《飲む時間帯によって効果は異なる》牛乳のメリット「朝は快眠、昼は筋肉、夜は骨」 和田秀樹医師がすすめるのは「1日3回飲むこと」
牛乳は朝昼夜いつ飲むかによって効果が大きく異なる、と『医師が教える長生きする牛乳の飲み方』(アスコム)を上梓した、精神科医の和田秀樹さんは話す。そこで、時間帯ごとの効果の違いや、おすすめのタイミングについて詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
精神科医・和田秀樹さん
わだ・ひでき。精神科医。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わっている。著書に『70歳からのボケない勉強法』(アスコム)など。
牛乳を朝に飲めば睡眠の質が向上
和田さんによれば、牛乳を朝に飲むとその日の睡眠の質を向上する効果が期待できるという。そもそも睡眠には、体はリラックスしているが、脳は活動している「レム睡眠」と、体も脳もリラックスしている「ノンレム睡眠」があり、ノンレム睡眠は浅い眠りから段階的に深くなっていく。しかし、睡眠の質が悪いと、深い眠りに到達できないことがある。
この睡眠の質を食事で改善するのに必要なのが、深い睡眠へと誘うホルモンである「メラトニン」の材料となる食材を摂ることだ。
「メラトニンは、たんぱく質の一種であるトリプトファンが材料となりますが、これは体内で合成することができない必須アミノ酸のひとつです。だから、食べ物から摂取するしかありません」(和田さん・以下同)
朝牛乳で、トリプトファンが夜にはメラトニンに
牛乳を飲むとトリプトファンが体内に取り込まれ、セロトニンというホルモンを分泌し、さらにセロトニンはメラトニンに変換される。しかし、トリプトファンからメラトニンに変換されるまでには、14~16時間かかると言われ、牛乳を飲めばすぐにメラトニンが分泌されるわけではない。
「朝8時に牛乳を飲むと、夜の10時~12時頃に分泌されることになります。ちょうど就寝時間にあたりますね。つまり、朝牛乳を飲むことで、夜に向けて睡眠体制を整えることになります。
昼の牛乳で活発に動ける体に
昼に飲む牛乳は、活発に動ける体作りに役立つという。筋肉をつくるスイッチを入れる「分岐鎖アミノ酸」というたんぱく質を構成するアミノ酸が、牛乳に含まれているためだ。分岐鎖アミノ酸は「BCAA」と言われ、スポーツドリンクの成分にもなっている。バリン、ロイシン、イソロイシンという3種のアミノ酸が理想的な比率で含まれている。
「『BCAA』は筋肉を修復し、筋肉のエネルギー源となります。そのため、スポーツ選手にとってはなくてはならない成分です。筋肉の成長や修復を担っていますが、ハードな運動中や運動後だけに必要なのではありません。中高年にとっては筋力低下の予防や疲労回復にも有効です」
夜の牛乳で骨を強固に
加齢によって骨はもろくなりがちなため、中高年になると骨折する人が増えてくる。そこで摂取したいのがカルシウムだ。カルシウムは骨の成分と思われがちだが、実は骨よりも血液中に多く存在しており、血中で働くカルシウムが不足すると骨から溶け出したカルシウムが血中に補充される。そのため、カルシウムが溶け出さないように、補給する必要がある。
「カルシウムは食事から取り入れやすく、特に牛乳は最適です。カルシウムを多く含む上に、体内の吸収率が小魚などよりも高いのは、あまり知られていない事実です。そして、吸収に適している時間帯が夜、さらに睡眠中です。『夜牛乳』を飲むことが、骨の強化につながるというわけです」
季節別でも牛乳に期待される効果は異なる
季節別の不調対策にも牛乳は効果的だ。例えば、夏の脱水を伴う熱中症は、体内の水分が暑さによって不足することに加え、ナトリウム、カリウム、マグネシウムといった「電解質」が失われることによって起こる。
「牛乳にはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルの一部である電解質が含まれています。そのため、体内の水分バランスを整えて脱水の予防や症状を抑える役割もあります。また、牛乳の成分の9割弱は水です。その上、胃にとどまる時間が長く、持続的な水分補給に有効ともいわれています」
1日3回の牛乳でたんぱく質の吸収率を最大限に
どのタイミングで飲んでもそれぞれ異なる良い効果を得られる牛乳だが、和田さんが特にすすめているのは1日3回飲むことだ。牛乳には豊富な栄養素が含まれるが、飲んだら飲んだ分だけ吸収されるわけではないためだ。
例えばたんぱく質は、一回の食事で吸収できる量は20~40g程度と決まっており、摂りすぎて吸収されないたんぱく質は体内で活用されず、消化のために内蔵に負担がかかってしまう。
「牛乳を飲んでたんぱく質をしっかりとろうと考えているのなら、一度に多くの量を飲むのではなく、朝昼晩と分けて飲むことがポイント。ちょこちょこ飲みこそが摂取した栄養素を最大限に活用できるのです」
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