納豆のすごいパワーを発酵博士が解説|魚と食べると旨み7倍!たんぱく質は牛肉並み!?
今年2月、納豆などの発酵食品に含まれる「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」が、新型コロナウイルスの増殖を抑制したと長崎大学などが発表。2020年1月には、国立がん研究センターが「納豆を1日1パック食べる人は死亡リスクが10%減る」という調査結果も公表。改めて、納豆のすごいパワーについて専門家に聞いた。
※レシピは特記以外2人分
サプリメント以上に栄養素が豊富!
納豆には、5大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)のすべてが含まれており、なかでも、筋肉をはじめ内臓や皮膚、細胞などを作る材料・たんぱく質が豊富なことで知られ、その量は牛肉並みとされる。
「さらに、食物繊維は100gあたり約6.7gも含まれており、2パックで成人女性の1日の目標量(18g以上)の約4割を摂取できます」
こう話すのは、納豆に詳しい“発酵博士”こと小泉武夫さん(「」内、以下同)だ。
「納豆には腸内環境を整える納豆菌が1粒に約700万個、1gでいうと約2億5000万個ついています。この菌が生きたまま体内に入って、腸内環境を酸性化します。そうすると善玉菌が増えて悪玉菌が抑えられ、免疫力がアップするのです。
さらに、納豆菌によって作られる酵素・ナットウキナーゼには血栓を溶かす働きが、アンジオテンシン変換阻害酵素には降圧作用があるため、生活習慣病の予防も期待できます」
国立がん研究センターの発表によると、納豆を日常的に食べている人は、脳卒中や心筋梗塞など、循環器系の病気による死亡率が低く、特に女性にその効果が顕著に表れるという。
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魚介と一緒に食べると旨み成分が7倍に
このように、健康効果の高い納豆だが、1日にどれくらい食べるのが適量なのか?
「1日2パックで充分。毎日同じタイミングで食べた方が、体のバイオリズムによい影響を与えると思います」
毎日となると苦手な人にはプレッシャーになるかもしれない。「健康のために毎日食べなければ…」というより、「おいしいので毎日食べたい」と思えるよう、食べ方を工夫した方がいいと、小泉さんは続ける。
「納豆の旨み成分・グルタミン酸と、魚の旨み成分・イノシン酸は一緒に食べると相乗効果で旨み成分が7倍になります。ですから、かつおぶしを混ぜたり、いしる、しょっつる、ナムプラーなどの魚醤を加えるとおいしさが増します。同じ発酵食品である漬けものを刻んで混ぜるのも、おいしいうえに健康効果も増すのでおすすめです」
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巷の“納豆あるある”それってウソ? ホント?
●かき混ぜるほどおいしくなる?
ホント!
「かき混ぜるほど、ねばりが出てきます。そのネバネバの中に納豆の旨み成分・グルタミン酸が抽出されるため、ネバネバが多いほどおいしくなる、というデータも出ています。ちなみに私は100回以上かき混ぜます。食通で知られる芸術家・かの北大路魯山人によれば、かき混ぜた納豆にしょうゆを少量入れ、さらにかき混ぜてしょうゆを少量入れる。これを何度か繰り返して好みの味を探すのが、いちばんおいしいのだとか」(小泉さん・以下同)
●温かいご飯にのせると納豆菌や酵素は死ぬ?
ウソ!
「納豆菌は耐熱性にすぐれた胞子を持っていて、熱に強く煮沸しても死なないため、加熱をしても健康効果は衰えません。一方、ナットウキナーゼは70℃以上で死滅しますが、通常のご飯の温度(45~50℃)程度であれば死にません」。
ただし、炊き立てのご飯の中心部は80℃に近いので、少し冷ましてから納豆をのせるのがベター。
●卵を混ぜた納豆を30分置くと豆が軟らかくなる?
ホント!
「卵にはたんぱく質分解酵素が含まれているため、納豆と混ぜると軟らかくなります。消化もよくなるので一石二鳥ですね」
発酵博士のおすすめ納豆レシピはコレ!
●最後の晩餐に食べたい「焼き納豆丼」(1人分)
【1】フライパンにサラダ油小さじ1を熱し、かき混ぜた納豆1パックを入れる。
【2】【1】の真ん中にスペースを作り、卵1個を落とす。
【3】【2】の納豆のふちに大さじ1の水を回しかけたら、蓋をして弱火で3分蒸し焼きにする。
【4】器にご飯1杯分を盛り、【3】をのせたら、周りにかつおぶし、しょうゆ各適量を順にかける。
●ダイエットにも!「ネバネバーダ」(4~6人分)
【1】納豆3パックは包丁でよく叩き(ひきわりを使ってもOK)、オクラ6本はみじん切りに、山いも(納豆と同量 /約120~150g)は皮をむいてすりおろしたら、これらをよく混ぜ合わせる
【2】【1】になめこ1缶(または1袋)を汁ごと入れ、卵3個を割り入れてさらによくかき混ぜる。しょうゆ適量を回しかけて完成。
教えてくれた人
発酵学者・食文化論者 小泉武夫さん
納豆、みそ、しょうゆなど発酵食品を愛してやまない農学博士。国や各地の自治体など行政機関で食に関するアドバイザーを多数兼任。『発酵食品礼讃』(文春文庫)、『発酵手帳2021』(IDP出版)など著書多数。
取材・文/佐々木めぐみ レシピ考案・料理・スタイリング/柳瀬真澄 撮影/菅井淳子、中西裕人 イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2021年4月15日号
https://josei7.com/
●納豆1日1パックで超健康!効能、正しい食べ方、地域色、レシピ…徹底解説