介護で得するお金の制度12選|布団丸洗い無料、地震の備えやヘアカット助成金も…
高齢者の家の地震対策費用やおむつの助成、在宅介護で使う布団の丸洗いが無料など、自治体が展開するお得な介護サービスをピックアップ。介護や高齢者に関する助成金、給付金、還付金など、知って得する介護のお金について、ファイナンシャルプランナー・大堀貴子さんに解説いただいた。
なお、記事中では一例を紹介しているが、自分が住んでいる市区町村の役所で実施しているサービスを探してみると意外とお得な介護サービスがみつかるかも。
【目次】
- 1.高齢者の布団をクリーニング|年12回無料の市区町村も
- 2.大地震の備え|家具の転倒防止器具を給付助成
- 3.おむつ支給・購入費助成|介護のおむつ代がお得に
- 4.高齢者の自宅へ宅配サービス|安否確認も同時に
- 5.火災の備え|高齢者の家に火災予防機器の給付助成
- 6.訪問理美容サービス|高齢者の自宅に訪問してヘアカット
- 6.グループ旅行高齢者支援|1泊2500円の宿泊代を助成
- 7.補聴器の助成金|高額な補聴器を1割負担で
- 8.家族介護慰労金支給|年額10万円を給付
- 9.高額介護合算療養制度|介護費が高いときは還付金が
- 10.介護休業給付金|コロナで仕事を休んで介護したら…
- 11.介護用の住宅改修費を安く|上限20万円まで1割負担で
- 12.福祉用具購入費を安く|上限10万円まで1割負担
- 【まとめ】介護のお金で損しないために
1.高齢者の布団をクリーニング|年12回無料の市区町村も
布団のクリーニングを無料でしてくれるもの。主に65才以上の高齢者、市区町村が定めた要介護度に当てはまる人が対象となる。
●東京・練馬区の例「年間12回、布団乾燥消毒」
内容:年間12回、布団乾燥消毒の業者が、自宅を訪問して寝具を受け取り、乾燥消毒処理をした後、届けてくれる。その際、無料で布団の貸し出しも。
対象者:介護保険の要介護度が1~5と認定された65歳以上の在宅の方で、1人暮らしまたは65歳以上の高齢者のみの世帯の人。
※参考/練馬区「高齢者の布団乾燥サービス」よりhttps://www.city.nerima.tokyo.jp/hokenfukushi/koreisha/nichijo/futon.html
2.大地震の備え|家具の転倒防止器具を給付助成
高齢者世帯のみの世帯で、家具転倒防止器具の取付けをしてもらえる。
●東京・目黒区の例「家具転倒防止器具の取り付け」
内容:地震に備え、家具の転倒防止器具や窓ガラスの飛散防止フイルムなどの取り付け費用を限度額1万円まで区で負担してくれる。
対象者:65才以上の区内在住で、1人暮らし等高齢者登録者または介護保険の要介護度4・5の人。
※参考/目黒区「ひとりぐらし・高齢者世帯の家具転倒防止器具の取り付け」
https://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/korei_fukushi/korei_enjo/hitorigurashi/kigu.html
3.おむつ支給・購入費助成|介護のおむつ代がお得に
市区町村が行う助成制度で、現物支給と現金給付を選べる。在宅または持ち込みできる病院の場合は現物支給となり、持ち込みができない場合には現金給付。
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●東京都・江東区の例「おむつ現物支給・購入費助成」
内容:高齢者に毎月ご自宅等に紙おむつを配送してくれる。
対象者:65才以上、要介護3・4・5または重度の認知症等で排泄意識がない、所得基準など細かい条件がある。
※参考/江東区高齢者紙おむつ支給及びおむつ購入費助成https://www.city.koto.lg.jp/212106/fukushi/koresha/service/jisshi/6590.html
4.高齢者の自宅へ宅配サービス|安否確認も同時に
買い物、調理が困難な高齢者世帯に安否確認を兼ねた配食サービス。民間の宅配サービスに頼むより安い場合も。
●東京・立川市の例「高齢者等配食サービス事業」
内容:1食410円で食事を宅配・安否確認。
対象者:食事の用意が困難な65才以上の人。要支援または要介護の場合などの条件がある。
※立川市「高齢者等配食サービス事業」
https://www.city.tachikawa.lg.jp/koreifukushi/kenko/fukushi/koresha/zaitaku/kubashoku.html
5.火災の備え|高齢者の家に火災予防機器の給付助成
自動消火装置、電磁調理器など火災を予防する機器の購入費用の一部を助成する。
●東京・豊島区の例「高齢者火災安全システム」
内容:家庭内での火災に備え、住宅用防災機器を設置給付。
対象者: 65歳以上の1人暮らし、または高齢者のみの世帯の人
※参考:豊島区「高齢者火災安全システム」https://www.city.toshima.lg.jp/379/kenko/koresha/ippansesaku/1502171320.html
6.訪問理美容サービス|高齢者の自宅に訪問してヘアカット
寝たきり、認知症の方で理美容院に出向くことが困難な場合、理美容士が訪問してカットを行う。
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●千葉県市川市の例「訪問理美容サービス」
内容:在宅で要介護4・5の認定がある高齢者等に対し、自己負担額2094円(1回)、年6回限度に訪問の理容・美容サービスを受けられる。
対象者:在宅介護、要介護4か5の認定を受けている人。
※参考/市川市「訪問理美容サービス」https://www.city.ichikawa.lg.jp/wel02/1111000003.html
