能が低下しているオーラルフレイルの可能性あり。歯科医院で検査を受けることが望ましい。

「症状によっては、保険治療もできます。現状を把握しておくためにも、当てはまる人はかかりつけの歯科医に相談するか、日本老年歯科医学会の専門医に相談して、検査してもらうといいでしょう」(上田さん)

 チェック項目に当てはまらない人も、日頃から口もとの健康を意識しておきたい。

「噛む力を維持するためには、虫歯や歯周病を治療して、こまめに歯磨きをし、できるだけ自分の歯を残すこと。なくなった歯は、インプラントや入れ歯で補うことが前提です。

→口や舌の状態でみる「フレイル」危険度 チェック方法と予防のための3つのポイントとは?

歯の健康に歯ごたえのあるものを食べる

 また、インスタントや冷凍食品の発達でいつでも好きな食べ物が手に入るこの時代、やわらかいメニューを無意識に選んでいる人が多い。食事は歯ごたえがあるものを、積極的にとるようにしましょう。

 ハンバーグにれんこんを入れるのもいいし、ガムを噛むのもおすすめです。サプリメントをのんでいる人は、グミサプリに変えて噛む習慣を食事以外の時間に取り入れるのもいい」(上田さん)

 東京都立大学名誉教授で健康長寿に関する研究の第一人者の星旦二さんも「ピンピンコロリのためにはバランスのとれた楽しい食事が重要」と声をそろえる。

「健康な人ほどよく食べ、よく飲む。ダイエットも禁酒もしません。実際、“小太り”体形がいちばん長生きで、アルコールもまったく飲まない人よりも適度な量を毎晩たしなむ人の方が生存が維持されることが明確です。ただし、たばこはNG。がんや生活習慣病のリスクを上げるため、ピンピンコロリを目指すならば絶対に禁煙すべきです」(星さん)

舌や口周りの筋肉を鍛える

 歯そのものの健康と同じくらい重要なのが、舌と口まわりの筋肉だ。

「舌の筋肉が衰えればものをのどへ押し込む力がなくなり、食べ物を飲み込みづらくなる。口まわりの筋肉は咀嚼力につながります」(上田さん)

 鍛えるために、上田さんは家族や友人とのおしゃべりや、カラオケを推奨する。

コロナの流行が終息したら、おしゃべりやカラオケで舌や口回りの”筋トレ”を(写真/アフロ)

「コロナの影響で特に高齢者は外出が減って、人と話す機会が減っています。話さないと口もとや舌の筋力が弱るので、大きな声を出す機会を増やしてほしい。

 歌や俳句の音読なども口を動かすのでいい運動になります。カラオケは口腔機能と認知機能を上げるという研究結果もあります」

 もちろんコロナ禍のいま、実践するにあたってはマスクが必須。少し寂しいが、終息するまでは“ひとカラ”つまり“ひとりカラオケ”のルールも守ってほしい。余裕があれば、日常的に舌の筋力を鍛えるトレーニングを取り入れてもいい。

「やり方は簡単で、口を閉じた状態で、舌を使って左右の頰を内側から押します。1日に数分でもいいので、自分のペースで毎日続けてください。継続することで筋力がつきます」(上田さん)

オーラルフレイルを防ぐためにすべき10のこと【まとめ】

1.虫歯や歯周病は早期発見・早期治療

2.こまめに歯磨きをする

3.できるだけ自分の歯を残すこと

4.なくなった歯はインプラントや入れ歯で補う

5.レンコンハンバーグなど固い物を食べる

6.ガムを噛む

7.サプリをグミサプリにかえる

8.カラオケで口の周りの筋肉を動かす

9.歌や俳句を音読

10.舌の筋肉を鍛えるトレーニングを継続する

教えてくれた人

矢島安朝さん/東京歯科大学口腔インプラント学講座教授

上田貴之さん/東京歯科大学老年歯科補綴学講座教授

※女性セブン2021年1月1日号
https://josei7.com/

●ウイルスの侵入を防ぐ正しい歯磨き|口腔ケアもコロナ予防のカギ

●長生きするには「口腔内ケア」を!怖い病気を招く歯周病のこと

●「口腔ケア」で認知症が改善する理由 認知症専門医が詳しく解説!

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