認知症の母がおにぎりを水洗いしていた!食べ方を忘れてしまった母の栄養補給に悩む息子が選んだ飲み物
岩手・盛岡に暮らす認知症の母を東京から通いで介護している工藤広伸さん。ある日見守りカメラに映った母は、おにぎりがうまく食べられなくなっていて――。母は認知症の進行とともに「食べ方」を忘れてしまったようで栄養面も心配だ。そこで工藤さんが考えた対策とは。
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(81才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)『老いた親の様子に「アレ?」と思ったら』(PHP研究所)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
最近の介護の悩みは「食事」のこと
どうやったら、認知症の母にきちんと食事をしてもらえるのか? 最近のわたしの介護の悩みがこれです。
81才の母は、一般男性が食べる大きなオムライスを完食してしまうほど食欲旺盛です。しかしそれは誰かがそばにいたらの話で、ひとりになると途端に食事の量が減ってしまいます。
なぜ食事の量が減ってしまうのか、母に食事をしてもらうために考えた対策をご紹介します。
母の食事の量が減る理由
母の食事の量が減る理由はおそらく、認知症で食べ方を忘れてしまったからだと思っています。
例えば、朝食はわたしが目玉焼きともやし炒めを作り、飲み物は豆乳を毎日用意します。母が混乱しないようメニューを固定していて、わたしと一緒に食べているときは母の様子を確認しているので問題ありません。
しかしわたしが席を立って目を離した隙に、しょうゆと勘違いしたのか豆乳を目玉焼きにかけてしまったことが何度かあります。それでも食べられるので問題ないのですが、母が食べ方を忘れてしまったと思ったエピソードの1つです。
母は誰かが食べている姿を見て、その真似をしないと食事ができなくなっているようです。その対策として、最近はワンプレートで食べられるカレーライスや麻婆丼など、ただ口に運ぶだけでいい料理にしています。
しかし遠距離介護なので、母ひとりで夕食をとる日もあります。その場合はおにぎりやパン、バナナなど口に運ぶだけでよい食材を冷蔵庫に用意しておけば、きちんと食べてくれました。ところが最近は、簡単な食事もとれなくなってしまったのです。
おにぎりを食べようとした母の行動
母はお昼に、おにぎり2個を食べようとしていました。東京にいたわたしは、居間にある見守りカメラでその様子を見ていたのですが、なかなか口に運んでくれません。
テレビを見ていた母はおにぎりを手に持ったまま、席の後ろにあるカーテンを何度も開け閉めしたり、皿の上にあったおにぎりの配置を何度も変えたりしていました。
結局おにぎりを一口も食べず、皿ごと台所へ持っていって、何をするかと思ったらおにぎりを水で洗っていました。そのおにぎりを冷蔵庫に入れ、昼食は終了したのです。
その後、母はおなかが空いたのか冷蔵庫から先ほどのおにぎりを出して居間へ運び、食べずに冷蔵庫へ戻し、3往復したところで夕方の訪問リハビリの時間になり、作業療法士さんが家にいらっしゃいました。
訪問リハビリのメニューに、料理があります。元々母は料理が得意だったので、作業療法士さんと一緒に料理を作ることになっています。サポートしてもらいながら、温かいかけそばが完成し、箸を持って食べるだけの状態にして作業療法士さんは帰られました。
しかしこのそばも、母は食べなかったのです。
かけそばの汁を捨てて麺も水洗い
母は昼食を食べていなかったので、夕食は食べて欲しいと思いながら、見守りカメラで様子を見ていると、母は一口だけそばをすすったあと、残りはなぜか台所へ。
かけそばの汁をすべて捨て、麺を水で洗っていました。そして冷蔵庫の中にあったおにぎりの乗った皿の横にそばを盛り付け、その皿を持ってまた居間と冷蔵庫を往復し始めたのです。
母は料理が得意だったころのイメージが強く残っていて、おにぎりやそばを洗ったり、盛り付けたりすることで、料理をしていると思っているのでしょう。また母以外誰もいないのに、誰かに食事を提供しようとしているように見えました。
暑い夏におにぎりやそばをこんなふうに扱ってしまったら、食材が傷むだけでなく、食中毒の不安もあります。以前からこうした行動はあったのですが、夏なので早急に対策することにしたのです。
栄養やカロリーを補うために購入した商品
母はおにぎりやそばを雑に扱っても、パックジュースは飲んでくれます。そこで栄養補助飲料を使って、不足しそうな栄養やカロリーを補うことに決めました。
いつもならドラッグストアで目に留まらない栄養補助飲料ですが、問題意識の強さから「これだ!」と気づき、手にとって栄養やカロリーについて比較しました。
数ある栄養補助飲料の中で選んだのは、森永乳業クリニコの『エンジョイクリミール』でした。シンプルな紙パックのジュースなので、母が扱いやすいと思ったからです。
あとはYoutubeで栄養補助飲料を実際に飲んで比較した動画があったので、そのなかでおいしいと評価されていたので選びました。わたしも飲んでみましたが、思っていたよりもおいしいです。
容量はわずか125mlですが、カロリーは200kcalとしっかりあります。ビタミンDやたんぱく質、カルシウム、亜鉛、シールド乳酸菌などが配合されているうえに、味もヨーグルト味、バナナ味など8種類もあって、バリエーションが豊富です。
■エンジョイクリミール/森永乳業クリニコ
いろいろセット24パック(8種×3パック)5184円(税込)
https://kenko.morinagamilk.co.jp/products/detail/2000
便利な食品を活用して栄養補給を心がけたい
購入から1か月ほど経ちましたが、母は栄養補助飲料をしっかり飲んでくれています。
ちなみに、栄養補助食品のほかにも、長期保存できるパンも活用しています。賞味期限が長いpascoの『ロングライフパン』を買い置きして、母に食べてもらっています。
デイサービスでの昼食を食事の軸にしながら、母ひとりの食事の時は便利な食品や飲料の力を借りて、暑い夏を乗り切れっていければと思っています。
今日もしれっと、しれっと。