6.グループ旅行高齢者支援|1泊2500円の宿泊代を助成
65才以上の高齢者に国内旅行の代金を助成するなどの制度。
●東京・立川市の例「グループ旅行高齢者支援事業」
内容:指定の旅行代理店を利用し、年に1回、日帰りか宿泊のいずれか1人につき日帰り1,000円、宿泊2,500円を助成。
対象:2名以上のグループ(夫婦・家族等でも可)での国内旅行に参加される65才以上(旅行日時点)の高齢者。
※参考/立川市「グループ旅行高齢者支援事業」
https://www.city.tachikawa.lg.jp/koreifukushi/kenko/fukushi/koresha/ikigai/ryoko.html
7.補聴器の助成金|高額な補聴器を1割負担で
聴力が衰えコミュニケーションがとりにくくなっている高齢者に、補聴器の購入金額を助成。
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●東京・千代田区の例「補聴器購入費の助成」
内容:聴力が低下した人に、5万円を上限として補聴器購入費の9割を助成。
対象者:補聴器の必要性を認める医師の意見を得ることができる人、方聴覚障害による身体障害者手帳がない人などの条件がある。
※参考/千代田区「補聴器購入費の助成」
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kenko/shogaisha/teate/hochoki.html
8.家族介護慰労金支給|年額10万円を給付
要介護認定を受けているが、介護保険サービスを利用していない場合、家族に慰労金を支給。
●東京・足立区の例「家族介護慰労金支給事業」
内容:年額10万円の慰労金を給付。
対象者:要介護4または5で1年間継続して介護保険のサービスを利用していない人(7日以内のショートステイ、福祉用具購入、住宅改修の利用を除く)などの条件に当てはまる人。
※参考/足立区「家族介護慰労金支給事業について」
https://www.city.adachi.tokyo.jp/kaigo/kurashi/hoken/kaigo-irokin-jigyo.html
9.高額介護合算療養制度|介護費が高いときは還付金が
医療費が高額になったときには「高額療養制度」を、さらに介護費が高額になった場合には、「高額介護合算療養制度」が利用できる。いずれも所得によって決められた自己負担額の上限を超えた分が還付される。
市区町村の役所で介護費にかかった自己負担額証明書を発行してもらい、証明書を医療保険者(国民健康保険、会社員なら健康保険組合)に添付して申請する。介護にかかる部分は介護保険から、医療にかかる場合は医療保険から還付される。
10.介護休業給付金|コロナで仕事を休んで介護したら…
雇用保険に加入している人なら、介護で仕事を休むことになった場合、給与の67%(最長93日を限度に3回まで)支給される。
対象となるのは、雇用保険の被保険者(1年以上)で、介護のため2週間以上の休業が必要となり、職場復帰を前提に休んでいる人。
また、新型コロナの影響による介護施設の休業等で在宅介護となり、仕事を休まざる負えない状況になった人も対象となる。
※2週間休んでいなくても支給されるケースもあるので、勤務先を管轄するハローワークに問い合わせを。
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11.介護用の住宅改修費を安く|上限20万円まで1割負担で
介護保険制度を利用するサービス。自宅を介護に適した状態するため、手すりをつけたり、段差をなくしたり、以下のような改修をした場合に、要介護度に関係なく20万円を限度に原則1割負担で改修することができる。
利用できるのは原則1回だが、要介護区分が3段階上昇した場合、転居した場合に再度利用できる。市区町村により、改修事業者に直接支給額を支払ってくれる場合と、一度支払ってから還付を受ける場合とがある。
●介護住宅改修費の対象となる改修の一例
・手すりの取付け
・スロープ設置、床のかさ上げ
・滑り防止のための床材工事
・引き戸への取り替え
・和式から洋式トイレへの取り替え工事
12.福祉用具購入費を安く|上限10万円まで1割負担
こちらも介護保険制度を利用したサービス。毎年4月1日~翌3月31日まで10万円を限度額として、原則1割負担で福祉用具購入費が購入できる。市区町村により、改修事業者に直接支給額を支払ってくれる場合と、一度支払ってから還付を受ける場合とがある。
なお、福祉用具購入費補助対象となるのは、都道府県指定の事業者のみとなっている。
●「福祉用具購入費」で使える道具の一例
・腰掛け便座
・自動排泄処理装置の交換部品
・入浴補助用具
・簡易浴槽
・移動用リフトのつり具部品
【まとめ】介護のお金で損しないために
介護にかかるお金は、月平均7.8万円。住宅の改修や介護用ベッドの購入などの一時金の合計は平均69万円となっている※。
介護のお金の不安は大きいが、上記で紹介したさまざまな制度を活用すればお得に、安く抑えることができる。
各自治体が独自に展開している介護サービスも多く、介護認定を受けていなくても使える制度もあるため、知らずにいると損することも…。
民間の高額な介護サービスを使う前に、まずは住んでいる市区町村の役所で使える介護の制度やお金について確認してみるといいだろう。
※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度より。介護保険サービスの自己負担費用を含む金額。
※情報は2020年6月5日時点のものであり、変更される可能性がある。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。
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